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84話 ✲あんたは俺の (ルカ視点)

実は、本日この作品『いせこく』の連載1周年記念日です!!


これからもどうぞこの作品をよろしくお願い致します(*ˊ˘ˋ*)。♪:*°

俺は叫ぶように言う。それから、目の前に立つレベッカ様を自らの元へ引っぱる。レベッカ様は少しよろけながらも素直に俺の後ろに立った。


もう我慢が限界だった。


小さい頃ならどんな理不尽でも受け入れていた。いや、諦めていたという方が近いだろう。


でも、俺を守るように立っていた、そして俺の分まで暴言を受けんとしていた小さな背中を放っておいて自分だけ逃げるなんてこと、出来るはずなかったから。


懐にいれた者には、吐き気がするくらい心の底から甘くて、優しいこの人を、俺が理由で傷つけさせたくはなかったから。


俺の大切な人を傷つける女に我慢ならなかった。


俺が言葉を紡いだ途端、対峙した自らと同じ色合いの赤い瞳が大きく見開かれ、そして、あろうことか大粒の涙がこぼれ落ちた。その雫はツーっと女の頬を濡らす。


それから堰を切ったようにとめどなく流れる涙。その表情は親に捨てられた子どものような、あるべきはずの庇護をなくしたような絶望の表情。


なんで……。


なんで手前が泣くんだよ……。

なんで手前が被害者ヅラしてんだよ……。


泣きたいのはどっちだよ……。


まだ自らの感情が昂り渦巻いているのがわかる。どこか暴力にも似た感情の嵐。


その時、後ろからクイッと小さく袖を引かれた。その主を見ると、レベッカ様の姿。何を言うでもなくこちらをじっと見つめる青い双眼。何かを訴えるような瞳。キュッと強く引き結ばれた唇。俺と目が合うと、レベッカ様はそのまま小さく横に首を振った。


言葉にはしないが、行動が言っていた。冷静になれ、と。その表情をみてのぼせていた頭が冷えていくのがわかった。


「……てないで……」


女から声が聞こえた。掠れるような声音で紡がれる言葉はほとんど聞こえない。肩がわなわなと、震えている。


女はそれから俺の方を見て、懇願するような声音で続けた。ウィリアム様の腕を振り切ると、俺の元へよろよろと覚束無い足取りでやってきて、地面に座り込む。縋るような視線をこちらに向ける。


「捨てないで!!私を捨てないで……!あなたにまで捨てられたら私はッ!」


わあぁぁぁと泣き叫ぶ。子どものような大絶叫である。人目を憚らずに泣き続けるこの人を見て、唐突に理解した。


この人は悲しい人だ、愛に飢えた寂しい人なのだと。そして、彼女もまた被害者なのかもしれない、と。


「あなたにまで拒絶されたら、私の居場所がなくなるの!!あなたがいればまだ、公爵家に戻れるかもしれないのにっ!!私はっ!私はっ!」


そしてわかった、彼女は公爵家を追い出されたのだと。もう居るべき場所がないのだと。息子に頼り、縋り付くことでしか自我を保っていられないのかもしれない、悲しい人だと。


そう思ったら、母だとは思っとことがないけれど、話くらいは聞いてもいいかなと思えるようになった。今までの苦しみが消えるわけではないけれど、向き合わなければならない、とわかった。



★★



それからようやく泣き止んだこの人をひとまず、校庭にあった椅子につかせた。先程までの威勢はなんだったのだというようにしおらしく、静かだ。


そんなこの人をよそに、少し離れたところで、俺はレベッカ様に手の手当てをされていた。「大丈夫だ」と言ったのに、「だめ!しっかり治療しないと!!」と半ば強引に治療されているのである。


「彼女とのこと、大丈夫そう?」


レベッカ様が手に消毒のための布をあてながら問いかける。消毒液がピリリとしみる。その消毒だとかけられたものはお酒の仲間らしい液体で、以前に初めて治療をしてもらった時は驚いたものだ。大体こちらの治療は魔法か、はたまた放置かだからだ。


