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89話★教わりにきた人

ルカさんの事があってから数日。彼はここ最近学校に姿を見せていない。きっと母親と話したり今後のことを考えたりしているのだろう。


大丈夫だといいんだけれど……。


そう思っていた時、


「レベッカ様」


声をかけられる。私は授業準備をしていた手を止めて振り返ると、心配をしていた人物の姿。ルカさんである。


「ルカさん」


職員室にある自らの席から立ち上がり、玄関の方にいる彼の方へ近づく。近づいて見る彼の表情はどこか清々しい。なにか憑き物が落ちたような。黒の髪が教室に入ってきた風に揺れ、赤い瞳は凛として、光の加減か輝きをまとっているように見える。


「あんたに教わりにきたぜ」


そう言ってニカッと笑う。


「う、うん。それはもちろん……」


そんな彼に頷きつつ、思う。母親とのことは大丈夫だったのだろうか。このルカさんの様子だと大丈夫だと思うけれど……。気になる。私が聞いてもいいだろうか。


「彼女との事は大丈夫なの?」


思い切って聞くと、ルカさんは苦笑いをした。あははという音が似合いそうな笑いだ。ガシガシと自らの頭をかく。


「あー、まだぜんぶ解決ってわけにはいかねぇな。今朝もやりやった」


ルカさんは口をさしながら言う。きっと口喧嘩、言い争いをしたのだろうと思う。それから、「あの人、ほんとおっかないんだぜー?……まぁ、俺も負けてねぇけど」と肩をすくめる。


そう言う表情も鬱々とはしていない。楽しんでいるようにも見える。


「でも、これが俺と……あの人の、今できる1番のコミュニケーションだから。今後も気長にやっていくつもりだ」


ああ、この人は……。


「ルカさんは強いね」


そう言うと、ルカさんは少し驚いた顔をしてから、フッと笑った。


「それに強くなれたのはあんたのおかげだ。これからは俺の先生として頼むぜ?レベッカせんせ」


★★


それからルカさんとの勉強会が始まった。時間は授業が終わった放課後。場所は教室。他の場所でも良かったのだけれど、黒板はあるし机や椅子もあるから1番教えやすいのだ。


「これを使ってね。これは文字を練習する用」


学校にあったミニ黒板を1つルカさんに渡す。それから、


「そして、これは”ノート”よ。こっちは、ペン。こちらは覚えておきたいことを書き残すことができるの」


そう言って渡したのは、最近文字以外の勉強もしているからその時にみんなが使っているノート、そしてペン。


このノートは羊皮紙出できていて、結構お高めだから、端切れや製品にならないものを買い取って紐で綴っている。ペンも主に羽根ペンだけれど、少し曲がってしまっていたり書けないことは無いが折れてしまったりしたものを格安で買い取っている。


この端切れなどは貿易関係で仕事をしているマーク領ならではの融通だ。自分の力では何も出来ないことが思い知らされて少し悔しかったりもする。


ルカさんは受け取ったそれらを恐る恐るといったふうに持ち上げて、物珍しそうに見る。つり目で切れ長の目が少し見開かれ、興味津々といった様子だ。


「これが生徒たちが使ってたやつか。これどういう構造になってんだ?」


「これは、紙を刺繍糸で縫うようにして綴じているの」


「なるほどなー。へー、これ、こんな縫い方してんだ。変わってんなぁー、1回通してまた戻ってきている……」


ちなみにこのノートは私たちの手作りだ。ジェニーと共に作った。


でも、ルカさん、1度見ただけなのによく分かるなぁ。そのことを言うと、ルカさんは、ははっと笑って、


「こういう仕組みや構造を推測したり作ったりするのは好きなんだ。マーク家に拾われた時にレイさんとどっちが先に構造を見抜けるかみたいな遊びしたり、教えてもらったりした。あの人、案外お茶目なんだぜ」


レイとは、マーク家の執事である。私がマーク家にいく時はいつも出迎えてくれる人だ。穏やかな笑顔と洗練された動作が印象的なおじさまである。目じりのしわがいい歳の取り方をしたんだろうなぁって思わせる。あの人がお茶目……。想像つかん。


「俺の従者知識のほとんどはレイさんから教わったんだ。あのお方は俺の恩人だ」


優しげに笑うルカさん。その様子からレイに大きな信頼を寄せているのがうかがえる。ルカさんは続けて、男親がいなかった俺にとって、父さんとか爺さんみたいな存在だ、と言った。それから、少し照れたように笑って、


「恥ずかしいから俺がこう言ったことは内緒だかんな?」


その様子がなんか妙に大人びて見える。


「ふふふ、言わないわよ。そういうのは自分で本人に伝えてあげるのが1番だもの。……あ!これから時間はある?」


「ああ。あるぞ」


「じゃあ、早速勉強会第1回、始めちゃう?」


そう言うと、ルカさんは少しきょとんとした表情をしたあと、


「いいのか?」


「もちろん!さあ、座って!」


こうして、私とルカさんの放課後勉強会はスタートしたのである。

これで、ルカさんクローズアップ編は以上となります。ルカさんはきっと悩みながらも自分なりの応えを見つけていくと思います。そんなルカさんをこれからも応援してもらえれば嬉しいなぁと思います!


そして、ルカさんの出番は今後もどんどんあると思うので、どうぞ宜しくお願い致します(*´∀`*)


あと、レイさんですが、そんなんおったっけ?みたいな人も多いかと思います。(ちなみに作者もお名前忘れてた←)レイさんは、最初に学校のことをマーク公爵に言いに行った時が初登場です。分かりづらくてすみません。



私の作品を読んでくださって、ありがとうございます!

これからも宜しくお願い致します(*´∀`*)

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