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7話★ 失敗は成功のもとだから

新春更新祭り2日目ですー

よろしくお願いしますー

その物音の直後、リリと私ははそっとお互い顔を見合わせた。お互いの顔があーあー、やっぱり、という顔色に染まっていることは言うまでもない。


……どちらも声には出さないが。


「わたくし、ちょっと様子を見て参ります。お嬢様はこちらでお待ちください」


「いえ、私も行くわ。行って片付けを手伝う」


リリの言葉に少し考えてから、そう答えた。大変なことになっているのなら、私も手伝うべきだと感じたからだ。それに、アンナが怪我でもしていたら大変だ。


「ですが、お嬢様にそのようなこと、させられません」


人手不足な今、そんなこと言っている場合ではない。貴族として誇りを持つことは大切だが、そのせいで傲慢になるのは間違いだ。


誇りを持つことと、プライドが高いことは必ずしもイコールではないのだ。


「そんなことを言っている場合ではないわ。行きましょう」


リリと共に厨房へ向かう。すると、その前でオロオロしているアンナを見つけた。


「アンナ!大丈夫?」


私が声をかけると、アンナはバッと、それはもう首がとんでいきそうな勢いで頭を下げた。この世界に土下座があれば、してるんだろうなぁなんて思うくらいの勢いだ。


「申し訳ございません!私の不注意です…」


「怪我はない?」


「怪我はありませんが、大切な夕食のスープをこぼしてしまいました……」


申し訳なさそうに謝るアンナ。その言葉に厨房を覗くと確かに鍋が倒れていて、中身がこぼれてしまっていた。具材がそこら中に散っている。これは派手にやったわね……。


でも、アンナに怪我がなくて少し安心した。


「あなたに怪我がないのならいいわ。失敗は成功のもとって言うから時には失敗してもいいのよ。片付けましょう」


私が言うと、アンナは驚いた顔をした後、納得いかなさそうに、


「え、ですが……」


「あら、罰をご所望?そうねぇ、じゃあ、後日でいいから、私にクッキーの作り方を教えてくれるかしら?」


私が片目をパチッとつぶって見せると、アンナは呆気に取られた表情を見せる。


「そんなことでよろしいんですか」


そんなこと、じゃないの。

私にとって、甘い物は正義なの。

自分でつくれば沢山食べられるわ。


「ええ、私には死活問題ですもの」


私が思わず真剣な顔をしてそう考えていると、アンナ、そして、隣に立っていたリリとまでもきょとんとした顔を見せた。


「……え?」


言葉に出てたのね、私。

私としたことが……。


慌てて首を振り、何でもないわよ〜と言う顔をする。


「いえ、何でもないわ。それで、よろしくって?」


「は、はい、お嬢様さえよろしければ」


目を白黒させながらも答えるアンナ。


「では、決まりね。とりあえず拭くものを用意しましょう。それから、夜ご飯だけれど、幸いこぼれたのはスープだけだし、そのままスープなしでいただきましょ」


私が言うと、リリがすっとどこからか布巾を取り出す。え、魔法……?変だなぁ、私たちスミス王国民は魔法は使えないはずだけれど。


その後、リリから布巾を受け取り、こぼれたスープを拭いていく。ちなみに布巾受け渡しの際、だいぶと反対され、布巾の押し問答があったのだか、そこは割愛させて欲しい。


それから3人でスープを拭き取り、床が綺麗になった所で、私は厨房を追い出された。


その後も手伝うと言ったのだが、リリとアンナがこれ以上は申し訳ないですから!と言い、厨房に残ることを頑として譲らず、食事をする部屋へとあっという間に連れていかれた。解せぬ。


その後運ばれてきたアンナ特製夜ご飯はとてもとても、それはもうほっぺが落ちるくらい美味しかった。


この分だと、クッキーの腕も相当なのでは……と今から楽しみになったのだった。


★★


夜ご飯はあっという間に私のお腹へとはいり、それはもう機嫌よくご飯を食べ終えた私は、その後、お風呂に入り、部屋へと戻った。


部屋着を着ると、ドレッサーの前に座る。お風呂の後、リリに髪を梳かしてもらい、それから緩く纏めてもらうのがいつもの日課なのだ。


私の髪の毛が絡まらず、真っ直ぐストレートを保てているのはリリのおかげだ。私が小さい時からリリは欠かさずこうして髪を整えてくれている。


そして、私はこの時間が結構気に入っていたりする。


このお屋敷にもドレッサーがあって良かった、と思った。


ちなみにこのドレッサーもアンディ様のお母様、マーク公爵夫人が選んで下さったものだ。白地に金色で蔦模様の描かれた可愛らしいもので、近くにある丸テーブルとお揃いだ。


リリは目を優しく細めつつ、私の髪を整えている。いつも共に居てくれる優しいお姉さんのような人だ。


ふと気にかかった。そんなリリは私が学校を作ることをどう思っているのか、と。


「ねぇ、リリ」


「何でございましょう」


リリは私の髪をすっと櫛で梳かしつつ、答える。私は、鏡越しにリリの顔を伺いつつ、尋ねる。


「私が学校を作りたいって言った時、どう思った?」


リリはアンディ様とお話している時、近くにいたから私が学校を作りたいって言ったことは知っているはずだ。


リリは私の言葉を受け、ニコッと鏡越しに笑いかけてくれた。


「わたくしは素晴らしいと思いますよ。世の中には教育を受けたくても受けられない子がたくさんいますから」


「ありがとう」


「いえ、わたくしが思ったことですから」


私の意見だから尊重する、とか忖度する、とかではない、リリ自身の考えで答えてくれる。


私が違えていたらちゃんと教えてくれるし、賛成できなければちゃんとその旨を理由を持って言ってくれる。


こういう、はっきり意見が言えるところがリリの良いところだ。


「それから、こちらの国にはあるか、わたくしは存じ上げませんが、スミス王国には、教会が孤児に向けて教育をしていた記憶がございます」


「教会……?」


「はい。慈善活動の一貫かと」


「そうなのね。明日、アンディ様がいらっしゃったら、ケイラー王国にもあるか聞いてみるわ」


もしあれば、見学させていただきたいし、相談にものっていただきたいわわ。…………相手方の迷惑じゃなければ、だけれど。


私は、理論でしか教育を知らないもの。所謂実践経験が少ないのよね。


まあ、前世では教育実習も行ったけれど、それはほんの側面にすぎないしね。


それに、前世と今世では必要な知識や教えるべきことは違うかもしれない。時代背景や文化が違うもの。


「それがよろしいかと存じます。参考になると思います」


「そうね、ありがとう」


「いえいえ」


そうリリと鏡越しに笑い合った。


誤字脱字等ございましたら、教えて下さると嬉しいですー


よろしければ、評価や感想などもお願いします…!


次の更新は、あす、【1月6日月曜日】となります!


新春更新祭り最終日ですー


よろしくお願いします( *¯ ꒳¯*)



花川優奈

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