魔法で治療するともちろんはやくなるが、魔力の少ない者には使えないし、使ったら使ったで自分で傷を治す力というのが弱まるからという理由でほとんど放置の人が多いけれど。


消毒ってのは、さいきん?とやらを殺す役割があるらしい。


問いかけてきたレベッカ様の顔をみると、眉尻が下がっていて心配そうだ。


あの人のことを「俺のお母さん」と言う呼び名で呼ばないのはきっとレベッカ様なりの配慮だろう。俺が……複雑な気持ちを抱いているのを知っているから。


レベッカ様の言葉に、俺は曖昧に微笑む。正直どうなるかわからないし、自分がどうしたいのかもよく分かっていない。だが、とりあえず話はしてみようかな。できるかどうかは別として。


「ああー、出来るかわかんねぇけど……ちゃんと話してみるよ」


そう俺が答えると、レベッカ様は小さく頷いたあと、優しい笑顔を浮かべる。


「うん、応援してる」


「あんなんでも母親だからな」


そう言って苦笑すると、レベッカ様は目を伏せる。


「……ごめんね、何も出来なくて」


「いや、あれは俺と母上が話さなきゃならない問題だから。さっき俺の気持ちを察して庇ってくれただろ?その後は、俺が話せるように1歩引いてくれた」


「……なぜ私の気持ちが一言一句わかるのだ……」


「だって、俺と母上が話している最中、すんごい顔してたじゃねぇか」


その言葉にレベッカ様は驚いたような顔をする。


「え、どんな顔?」


「百面相」


「百面相!?」


「うん、色んな顔見れて面白かった」


「だってルカさんが心配だったんだもん。仕方ないでしょう」


口をへの字に曲げながらそう言う。

ほら、そうやって気にかけてくれるから。


「はい、これで治療はよし!大丈夫?」


「おう」


「それならよかった」


ころころと笑ってみせる。

ほら、こういう笑顔をみせるから。


「何かあったらいつでも力になるから言ってね?」


「ありがとな」


キュッと親指を立ててこちらに見せる。

ほら、そうやって温かい言葉をくれるから。


ああ………


ほんとうに。



………………好きだなぁって。


あんたは俺の大切な人で好きな人だ。


「うん?何か言った?」


そう言ってレベッカ様が振り返る。その笑顔はあどけなくて………愛おしいと思う。花束を渡したあの時は自らの気持ちを否定していたけれど、きっとあの時からこの人のことを好きなんだなぁ。


でも、この気持ちは言えない。伝えられない。


「いいや、何でも」


だってほら、俺に構ってると意外とヤキモチ焼きの我が主様がこっち見て睨んでんぞ。ほんでもって、レベッカ様、あんたも好きなんだろ。見てりゃわかるよ。自覚はねぇみたいだがな。


あーあ、俺の気持ちは、自覚した途端さよならかよ。失恋かよ。


苦しいなぁ、こころが。

痛いなぁ、胸が。

辛いなぁ、恋心が。


この恋は叶わないけれど。

それならば。

こういう文、描くの好きなんですよー。

あ、登場人物を悲しませて喜んでいるって言うサイコパス的な意味じゃないですよ!?

ただ、こういう感情ぶちまけ文(命名、花川。ネーミングセンスはお察し笑)、を書くのが好きなだけです。

好意でも敵意でも憎しみでも悲しみでも強い感情を書くのすきですねぇ。

……好意より悲しみの方が描きやすいですけど。(サイコパスじゃないよ!!)


★★

1周年だからお願いしちゃいます!!

ぜひ、感想とか評価とかブックマークとかお願いいたします<(_ _)>


★★

あと!1周年記念としてTwitterで音読動画を投稿しました!ぜひそちらも合わせてよろしくお願い致します!

番外編♧秘密の会話(レーベ視点)を読みました!

⇒@YunaHanakawa09


★★

1周年記念イラスト描きました!

挿絵(By みてみん)

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