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5話★私のしたいことって何かしら

その先には、私の元の家やマーク公爵家には及ばないながらも広さ、美しさ等申し分ない屋敷があった。


白い壁に優しい緑色…若草色の屋根。そして、その屋敷の周りには草木があり、その外側を外と区別するように、若草色と白色の門が囲んでいる。


少し古びているが、それによって気品も美しさもかえって増しているような気さえしてくる。


周りに家はチラホラと見えるが、あまりなく、周りは静かだ。その静けさは何だかこの屋敷にはあっていて、私の心も落ち着く。


そよそよと風が吹く。


ここに住んだら本当に居心地いいだろうなぁ。


「綺麗……」


思わず私がそう言うと、アンディ様はふわりと笑った。


「レベッカさんのお眼鏡にかなったかな」


お眼鏡に適いすぎてます。とても素敵です。本当に私が住んでいいのかしらって割と真面目に思うくらい。


だって、いくら私がマーク公爵の友達の娘だからって普通ここまでしないよ。なんの利益もないもの。


「本当にこんな素敵なところを貸していただけるんですか?」


少し不安になって尋ねる。やっぱり気が変わった、とかないわよね。


私が少し眉を下げると、首を傾けるアンディ様。


アンディ様が首を傾げると、その栗色の髪がそれと一緒にふわりと揺れる。青い瞳も不思議そうに揺れている。


こういうふとした表情が様になっている、美青年だわ。


「うん、勿論。どうして?」


「私にこの家を貸しても利益も何もありませんし…」


「実はこの家、マーク家の別荘なんだよね。でも、この通り少し不便なところにあるでしょう?」


確かに、あまり家が周りにないものね。


「それから、本家から少し近すぎて別荘って感じじゃなくて、全然使わなくなっちゃったんだよね」


確かに、馬車で数十分くらいで行ける距離だものね。


「だから使ってくれると僕達も嬉しいんだ。……ごめんね、なんか不要品を押し付けたみたいな感じになっちゃって……」


アンディ様が申し訳なさそうに眉を下げた。わ、あ、頭下げさせちゃった……。


「そ、そんなことないです!気を使わせちゃってごめんなさい……とても素敵な家だったので…でも、それなら遠慮なく使わせて頂きますね!」


「うん、ありがとう」


そうこうしているうちに、家の前へと着き、馬車が門の前で停車した。近くで見るとやっぱり綺麗な屋敷だ。


馬車を降りようとすると、すかさずアンディ様が私の手を取り、乗る時と同じようにスマートにエスコートしてくれた。


私が降りると、後ろをリリとアンナも降りる。


「さあ、こっちだよ。中を案内するね」


アンディ様に連れられ、草木、花が植えられた美しい庭を通り、屋敷の中へと入る。


屋敷の中は、外見に負けず劣らず美しかった。物はあまりないが、落ち着いた色合いでまとめられている。


「ここが玄関ホール。こっちを行くと広間。それから、あっちはお風呂だよ」


アンディ様が屋敷の中を歩き、指をさしながら教えてくれる。 そして、アンディ様は、ひとつの扉の前で止まった。


「それから、ここなんだけれど。ここは、ぜひ君の部屋にって思っているんだ」


アンディ様はそう言うと、カチャリと扉を開けた。


すると、広がるのは、お姫様のお部屋、のような部屋。薄い桃色の天蓋付きベッド、金色の縁どりで赤い絨毯、白地に金色で蔦模様の描かれた丸テーブル。メルヘンチックで乙女な部屋、と言った感じだ。


