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 俺は野菜なんかを切りながら、下準備を進めていく。


「島並さん料理も出来るんですか?」


「まぁ、人並み程度にはな、母さんの手伝いとかしてるし、ウチは道場で食事会もするから料理できる人が多くないとな」


「まぁ私からしたらまだまだですけどね」


「本物のメイドさんに比べたらそりゃあ劣ってますよ……」


「そんなことではいつまで経っても立派な使用人にはなれませんよ?」


「いや、俺はそんなのになる気はサラサラ無いんで」


「え? 将来はお嬢様の家で執事として働くのでは?」


「なんでそんな話になってんだよ……」


 ため息を吐きながら、俺は山ノ内さんの話を流す。

 下準備を終え、俺は材料を持ってウッドデッキに戻り、肉を焼き始めた。


「うぉ、柔けぇなこの肉!!」


「こんな肉食ったことないですよ! 兄貴、これって何の肉ですか!!」


「多分牛だけど、確かにこの肉美味いな」


 流石は金持ちの家が用意した肉、俺達庶民が口にしたことの無い味だ。

 

「この貝も美味しいよ、平斗食べてごらんよ」


「マジか!」


 今までに食べたことの無いような豪華な食材に俺たちは夢中で箸を進める。

 俺も今までこんなに食べたことがあっただろうかと言うくらいに肉を食べ、最後には別荘の中のソファーに寝転がった。


「ふぅ……食った食った」


「島並さん」


「ん? あぁ城崎さん、どうしたの?」


 俺が一人でソファーにダウンしていると、城崎さんが俺の顔を覗き込んできた。

 他の奴らはまだバーベキューを楽しんでいるようだ。


「あの、少し歩きに行きませんか? 運動すればお腹の物も消化されますよ」


「確かにそうかもしれないな……」


 確かに食べて直ぐに寝ると豚になると言うしな。

 少しは運動してカロリーを消費しておいたほうが良いか。

 

「じゃぁ、行こうか、外も大分涼しくなったろうし」


「はい!」


 俺は城崎さんとともに別荘を出て暗くなった島のビーチを歩き始めた。


「すげーなー、なんか海外に来たみたいで」


「そうですね、空も綺麗ですし」


「あぁ、こんなのんびりするのもなんだか久しぶりだな」


 光音関連で夏休みに入ってからも色々あったからな。

 でも、本当に大変なのはこれからだ、この旅行が終わったら俺は竹内さんに稽古を付けてもらう、

 このままじゃ俺はまた誰かを危険な目に合わせかねない、そうならないように俺は再び稽古をし直す必要がある。


「あ、あの……夏休みもあと少しですね」


「まぁね、今年は色々あったなぁ」


「私もです、こんなに何かに打ち込んだ夏は生まれてはじめてでした」


 きっとウチの道場での稽古のことだろうな。

 城崎さんは真面目だし、本当に稽古を楽しんでいるところがある。

 きっと後半年もすれば基本をマスターして、茜さんくらいとは対等になれるかもしれない。


「そのまま頑張れば、もっと楽しくなるよ」


「はい! あの……」


「ん?」


「島並先輩はなんで夏休み前に怪我をされたんですか?」


 そういえば、この子には詳しく話すと言ってあの事件の詳細を話してなかったなぁ……。

 もしかしたら初白から話を聞いてるかもしれないけど、そのうち話すって言ったのは俺だしな……。


「そういえば話てなかったね……」


 俺は浜辺の岩場に座り、城崎さんに話始めた。

 中学の頃俺に起こった事件、そしてそれによって起こったこの前の事件。

 城崎さんは黙って聞いていたけど、その表情は今にも泣き出しそうだった。


「ま、そんな感じ。俺は昔嫌われてたんだよ」


「そんなことが……」


「まぁ、あのときも言ったけど、俺は好きな女の子のために頑張っただけだよ」


 まぁ、その好きが本当に恋だったのかどうかは、もう俺にも良くわかんねーけど。

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