73話★さてどう準備するか
更新出来てなくてごめんなさい。ちょっと訳あって教育への自信をなくしていました。これからはちょこちょこ更新していく予定なのでどうぞよろしくお願いします。
「俺、この学校……その……好き……だし?友達が増えてくれたら嬉しいなって思って、色んな奴に来て欲しいって言ってるんだけど、全然聞いてくれないんだ」
カイトは、最初の好きの部分で少し照れくさそうにした後、不安げに瞳が揺らす。そこで1度言葉を切り、
「時間は前と後ろに変わったから大丈夫なんだけど、どんなふうか分からないし、それから、噂もあるんだと思う……」
と言った。カイト、色々考えてくれているんだなぁ。そして、学校、好きでいてくれるんだ!嬉しいなぁ。
不安げにしているカイトに近づき、頭を撫でる。
「ありがとう、カイト!いっぱい学校について考えてくれたんだね?私、とても嬉しいよ」
カイトは頭がいい。本が好きなのもあるけれど、多分色々なことを考えられる子だ。そして、優しい。
私が頭を撫でると少し居心地悪そうにしている。こういうのは少し苦手らしい。嬉しいけれど恥ずかしい、みたいな。恥ずかしそうなカイトに少し申し訳なくなる。
ごめん、勢い余った!次から気をつけよう。でも、褒め言葉とかは言わせてね?
カイトから手を離し、それから、隣に立っていたアンディ様と目で頷き合う。そして、みんなの方を向き、
「実はね、私も、噂とかどんなふうか分からなくて来れない子とかいるんじゃないかなって思ってたの。だからね、このオープンスクールでは、公開授業をしようと思っているの」
「コウカイジュギョウ?」
3人が一斉に首を傾けた。
いけない、いけない。難しい言葉、使っちゃダメ!絶対!わかりやすい言葉で伝えるのは教師の基本!!というか人と接することの基本!!
「あ、ごめん、難しかったね。そうだねぇ、みんなに「授業はこんなふうだ!」ってみてもらうの。それから、「授業を一緒にしてみたい!」って子には仲間になって一緒にしてもらうの」
「みてもらうって僕達の授業?」
「そうだよ。みんなにはお手伝いしてほしいんだ。いいかな?」
「うん、いいよ!レーベ、お手伝いする!」
「リルも……いいです。……でも、みんなの前で手を挙げるの、恥ずかしい……です」
「仲間が増えるなら俺も手伝う」
「レーベ、リル、カイト、ありがとう!あと、リル、手は挙げたい時に挙げればいいよ!無理しなくていいわ」
「うん……じゃあ、参加……します」
「ありがとう!」
★★
それから、そのオープンスクールについての話し合いが始まった。
「さて、オープンスクールなのだけれど、流れとしては授業を見せて、そのあと学校がどんなのだーっていう説明をするという流れになるよ。それから説明の後、質問を聞くの。ここまで大丈夫かな?授業、説明、質問の流れだよ」
そう区切って言う。それから視覚でも伝えるためにアンディ様の力をお借りして、前の黒板に数字と文字で順番に示してもらった。何度も伝えることと視覚でも伝えることはとても大切だと思う。
それから3人の顔を見やると、3人はコクリと頷く。大丈夫なようだ。
「そこでみんなに聞きたいことがあるの!授業でどんなことをしたい!とか、オープンスクールでこんなことをしたらいい!とかあったら教えて欲しいんだー。」
そう尋ねると、1番初めに手を挙げたのはレーベだ。はいはい!と大きく手を挙げている。レーベは発想が豊かだからこういったことには積極的に意見を出してくれるのだ。
ちなみに、リルは何事においてもていねいでしっかり者、カイトは仲間想いで優しいなどそれぞれとても素敵ないいところがある。まあ、それだけじゃないんだけれど。いい所なんてあげたら切りがないくらいある。
「はい、レーベ」
「あのね、僕ね、思ったの。授業とか受けるときにね、この時間にこれがあるよーみたいなのが見てくれている人にわかったらいいなって」
精一杯説明してくれるレーベを微笑ましく思う。レーベの提案は、前世で言うしおりやパンフレットのようなもののことを言っているのだろう。遠足とかで必ず貰うあれだ。
「ありがとう、レーベ!そうだね、どの時間にどれをするってわかったら聞きやすいものね。カイト、リル、どう思う?」
すると、カイトはニカッと笑って、
「とてもいいと思うぜ!あ、でも、字がいっぱいだと読めないと思うんだ……あ、思います」
そうだよねぇ。だってそもそも学校を作ったのは識字率を上げるためでもあったわけだもの。すると、スッと手を挙げたのはリルだ。小さな声で、
「……あの……絵、描いたらいいんじゃないですか……。私で良ければ……描きます」
と言ってくれた。リルは絵も描けるのか。初耳だ。毎日本当に色んな発見があるなぁ。
「わぁ、いいと思う〜。レーベね、リルの描いた絵、好きだよぉ」
「ありがとう……レーベ」
レーベの言葉にリルがそっと笑う。すると、カイトがリルの方を向きつつ、
「お、俺も!!見たことないけど、多分リルの絵、好きだぞ。みたいって思うぞ!!」
「ありがとう……カイト」
リルがはにかむように笑うと、カイトはうっと一瞬動きを止めてから目を左右に揺らした。微笑ましいわね。
「じゃあ、時間を知らせるもの……ここでは、”しおり”と呼んでおきましょうか、の制作を行うことは決定でいいかな?」
と言うと、みんなは頷く。
「絵はリルが担当してくれるのね、ありがとう。1人じゃ大変だと思うから、みんなどんどん手伝うから何かあったら……「もう無理!」とか「疲れたよ!」とか「これ手伝って!」みたいになったら言ってね」
リルに言うとリルは首をそっと縦に振った。印刷技術がない今、しおりは1枚1枚手書きになる。写本みたいに。だから、できるだけ手伝いたい。
そんなリルは絵を描くのが楽しみなのか心做しか目がキラキラして見える。リルは絵が好き、覚えておこう。
「他に何かしたいこととかない?あと質問とか」
「先生、質問!」
「はい、カイト」
「なんの授業するんですか?」
そうカイトに問われてハッとする。そう言えば言ってなかった!
「ごめん、言ってなかったね!予定では国語と算術です。最初国語の授業をしてから、休み時間を挟んで算術をします」
と言いながら、確認するようにアンディ様の方を向くと、アンディ様もうんと頷いた。それからカイトの方を見ると、カイトはわかったと言うように頷いた。
「分かりました、ありがとうございます」
アンディ様は黒板に、”しおり”のことと、授業時程を書いてくれる。その時、レーベが大きく手を挙げた。レーベをあてると、
「リルは絵を描くでしょ?レーベも何かしたい」
と言ってくれた。
「そうねぇ、じゃあ、2人には、しおりの手伝いと図書室から数冊持っていく本を選んで貰おうかな」
本の良さを知ってもらいたいために図書館の本を数冊持っていくことにした。
お読み下さり、ありがとうございます。
そして、知らぬ間にブックマークも増えておりました。ありがとうございます。




