72話★アクティビティと話し合い
今日のアクティビティは、「サイレントしりとり」だ。この文字学習では何度か取り上げたことがある。
ルールとしては、普通のしりとりと同じだ。他の人が言った言葉の最後の文字から始まる言葉を次の人が言うのである。
ちなみに、こちらにはしりとりの概念はなかったから、説明するのに苦労しました。頑張った、私。
そして、今回はしりとりはしりとりでも「サイレント」なので話さず、黒板などに「書く」ことによってしりとりをする。文字の練習をしたいので、話さず文字だけでするのだ。
ちなみにこれは、私が大学の授業の模擬授業にて友達がしていたのを改良したものである。
もうちょっと人数がいたら班対抗とか列対抗とか出来るんだけど、いかんせん3人だけだから、協力してできるだけ繋げる、というルールにしている。
もう少し生徒が増えたら、多く繋げられた人が勝ち!や、何語って決めて早くできた人が勝ち!とかしたいな。絶対盛り上がる。
その場合はいじめに繋がらないようにグループの配慮はしなければならないけれど。あと、ルールの配慮も。できない人が非難されるみたいなことは嫌だからね。
ともかく、1番言いたいのは!!生徒、かもぉぉぉおおおん!!心からの叫びです。
それはさておき、
「今日は、サイレントしりとりをします!」
そう言うと、3人は嬉しそうな声を上げた。
「おおお!」
意外と人気なのよね。多分ずっと書き取りとかより遊び感覚に近いから楽しいのだと思う。楽しく学べるって素晴らしい、と私は思うのだよ。
「ルールを確認しておこうね!サイレントしりとりは、喋ったらー?」
「ダメー!!」
私の問いに、レーベは両手で大きくばつを作りながら、少しはにかみながらリルは声だけで、カイトはボソリとそう言った。
その答えを聞いて、私は大きく頷く。
「よく覚えていたね!そうそう、しーって秘密の話みたいにしりとりするの」
しーっの部分で人差し指を口に当て、3人をそれぞれ見やる。その言葉に3人は頷く。
「お友達がどうしても文字が分からない時はー?」
「お助けする!」
これは、3人協力プレーだからのルールである。文字が苦手な子もいるので、何とか救いの手を残しておいている。
相手が書きたいことが想像できればその分からない文字だけならお手伝いをしていいことにしている。
「でも、全部お助けの人が書くのはー?」
「ダメー!!」
全部書いたら勉強にならないからね。
ルールの確認はバッチリだ。
「よーし、じゃあ、ミニ黒板、出してね!今日は”a”から始めよう!私がこの鈴を鳴らすまで続けてね?」
最初の文字を提示し、その文字からはじめてもらう。ちなみに制限時間はだいたい5分で設定している。
時間はみんな家業を手伝っているから数字は読めなくても針の位置などはある程度最初からわかっていたし、算術の授業で数字も習ったからもうだいたいわかっている。ちなみに算術はほとんどアンディ様が担当して下さっている。
「用意はいいー?……よーい、どん!」
その掛け声とともにレーベ、リル、カイトの順にミニ黒板を回しながら言葉を書いていく。
その間私とアンディ先生は3人を見守りつつ、どのくらい分かってそうか?どこを直してあげればいいか?などのチェックをそれとなくする。生徒の理解度把握である。
3人とも、楽しそうでよかった。今度はもっと色々なゲーム、考えなきゃなぁ。生徒たちが楽しんでくれるゲームかぁ……。
あ、あと、オープンスクールでも国語の授業は多分するから、何か考えなきゃだわ。公開授業では見ている人にも参加してもらうつもりだけれど、しりとりはある程度文字学習が進んでいないと難しいから。
文字学習が進んでいても進んでいなくても楽しめるゲーム……。少し読めたら参加出来るゲーム……を考えよう、うん。
なんて思いつつ、生徒がしりとりをしているのを見ていると、ちょうど時間が経ったため、鈴をならしたのだった。
「どうだった?」
そうアンディ様が尋ねる。
「この前より3個増えて12個になったぞ!」
カイトがニカッと笑いながら言う。嬉しそうだ。
「それはよかった!よくやったね!3人とも!」
アンディ様が優しく微笑む。私も隣で全力で拍手した。よく頑張ったぞ、3人とも。
「……次は15個めざす……」
リルがキュッと決意を込めたように手を握りながら言う。おー、燃えとるー。
「うん、レーベも、もうちょっと早く書けるように頑張る」
「俺は知っている言葉を増やすぞ!……本を沢山読む!」
「それっていつもの事じゃ……?」
カイトの言葉にレーベが言うと、カイトはふんっと少しそっぽを向いて、
「いいんだよっ!」
と言ってからチラリとリルを見る。
「カイトらしくて……いいと思います」
「だよな!リル!!」
★★
その後も算術、理科と何事もなく終わり、次は学活の時間になった。黒板の前にアンディ様の隣に、そして生徒と向かい合わせになるように立つ。
生徒たちは何が始まるのだろうと不思議そうな顔をしている。当たり前だ。今日は記念すべき学活一発目である。
学活をするということと、学活とは学級で話し合いをしたりする活動をするということは伝えてあるが、細かいことは伝えていない。
「はい、せんせー!」
レーベが大きく手を挙げる。手を挙げてからの発言、というのも随分慣れてきた気がする。大きく手を挙げるレーベが可愛い。
「はい、レーベ」
「今日、なにするの?」
「いい質問ですね!今日は、オープンスクールについて話し合いまーす!」
「おーぷんすくーる?」
私の言葉に3人がぽかんとした顔で首を傾ける。その顔が3人とも同じで微笑ましい。
「はい、先生。おーぷんすくーるってなんだ?」
カイトが代表するように尋ねる。
「じゃあ、質問!もうちょっとお友達がこの学校に来てくれたら嬉しくない?」
「あ、うん、まぁ……そうだな」
「嬉しい!お友達!増える!!」
「女の子の……お友達……欲しいです……」
三者三様の反応だったが、とりあえずお友達が増えることに反論はないらしい。ちなみに、1番上がカイト、2番目がレーベ、3番目がリルである。
「そこでね、この学校を広めよう!っていう活動がオープンスクールだよ!」
はしゃぐ2人の隣で難しい顔をしているカイトを見やる。
「おーぷんすくーるってのが、どんなふうかわからないけれど、友達を増やすのは大変なんじゃないか……?」
「お、どうして?」
こういう意見は貴重だ。いっぱい取り入れねば。
ブックマーク、ありがとうございます!
最近ちゃんとお礼を言えてなかったので!!




