番外編✤ ねぇちゃんのミラクル☆布教大作戦(カイト視点)
前回、予告詐欺をしました。ごめんなさい。
レベッカがアンディのもとへ行ったあとのジェニーとカイト姉弟の会話です。
少し時間は遡る。レーベと共に座席にクッションを並べ終え、どうしようかと迷っているとレベッカ先生とねぇちゃんが何か話しいているのが聞こえた。
どうやらアンディ先生が大変そうなので手伝ってほしいとのことらしい。俺も手が空いているから手伝いに行こうかな。
そう思って、レベッカ先生とねぇちゃんの元に近づき、「俺も手伝う」と言おうとした瞬間、その言葉は阻まれた。隣に立っていたねぇちゃんによって。
手で口を押えられて、目を白黒させる。いきなりすぎやしねぇか!?
ねぇちゃんの腕をペチペチと叩くが一向に話して貰えない。少し目線を上げてねぇちゃんの顔をチラリ見ると、なんかとてつもなくいい笑顔をしているのだが……。
ねぇちゃん、なんかこぇーよ!
あれ?ねぇちゃんってこんな性格だっけ?
レベッカ先生がアンディ先生の方へ向かっていくと、漸くその手を離してくれた。
「ねぇちゃん、痛てぇよ」
と開口早々に文句を言うと、ねぇちゃんはこちらをじっと見据えた。なに、こぇーんだけど。その視線にたじろぐと、ねぇちゃんはガシリと俺の肩に手を置いた。
「よくお聞きなさい、カイト」
その文言から始まった言葉は、なんか、もう、うん。ねぇちゃんの熱の入りようが凄いなって感じの言葉だった。
熱に浮かされたようにレベッカ先生とアンディ先生について語り始める。アンディ先生の思いとか、アンディ先生はレベッカ先生にこんなことをしたとか、レベッカ先生のそれに対する反応とか。
その反応がとてつもなく可愛かったとか、絶対レベッカ先生はアンディ先生が好きだとか。
中でも1番熱を入れて語っていたのは、教会、つまりリルとレーベの家に見学に行った時のことだ。なんでも、つまづいて転びかけたレベッカ先生をアンディ先生が抱きとめたらしい。
「それでね!そのおふたりが絵のように素晴らしかったのよー!!その後、おふたりで顔を真っ赤になさって……レベッカ様可愛すぎる!」
楽しそうでなによりだが、そんなのこと、生徒である俺にペラペラ喋っていいのか?
それによく知る先生達のそんな話を聞くと何だか気恥しいようないたたまれないような気持ちになる。はっきり言うと居心地が悪い。むずむずする。
「だからね!私は、アンディ様とレベッカ様の恋愛を絶対に成就させたいの」
なるほど、よく分かった。それで、あの行動な訳か。何かにつけて2人っきりにさせようと企んでいるらしい。なんでもそれを応援する応援隊があるとか。メンバーは2人だけで、隊長はねぇちゃん。
そして続けて、今日からあなたもアンディ様とレベッカ様応援隊のメンバーだからね!とも言われた。
いきなり入れられた……。拒否権はもちろんないらしい。
それから、話は勝手に進み、「そうだわ!応援隊を広めるためにも、こうして周りに布教しなければならないんだわ!」とか何とか言っている。
「聞いてる?カイト!布教よ、布教!!」
途中から俺の相槌が無くなったのに気づいたらしく、肩をつかんだまま揺さぶられた。それはもう結構な勢いで。
酔うからやめてくれ、と思いつつも頷く。
「……うん、聞いてる……」
すると、その返事に満足したのかばっと俺から手を離すと、そのまま胸の前でパチリと手を合わせる。
頭がぐわんぐわんするぞ。目の前が揺れている。
「名付けて!ミラクル☆布教大作戦よ!よし!やるぞー!!こうしちゃいられない!カイト!行くわよ!!」
視界が治らないうちに、今度はガシリと手を握られ、そのまま引っ張られる。もう、なすがままである。
「お、おう……」
ぐわんぐわんのまま走らされながら思う。
ここ最近、ねぇちゃんが逞しくなって来ている気がする。元気なのはいい事だが。楽しそうでなによりだ、うん。
というかどこに行くんだ?
……結果着いた先はレベッカ先生のメイド、リリさんのところだった。どうやらリリさんも応援隊のメンバーらしい。
リリさんに、俺がメンバー入りしたことを告げに来たらしい。
「それはそれは、よろしくお願いします」
リリさんはぺこりと俺に丁寧に頭を下げた。
「いや、あの……俺は……」
俺、これからどうなるんだろうか。
ジェニーさんは逞しく育っております苦笑
それに振り回される弟……。
次回こそ、オープンスクールですーー!!(多分)




