77話★オープンスクール その1
爽やかな風が頬を撫でた。タイルのようなものによって舗装された広場は太陽の光を反射している。こんな快晴とも言っていい程の天気の今日は、オープンスクールの当日だ。
「晴れて良かったですねー」
座席側から舞台側を見ていた私の隣に来たジェニーがそう言う。
「そうね。屋根がないから、雨だったら中止だもの」
「きっと、空の神の御加護があるのです!今日のオープンスクール、絶対成功させましょうね!」
ジェニーがそう言いながらニコッと微笑んだ。そのジェニーの手をぎゅっと握って頷く。
「ええ!」
★★
オープンスクールの開始時間近くになる。数日前から一応オープンスクールをやるってことを宣伝していたので、座席にはチラホラと人が見えた。純粋に興味がある人より面白いもの見たさとか野次馬とかの人の方が多いかもしれないけれど。
でも、そう言う野次馬の人たちは反対派ではないのだ。オープンスクールが上手くいけば味方にだってなり得るし、もしかしたら通ってくれる人も増えるかもしれない。
オープンスクールは絶対に成功させなければ!
そして、仕事の合間なのだろう、子供たちの他に大人たちも少しいる。多分子供たちに連れられてきたのだろう。やってくるそんな大人や子供たちに、レーベとリル、カイトが頑張って作っていたしおりを配っている。
そんな3人の様子を見ながら、私は授業の準備を始める。あともう少し__約5分くらいすると授業が始まるのだ。
隣にはウィル先生とアンディ様、そしてジェニー、ルカがいて、それぞれ今日の準備をしている。今日は異世界学校のメンバー総出なのである。
アンディ様は私がする授業の次の授業、算術を担当するのだ。そして、ウィル先生はその授業のサポート、ジェニーとルカは私達が授業をしている間に客席をまわったり見ている子どもたちに参加を促したりしてくれる役割だ。
授業を見学しに来てくれている子どもたちも自由に授業参加可能ということにしているし、実際に授業の最初や途中で呼びかけるつもりだが、多分最初の私の授業は様子見の子どもたちが多いだろう。
アンディ様の授業の時にどれ位の子ども達が参加してくれるかが鍵になるはずだ。私がどれだけ楽しそうな参加したくなるような授業をすることと、ジェニーとルカの促しが重要な役割を果たす。
準備をしていると、レーベが近づいて来る。カイトやリルもその後ろにいた。
「先生ぇー!僕たち、もう席についてていい?」
「うん、いいよ! 」
「 じゃあ、席についてるねー」
そう言って去っていこうとする3人。その姿をみて、あっと思い、呼び止める。
「あ、3人とも!しおり、配ってくれてありがとうね」
そう言うと、3人は足を止め、こちらを見て微笑んだ。
「ううん、いいよ〜!先生、また後でねぇ〜」
手を振ってパタパタと舞台の方へ去っていく。よし、私も準備して行かなきゃね!と思った丁度その時、ジェニーの声がした。
「レベッカ様〜!そろそろです!」
「ええ、ありがとう」
ジェニーの言葉にそう返事をすると、両手を握ってそれぞれを自らの方へ引くように近づけ、「よし!」と1つ気合いを入れてから生徒の待つ、そして見学者達が見ている舞台へと歩く。
舞台へ行くと生徒たちは少し緊張しているようでソワソワとしていた。そんな3人の前に立ち、ニコッと笑顔を向ける。ちょっとでも緊張がほぐれればいいなぁと思ったのだ。
それから、いつも通り挨拶をして、黒板……の代わりのものに文字を書いていく。なぜ黒板の代わりのものかと言うと、黒板は教室の壁に貼り付けられているので持ってこれなかったからだ。
代替品として、大きな木の板を立て掛けさせてそこに紙を貼ったものを使っている。ちなみにウィル先生のアイディアだった。
普段の授業なら、もうみんな文字はバッチリのため、いきなり書き取り練習からしているが、今日はまだ文字を習ったことのない子達が見学者のため、丁寧に文字の説明からしていく。3人はもうわかっているが、ちゃんと聞いてくれた。
最初は緊張していた3人だったが、文字の練習をしたりしていくうちにいつもの調子が出てきたのか、楽しそうに文字を書き始める。
見学者の人たちもまあ、少しは興味を持ってくれているようで、最初よりは視線がこちらに向いている気がする。多分。そうだと信じたい。
いつも通りの和やかな雰囲気で授業は進み、ついにアクティビティの時間になった。その時間になると同時に見学者にも参加を呼びかける。「参加してみませんか?」と。
これで何人かが参加してくれれば……。
と思ったが、呼びかけても手を挙げてくれたり参加表明をしてくれたりする子はいない。だが、気にはなるのか子どもたち同士、ちらりちらりと顔を見合わせてはいる。
さて、どうするか。多分、もう一息ではある。
だが、いつまで待っても手が挙がることはない。まあ、まだ一時間目だし、次の算術の時間に参加してくれればそれでいいかと諦めかけたその時……。
恐る恐るといった風に手を挙げてくれたのは前から3列目の席に座っていたある男の子。体の大きい、強そうな子だ。ガキ大将みたいな?
