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65話✲よく分かんねぇ苛立ち (ルカ視点)

 ここ最近、あの変わった令嬢の元気がない。まあ、理由はわかり切っているが。


 あいつが一生懸命取り組んでいる、学校づくりが上手く行かないからだ。


 ここ数日、生徒が3人しか来ていないらしい。一日目の時1度落ち込んで、少し持ち直していたが、数日続くとやはり気も滅入るのだろう。


 初めてのことが成功する程現実は確かに甘くない。ましてや今までなかったものがそう簡単に認められるなんてことは余程のことがない限り無理だ。生半可なことじゃない。


絶対成功するなんてただの傲慢でしかない。


 だが、話しかけてみても、いつもの様に返してくるわけでもなく、どこか上の空なのは、気味が悪い。そして、なぜだか落ち着かない。


子供たちに教えている時は明るい顔をしているものの、子供たちが帰るとしょんぼりとしている姿がよく見られる。


そんな姿がどこかあいつらしくなくて、よく分からないけれど、腹が立つ。そして、そんなよくわからない理由で腹を立てている自分にも余計に腹が立つ。


 そんな苛立ちをどうにか解消したくて、気がついたら俺はあいつの目の前に来ていた。しかも丁寧にラッピングのされた花を持って。


学校終了後、あいつは教室の中でポツンと1人座っていた。ボケーッとあほ面を晒しながら、生徒用の席に座っている。


 それにしてもあの小屋をよくここまで改造したもんだなんて思いながら近づき、俺は声をかける。


「おい、お前」


 声をかけると緩慢な仕草で顔を上げる。その顔はやはり沈んでいて……。眉が下がり、元気がないのがとてもよくわかる。


やっぱり落ち着かない。


どうして俺がこんなこと思わなくちゃならねぇんだ……!


 そんなことに苛立ちながらも、言葉を続ける。


「落ち込むなよ、らしくないじゃないか。…ほら……」


ばっと花束を差し出すと、


「………!?」


 驚いたように目を白黒させながら何度も俺の顔と花束を見る。見知らぬ土地に来たような顔をしている。ありえないものを見たような顔だ。


「んだよ、異世界に飛んできたみたいな顔して」


そう言うと、こいつは面食らったような顔になる。先程落ち込みから少し顔色が浮上する姿に何故か安心する。


「どんな顔よ、それ」


「まさに今の顔。変な顔がさらに変になっている顔」


そう言うと、ムッと顔を歪ませる目の前の女。


「変って酷くないかしら。ある程度美少女の分類に入ると思っていたんだけど」


「自分で言うのかよ、それ」


「だって間違いじゃないでしょう?」


「どこからそんな自信湧いてくるんだよ」


「んー、どっか?」


「というかいつまで持たせんだよ。さっさと受け取れよ」


差し出しているこっちが恥ずかしいじゃねぇか!


「ごめん、ごめん」


謝りつつ女が花束を受け取る。


 ポンポンとした言葉の返しが続く。そうだよな、こいつとはこうでなくてはならない。少しだけ苛立ちが収まってくる。


そうやって久しぶりに軽い言葉の言い合いに満足していると、少し間が空いて、


「………ありがとね」


 笑顔を見せるこいつに少し心が軽くなった。これで少しは俺の平穏が保たれる。俺が、落ち着く。


「心配してくれたんだよね?」


心配っ!?


俺が?!お前を!?

違う、断じて違う。


 俺はただ自分に腹が立ったから解消するためにそうしただけだ。


そうだ、つまりは、この行動は、自分の苛立ちの原因をなくすためで、決してこいつを心配している訳では無い。断じてない。


「ちがう!あんたを心配なんかするわけないだろ!」


「ふふふ、そう?」


 面白いものをみたような、俺の言葉を絶対信じてないような顔をして笑うから、強引に話を変える。


「……後な、お前の学校に人が来ない理由だけどな」


 そう言うと、キョトンとした顔をする。間抜けなあほ面が子気味いい。


「……? 噂があるんじゃないの?」


「それもあるかもしんねぇけど、それはお貴族様の話だろ。ほかの理由もあるらしいぞ」


「え?」


「これは、俺が街に行った時に聞いた話なんだが、どうやら学校の時間に問題があるらしい」


「時間?」


 これも、決してあんたを心配した訳じゃねぇからな。ただ、街に出た時に聞いただけだ。たまたまだ。


「職種によっちゃあ、朝に出かけるのが辛いものもあるらしいぞ」


そう、朝が忙しい仕事もある。朝だけなら来られない子もいる、という話を何となく聞いた。そう、何となく。


 女は目からウロコが落ちたとばかりに、ぱちぱちと目を瞬かせた。


「なるほど、それは盲点だったわ」


驚いたような顔をしてから、頷き、そして、にっこりと笑顔を浮かべる。


「ありがとう、ルカさん」


ぐ、なんだよ、その笑顔。


「別にお前のためじゃねぇ」


「ううん、それでも。ありがと」


 俺は俺のためにしただけなのに。それなのに嬉しそうな顔をしているのが何だか癪だから、


「で、あんた、名前なんだっけ?」


「初めて会った時、自己紹介したでしょうが!」


からかっておいた。


ちょっと溜飲が下がった。


その後色々返されたけれど。

この前のお話のルカさん視点です。

レベッカ視点では伝わらない心情とか伝わればいいなぁって思います。


ルカさんは多分ツンデレなんです。


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