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「城崎さん……」


 俺はゆっくり彼女の方を見る。

 そして口を開いた瞬間、彼女の方が俺より先に言葉を発した。

 

「ま、待ってください!!」


「え?」


「あ、あの! へ、返事はまだしないでください!!」


「ん? え? いやでも……」


「い、良いんです! あの……その……ただ私の思いを伝えたかっただけなので……別に恋人になりたいとかじゃ……いやなりたいんですけど、ここでその返事をされちゃうと私立ち直れなくなるので……」


 じゃぁなんであんなことを言ったんだ?

 

「な、なのでその……これからも私と仲良くしてくれると嬉しいです!」


「え? あ……はい」


「そ、それじゃぁ先に戻ってます」


「お、おう」


 城崎さんはそう言うと、そのまま急いで別荘に戻っていった。

 一体城崎さんは俺にどうして欲しかったんだろうか?

 てか、あんなことを言われて今までどおりとか無理なんだけど!?

 うわぁ……絶対気まずいよ!

 戻ってどんな顔であの子と話せばいいの!!

 

「も、戻りずれぇ……」


 俺は一体どうしたら良いんだ……こういう問題は俺は逃げてだぞ。

 そうだ、高弥に相談してみよう。

 俺は直ぐに高弥に電話を掛けた。

 

「それで、急に僕を呼んだ理由は?」


「お前まだ食ってたのか」


「まぁね、僕が結構食べるって知ってるだろ?」


「知ってるけど、今日は食いすぎじゃね?」


 やってきた高弥は右手にとうもろこしを持っていた。

 こいつは結構飯を食う。

 一緒にラーメン屋に行ったときなんかが良い例だ、俺は普通盛りなのに高弥はいつも大盛りを食べ、加えて餃子まで食べる。

 

「いや、さっきな……」


「どうしたんだい?」


 俺は高弥に先程あったことを話した。


「なるほど城崎さんが……」


「あぁ……どうするべきかと思ってな」


「……やっぱり一番最初に動いたのは城崎さんだったか」


「え?」


「あぁ、いやなんでもないよ。それより平斗は城崎さんのことどう思ってるの?」


「え? あぁ……」


 正直に言うと、恋愛対象として見ていなかった。

 道場に来る一個年下の女の子という感覚だったし、まさかあの子が俺にあんな感情を抱いているなんて思いもしなかった。

 

「俺は……ただの道場の後輩としか……」


「はぁ……まぁそうだろうね、平斗は鈍いから」


「なんだと!?」


「それは置いておいて、返事が保留にはなったけど……今直ぐ返事が欲しいと言われた時、平斗はどう答えるつもりだったんだい?」


「それは………」


 断るつもりだった。

 しかし、それは別に城崎さんのことが嫌いだからとか、そういう理由じゃない。

 ただ、俺は今恋愛よりもすべきことがあるから断ろうとしたのだ。


「さっきも言ったろ、俺はまだまだ未熟だ。だから自分を鍛錬し直す必要がある」


「だから付き合ってる時間はないと?」


「まぁ、そんな感じだ」


「はぁ……」


「なんでため息を吐くんだよ」


「別になんでもないよ、彼女くらい作れば良いのにと思っただけだよ」


「お前だって作らねーだろうが、モテるくせに」


「僕はそもそも恋愛に興味がないんだよ。毎日おもしろおかしく行きていければそれで良いんだよ」


「お前こそ彼女くらい作れば良いだろうが」


「僕は良いんだよ。まぁそうだな……作るとしたら平斗が誰かと付き合った後かな?」


「なんでそんなの待ってんだよ」


「まぁ、心配だからね色々と」


「お前は俺の兄貴か」


「それも悪くないね」


「いや、冗談だっての」


「でもどうするの?」


「何がだよ?」


「この旅行まだ続くけど、気まずくないの?」


「あ……」


 明日からどうしよう……。

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