手を挙げてくれた事が嬉しすぎて、そして驚いて一瞬ポカンとしてしまった私だったが、慌てて立て直し、舞台の方へと呼び寄せる。
「どうぞ!いらっしゃい!!」
そう呼ぶと、ジェニーがその子の傍について一緒にこちらへやってくる。恐る恐るといったあるき方で私の前まで来た。緊張しているようだ。でも、手を挙げてくれた勇気に本当に感謝する。
「手を挙げてくれてありがとう!初めまして、私はレベッカです。よろしくね」
そう言ってニコッと笑うと、その子は少しハッとしたような、驚いたような顔をしてそれから視線をふいっとそらした。
え、嫌われた?
と思ったが、よくよくその子の方をみると顔が少し赤い。どうやら照れているだけのようだ。初対面の人との挨拶ってなんか照れるよね、うんうん。
できるだけ、少しでも心を開いてくれるように努めて声音を優しくする。
「お名前を聞いてもいいかしら?」
「………ディラン……」
「そう、ディランね。よろしく!好きな席に座ってね?」
そうディランの顔を見ながら言うと、彼はこくこくと高速で5回くらい頷いたあと、カイトの隣の席へと座った。
すると、カイトがこつりとディランの腕あたりを肘でつつく。カイトの顔が気の置けない相手に向けるような少しいたずらっぽい笑顔だ。それにつられたのかディランもニヤリと笑ってみせている。どうやら2人は友人らしい。
それ以降は手を挙げる子はいないみたいだった。様子見といったようにチラリとこちらに視線をやってから直ぐにそらすを繰り返している。
でも、1人でも来てくれたことが嬉しい!
「じゃあ、はじめようか!今日は新しいお友達がいるから困っていたら助けてあげてね?」
そう声をかけ、文字ビンゴが始まった。簡単にルール説明をした後、生徒たちに3×3のマスをミニ黒板に描いてもらい、それに好きな文字を書いてもらう。
ディランにとっては、このビンゴが初めての文字書きなのでしっかりと書く時間をとった。ディランは恐る恐るといった感じではあるが、ゆっくりとそして力強く黒板に文字を書いてくれた。
結果として、文字ビンゴは大いに盛り上がった。ディランもゲームの中でリルやレーベとも仲良くなったらしく4人でワイワイ言いながら「リーチ!」「ビンゴ!」と声をあげている。
ちなみに1番最初にビンゴになったのはレーベだった。とても嬉しそうだ。残りの生徒3人と私達先生は惜しみない拍手を送った。
そんな様子を見たからかビンゴの2回目を始める頃にはチラホラと参加者が増えていったのだった。
とはいえ、まだまだ少ないし、チラリと見ているだけの人も多くいる。これは、アンディ様に算術の授業で頑張っている貰おう、うん。
生徒が10人前後になった時、丁度私の授業が終わり、次はアンディ様の番だ。去り際にニコリと微笑み合う。
バトンタッチだ。
さて、私は客席に行って促し係になろうかな。
次はアンディ様にバトンタッチですね!
さて、生徒は増えるのでしょうか?
レベッカの学校の存続は如何に?
次回はオープンスクールその2です!
よろしくお願いします。
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