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88話✣心は自由(ウィル先生視点)

引き続き、ある人が同性を好きでその事についてお話しています。苦手な方は飛ばしてください!次回はその表現はありません。

はっきり言って怖かった。この思いは誰にも受け入れて貰えないのは分かっていたから。話すつもりもなかった。なのに、なんで話しちゃうかなぁ、僕は。


レベッカ嬢の空気感にのまれたのかなぁ。この子はなんだろう、なんでも話したくなってしまうオーラをもっている。優しくこちらの心をくすぐるような、泣きたくなるほどのふんわりしたもの。


でも、だからって話してしまうなんて……。

思わず苦笑する。


挙句の果てに、


「……君はこういう”普通”とは違う人を気持ち悪いと思う?」


何言ってるんだ。気持ち悪いに決まってるだろう。いくら優しい彼女であってもそんなこと、受け入れるわけが無い。


なんだろう、受け入れて欲しいような、否定して欲しいようなふたつの相反する気持ちが胸の辺りに込み上げてきて、苦しい。痛いとでも言えるその苦しさ。空気が少し重く感じる。


友達の話っていうことにしたのは幸いだ。こんな話、やめてしまおう。そう思い、黙ってしまったレベッカ嬢の方へ声をかけようとした刹那。


「……私は……」


声が聞こえた。その声音に何故かドキリと心臓が跳ねた。次いでキリキリとした痛みもやってくる。聞いておいて逃げたいと思ってしまう。


「私は、気持ち悪いとは思いません」


ふわりと声が舞い降りる羽のような優しさで落ちてきた。優しく笑っているが、青い双眼は真剣そのもので、本気で言っているのがよく分かる。


その真剣な青が僕の瞳を射抜く。


「だって、人が人を好きになるのは普通のことでしょう?男の人は相手が女だからって理由で好きになるんですか?その人は多分、その少年だから好きになったんだと私は思います。だから、その人は胸張って、自分の好きな人を好きって思っていいと思います」


思わずポカンとした表情でレベッカ嬢を見つめてしまった。きっと今の僕は相当なあほ面を晒しているだろうと思う。


だって、あまりにも真剣に言ってくれるから。そして、的確に僕が欲しい言葉を言ってくれるから。これは、ある意味、レベッカ嬢の才能かもね。


なんか、悩んでいるのが馬鹿らしくなるくらい清々しい言葉だね。そして、まっすぐだ。


思わず笑みが零れてしまった。自分のうじうじ具合があほらしい。ふふふ、と笑うと、レベッカ嬢は真剣な表情から一転、不貞腐れたような表情になる。ぷくーと大きく頬を膨らませている。普段の凛とした令嬢仮面はすっかり外れているらしい。


「なんで笑うんですかー」


「なんか、あまりにも真剣に言ってくれるから……悩んでるのが馬鹿らしくなるくらい清々しく……」


と止まらぬ笑いのままで言うと、レベッカ嬢はむくれた表情のままこちらを伺うように首をかたむける。


「だって、実際に馬鹿らしいですよ?そりゃ、相手の方が嫌だって言うなら話は別ですし、気持ちを押し付けるのはダメだとは思いますが、これは相手が異性でも一緒ですよね?どう感じるか、どう思うかまで押さえつけるのは違うと思います。少なくとも心は自由であっていいと思います」


「レベッカ嬢は優しいねぇ。1人でもそう言ってくれる人がいれば、僕の友達も救われるよ」


君だったら、もし同性に好意を寄せられてもきっと真剣に悩んで、しっかり答えを返してくれるんだろうなぁ。


世界も君くらい優しくて寛容だったらいいのにね、の言葉は口には出さなかった。だってそんなの無理だって分かってるから。今は1人でも受け入れてくれた事が嬉しい。


そう思っていると、レベッカ嬢がボソリと口を開いた。聞こえぬくらいの小さな声。


__それに……その人以上に私は”普通”じゃないし


「ん?何か言った?」


「なんでもありません。……その”お友達さん”の恋、叶うといいですねー」


一瞬何かに耐えるような表情を見せたレベッカ嬢。でも、それは本当に気づかないくらいの一瞬。その後、意味ありげに微笑んでそう言った。


ん……?この表情は……。

ひょっとして……バレてる……?


じーっと見られる視線に耐えきれなくなって、思わずくしゃくしゃとレベッカ嬢の頭を撫で回す。だって、相談したことより恥ずかしい。レベッカ嬢の長い髪がぐしゃぐしゃと乱れる。


「わっぷ!何するんですか、ウィル先生!!」


レベッカ嬢は批難するような視線をこちらに向ける。そんなレベッカ嬢の様子に少し心を落ち着けてから、こちらもニッコリと微笑んでみせる。心の内を明かさぬ鉄壁の社交スマイルである。そして、お手の物である軽い口調で続ける。


「ありがとさん!友達”にも伝えとくー」


そう言ってから、パパッと立ち上がる。


「僕はそろそろ行くねー。君も頑張ってるから僕も頑張って授業準備しなきゃねー」


「はい〜、いってらっしゃいませ〜」


意味ありげに微笑んで手を振るレベッカ嬢の頭を腹いせにもう1回ぐしゃっと撫でてから学校を出た。


レベッカ嬢って案外鋭いんだよなぁ。自分の気持ちとか他人から向けられている気持ちとかには疎いのに。


少なくとも心は自由……か。


叶わぬ恋と知っていようともまだ諦めてしまわなくていいだろうか。……なんて、しんみりするのは僕らしくないねー。


よーし、ディちゃんの授業準備頑張ろー!

レベッカちゃんはこう答えていましたが、実際、私自身はなんて答えていいかわかりません。なんと言うのが正解なのか。


でも、好きになったら仕方ないよね、と個人的には思います。


そして、読んでくださってありがとうございます(*´∀`*)

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