一言でいうと、可愛い。一目で気に入ってしまった。


「可愛いお部屋ですね!」


私が言うと、アンディ様は、


「気に入ってくれたら嬉しいよ。実は、この家具は母上が選んだんだ」


「こ、公爵夫人が、ですか!?」


驚きで思わず大きな声が出てしまった。


「うん。目をキラキラさせながら選んでいたよ。母の趣味でごめんね」


あの凛とした、少し冷たい印象の夫人が、このメルヘンで乙女チックな部屋を………人は見かけによらない、ってやつですわね。


私がそんなことを思っていると、動揺しているのがバレたらしく、アンディ様が苦笑する。


あら、顔に出てました……?私、顔には出にくい方だと思っていたのだけれど。


「母上は、あんなツンとした感じだけれど、内心、娘が出来たって喜んでいるんだよ?うちは男二人だからね」


「そ、そうなのですか……」


公爵夫人の意外な一面を知ってしまったわ。


「喜んでくれたって分かったら、母上も喜ぶよ」


「公爵夫人にお礼をさせていただきたいです」


「じゃあ、僕から伝えておくね」


アンディ様がそう言って笑う。本当は直接お礼を言いたいのだけれど……。今度お会いした時に絶対言おう。


「ありがとうございます」


それから、残りの部屋を周り、厨房を紹介された。


案内が終わると、アンディ様と2人で広間に入り、お茶をすることになった。


リリが紅茶を入れてくれる。1回の案内で場所等は覚えたようで、昔からここに住んでいたようにテキパキとお茶の準備をするのだから、彼女は本当に凄いと思う。


先程マーク家でお菓子はもう頂いたため、今回のお茶は紅茶のみだ。ちょっと寂しいけれど、夕食が食べられなくなったら大変だものね、と納得する。


リリが入れてくれたお茶をそっと口元に持っていき、一口飲む。お茶で一息つくと、アンディ様も同じく紅茶を一口飲まれ、カップをソーサーに置いてから、口を開いた。


「レベッカさん」


「……あの、出会った時から思っていたのですけれど、レベッカとお呼び下さってかまわないのですよ?」


私が言うと、アンディ様は少し驚いた顔をしてから、ニコッと微笑んだ。


「じゃあ、レベッカ。君はこれからはどうするの?」


アンディ様が何気なく、といったように聞く。


「そう…ですねぇ……」


答えに詰まる。


そもそもこっちに来ると決まったのも急すぎるし、それから怒涛のように今まで来たから、これからの事を考えている余裕なんてなかった。


「したいこととかある?」


したいこと……か。

前世の夢は教師だったなぁ……。志半ばで夢どころか命ごと潰えたけれど……。


そう言えば、この国の教育制度はどうなっているのかしら。


「この国の学校とかってどんな感じなのですか?」


「学校……?」


「はい」


母国、スミス王国では貴族向けの学園はあったわね。私は家庭教師を雇って勉強していたから行ってなかったけれど。


そう言えば、フラン殿下はクレア嬢が通っているからという理由で貴族向けの学園に行っていたはず。


貴族達の学園なんて、前世の記憶を取り戻した私からすればとても興味あるのだけれど。


控えめに言っても、めっちゃ見たい。見学に行きたい。あわよくば授業を受けたい。


それから、確か、あまり整備されていなかったけれど、平民向けもあったような気がする。


一応、等しく教育を受ける権利、みたいなのがちゃんとしてた。……なんか、日本のゲームって感じだね。普通教育を受ける権利は、日本国憲法だよ……。


でも、平民向けは今の日本ほど教育はしっかりしてなかったわね。教会で勉強したい子は勉強する、みたいな感じ。先生もお偉い人的な感じではなかった、と思う。


今の時代は、子供たちは重要な働き手。つまり、その教会の勉強会に参加できるのもある程度裕福な子達のはず。等しくとはうたっているけれど、実際等しくはないのが現状よね。


なんて記憶を辿る。


「貴族向けの学園ならあるよ。兄上は、今、通ってる」


「なるほどです。学園って、どんな感じなのですか?私、通ったことなくて……」


私の問いかけに、アンディ様は、悩むような素振りを見せる。そして、僕も学園には通っていないから、詳しくは知らないけれど、と前置きをしてから、


「王宮で勤めるために色々なことを学ぶらしいよ。大臣とか、執務官とかになるために」


なるほど、王宮で働くなら、ある程度の教養が必要だものね。


じゃあ、王宮で働けるのは、貴族達だけなのかしら。私が気になって尋ねると、アンディ様は、一応平民も働くことはできる、お金を払ったり、試験を受けたりすればね、と返してくれた。


なるほど、優秀な人材を取り入れる制度はあるんだ。


それから、貴族になることもまれにだけれどあるんだよ、と教えてくれた。貴族に養子入りしたり、自分たちでお金を貯めて、それなりに国にはらったらね、とのことだ。


「あ、あと、魔法も教えて貰えるよ!」


アンディ様が思い出したように付け足した。


そうだ、ケイラー王国には魔法が存在するんだった。因みに、魔法の力が1番強いのは王族で、その親戚筋は大抵魔法が使えるらしい。血が薄くなれば、魔力も少なくなるらしいが。


アンディ様のお母様、マーク公爵夫人は、現国王の異母妹であるため、国王陛下の甥にあたるアンディ様も少なからず魔法が使える、と教えてくれた。


「そうなんですね!……では、平民向けの学校は、ありますか?」


魔法かぁ、素敵だなぁ。なんて思いながらも、1番大切なことを聞いた。


「んー、僕は聞いたことないかなぁ。それに、平民向けの学校があってもきっと、いかない人が多いよ」


きっと、今の生活で手一杯って人が多い。今もままならないのに、未来への投資なんてできるかって思うのかな。


でも、自分が教師になりたかった人間だから贔屓目があるのかもしれないけれど、教育って大切よね。


それに、領地だって、豊かになりたかったら、教育を積極的に認めるべきだわ。それを認めることで、領地の、ひいては国の繁栄に繋がるんですもの。


全員が貴族になったら、それはそれで収集がつかないけれど、全員の学力を上げるのは悪いことではないはずだ。知識はしっかり持っていた方がいい。


例えば、領地に税金を納める時。貴族の中には横領などの不正をする人もいる。うちの領地ではお父様が領主だかそんなことないけれど。それに、マーク公爵もそんなことはしないと思うけれど。


ともかく、そんなことがあった場合、知識があれば、ちゃんと意見が言えるようになる。


そう思う、私は……。

私がすべきことは……。


ゆっくりと、アンディ様を見据える。


「したいこと、見つけました」


私が言うとアンディ様は興味深そうに私を見る。


「何をしたいの?」


「私、誰でも、身分関係なく通える学校をつくりたいです」


ありがとうございます!

そして、今年の更新はこれで最後となります…!


皆様、お読み下さりありがとうございました!良いお年を!


どうぞ来年もよろしくお願いします。



【次の更新は!2020年、1月4日予定!】


新年に、実はちょっとした更新祭りを行おうと思います!!


名付けて!「新年一発目!新春更新祭り!」です。


……実に平凡……


まあ、それはさておき!


毎週土曜日更新になっているこの小説なのですが、4日、5日、6日と!


3日間!


連日更新します!


よろしくお願いします。



それから、ご要望や感想、ございましたら教えて下さるとうれしいです( *¯ ꒳¯*)


また、よろしければ、評価の方も……

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