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番外編◎アンナの一日 (アンナ視点)

私、アンナ・カーリーの一日は早いのです。


日の登らない時間に起き、そして、朝ごはん作りを始めます。つまり、一日の始まりは朝ごはん作りなのです。


朝が早いのは少々つらいですが、レベッカお嬢様の「美味しい」と喜ぶ表情を見ることが出来るなら全然苦になりません。


__ガラガラガラッ……ガシャンッ!!


例え調理器具を床にぶちまけてもう一度洗い直しになったとしても、です。


……こういう風に失敗するから、早起きしている訳じゃないですよ?……ないですからね?


私は1つため息を吐いてから洗い物に移りました。割ったり落としたりしないように細心の注意をはかりつつも、特急で終わらせます。早く支度をしないとお嬢様が起きてしまわれるかもしれません。


洗い物を終え、朝食を作り始めます。今朝のメニューはスープとパン、そしてスクランブルエッグです。


普通の貴族の食事は朝食にも肉料理を食べるのですが、お嬢様は「朝から肉料理はちょっと……」と最近言われるようになったので、肉料理はやめました。


お嬢様は最近少食になられたのでしょうか?


「お昼ご飯もたくさんはいらないわ。たくさん作って捨てるのはモッタイナイもの」と言われました。これもまた貴族の食事とは離れています。


急にどうしたんでしょう?


なんて考えながらスープをかき混ぜます。


その時、ドタドタと朝に似合わぬ足音が聞こえてきました。そのまま厨房に入ってきたのは先輩メイドのリリさん。髪を振り乱し、走ってきたのか息も少し上がっています。


いつも冷静沈着な彼女らしくなく、慌てた様子の彼女に驚いていると、


「アンナ!変な匂いがするわ!!」


彼女は続けてそう言いました。その声に辺りのにおいをかいでみると、確かに変な匂いがする。


……焦げているにおい……?


そこまで考えてはたと思い出す。そう言えばさっき、スクランブルエッグを作るためにフライパンに卵を割入れたような……。そして、その後すぐスープが吹きこぼそれそうになったから止めに行って……。


と先程までの過程を思い起こしながらフライパンの方を見て……


「きゃああああ!!!」


悲鳴が厨房に響き渡りました。そこには、焦げてしまった、スクランブルエッグの形にもなっていない卵が。


はい、スクランブルエッグになるはずだったものがまっ黒焦げでした。


「アンナ!!」


ついで、リリさんの怒声が響きました。名前を呼ばれ、ビクリ!と体が跳ねます。ゆっくりとリリさんの方に振り返ると眉を釣り上げ、盛大に怒りの表情を浮かべたリリさんの姿が。


「気をつけなさいっていつも言っているでしょう!今回は早めに気づいたから良かったけれど、気づくのが遅かったら火事になってたかもしれないわよ!」


ごもっともです。


「ごめんなさい……」


そう謝ると、リリさんはため息をついてから、


「はぁ……とりあえずこの卵は……破棄にしましょうか、食べられないものね……。新しい卵はある?」


「はい、あります」


リリさんの言葉にある魔法具の中から卵をいくつか取り出す。この国では魔法を使って食材を冷やす箱型の魔法具があるらしく、その中に入れておくと食材が腐らずに長期間保存できるらしいです。そして、これなその物自体に魔法が付与されているため、魔法の使えない私たちでも使うことができるのです。魔法ってすごい。


お嬢様は、「レイゾウコね」と仰っていました。レイゾウコとはなんでしょう?


ちなみに、スミス王国にはなかったので、初めて見た時はとても驚いたのを覚えています。スミス王国では、冬の間に切り出した氷や雪を地下に保存しているのですが、その中に食材も一緒に冷やしているのです。氷室、雪室と呼ぶそうです。


そう言えば、このケイラー王国には冬がないですねぇ。ずっと春のような気候です。お嬢様も、「ずっと春だわ……。セイサクシャの中に寒いのが苦手な人がいたのかしら?でも、こっちはホンペンにはないセカイセンだし……」と仰っていました。


何がどうなっているのでしょうか?と思い聞いてみたところ、この国は神々に守られているため、一年中暖かな気候が続くそうです。たった1つ国境を跨いだだけなのに。神ってすごい。


なんて話は置いておいて、リリさんに卵を渡すと、


「じゃあ、私がこれは作るから、アンナはスープを見ていて」


と言ってリリさんが朝食作りを手伝ってくれました。


★★


気を取り直して。


そんな失敗をしつつも、朝ごはんを作り終え、お嬢様に食べていただいた後は、学校へ向かわれるお嬢様のお見送りをします。


その後に待っているのは、洗濯です。洗濯をするのは嫌いではありません。その理由が失敗をすることが圧倒的に少ないから、というのは知らない方がいい事実ですよ?


それから、洗濯物はどんどん綺麗になっていくのがとても楽しいです。


洗濯が終わればお屋敷のお掃除。1人では大変ですが、その分やりがいはあります。


私は、バケツにたくさんの水を入れ、モップとバケツを抱えて玄関ホールへ向かいました。玄関ホールは絨毯などがひかれていないので、水拭きです。


出入りがいちばん多いところなのでしっかり掃除しなければなりません。


モップにバケツの水をつけ、勢いよく掃除を始めます。どんどん綺麗になっていくので、掃除も楽しいですし、好きです。


いい気候ですし(ずっと春ですが)、掃除も捗ります。水が冷たくて……とかないんですもの。


そんな風に自分でも上機嫌だとわかる雰囲気的で掃除をしていると、


いつの間にか最初の位置に戻って来てしまっていたようで。


__バシャン!


「きゃああああ!」


戻ってきているとは気づかなかった私が、モップごとバケツに突っ込み、バケツにモップがあたり、その勢いでバケツが倒れ……勢いよく水がぶちまけられました。


ここが玄関ホールで、絨毯がなくて良かった……。


その後、一旦深呼吸をしてから片付けをし、そして掃除を再開する。


その後も、お買い物で色々あったり夕食準備で色々あったりしましたが、それは割愛させていただこうと思います……。


それから、夕方になり、お嬢様とリリさんが帰ってきました。


「おかえりなさいませ、お嬢様!」


元気よく挨拶をすると、お嬢様はニコリと笑って答えてくださいます。


「夕食は出来ております」


「ありがとう、頂くわ」


そうお嬢様が仰ったので、夕食の準備をするべく廊下を歩い……


「……っ!?」


と思ったらなにかにつまづき、そのまま足をもつれさせて、


「アンナ!」


お嬢様の声が聞こえ、リリさんも助けてくれようとしますが、そのままの勢いで床に思いっきりこんにちはしてしまいました。


「痛い!!」


「アンナ、大丈夫?」


お嬢様が心配そうに私の顔を覗きこまれます。怪我はしていませんが、だいぶ恥ずかしいです。


「だ、大丈夫です」


そんな風にして失敗も挟みつつ、私、アンナの生活は過ぎていくのでした。

アンナのドジっぷりに笑ってくれれば嬉しいなぁと思います( *¯ ꒳ ¯*)


そして、ずっと前に言っていた「この国はずっと、春」なのは何故か?を説明しなきゃなぁと思っていたのですが、今回やっと出せました……。長かった……。


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