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64話★不器用な励まし

 やれることを頑張る!と決意してから数日。やはり現状は変わらない。生徒の前ではいつも元気でいようって心がけているから大丈夫なんだけれど、1人になると、やはり落ち込む。


 迷惑かけてること。それから、気を遣わせちゃっていること。それが辛い。どうにかして現状を変えたいけれど、どうしていいかわからない。このまま噂が無くなるまで耐えていればいいのか。


そんなことを思いつつ教室にいると、


「おい、お前」


 ぶっきらぼうな声が聞こえてきた。この声には聞き覚えがある。


ルカさんである。


何回か話しかけられている気もするが、なんの用だろうか。


そう思いつつ顔を上げると、ルカさんはムッと不機嫌な顔で立っていた。


「落ち込むなよ、らしくないじゃないか。…ほら……」


 ぐっと眉を盛大にしかめたまま、何かをずいっとこちらに突き出したルカさん。その手には、色とりどりの花が入った綺麗な花束があった。


「………!?」


何?どういうこと?どういう風の吹き回し?


 そのままどうしていいか分からず戸惑っていると、ルカさんが苦虫を噛み潰したような顔をする。そんな嫌そうな顔で渡すものだろうか、花束って。


「んだよ、異世界に飛んできたみたいな顔して」


「どんな顔よ、それ」


  異世界から飛んできたみたいな顔ってなによ。私はまあ、異世界から来たけど。間違ってはないけど違うくない?


「まさに今の顔。変な顔がさらに変になっている顔」


「変って酷くないかしら。ある程度美少女の分類に入ると思っていたんだけど」


こちらとら、花の乙女よ。花の十六さいよ?


「自分で言うのかよ、それ」


「だって間違いじゃないでしょう?」


「どこからそんな自信湧いてくるんだよ」


「んー、どっか?」


「というかいつまで持たせんだよ。さっさと受け取れよ」


「ごめん、ごめん」


謝りつつ、花束を受け取る。


 ちょっとムカッとするけれど、多分これは彼なりの励ましなんだろうなぁって思う。彼とこういう軽い言い合いをしていると、楽しくなってきて、なんか落ち込んでいた自分が馬鹿みたいに思えてきた。


「………ありがとね。心配してくれたんだよね?」


 これは彼なりの心配なんだ。私が素直にお礼を言うと、彼はカッとその瞳を見開く。


「ちがう!あんたを心配なんかするわけないだろ!」


でも、そう言った彼の顔はどこか朱に染っていて。


「ふふふ、そう?」


 口悪いけど、いいとこあんじゃん、そう思っていると、空気に耐えきれなくなったらしい目の前の男は少しだけ首を振って熱を冷ますと、


「……後な、お前の学校に人が来ない理由だけどな」


「……? 噂があるんじゃないの?」


あれ?噂があるって聞いたけど?そう思って首を傾げていると、


「それもあるかもしんねぇけど、それはお貴族様の話だろ。ほかの理由もあるらしいぞ」


と大層驚くことを言われた。


「え?」


「これは、俺が街に行った時に聞いた話なんだが、どうやら学校の時間に問題があるらしい」


「時間?」


「職種によっちゃあ、朝に出かけるのが辛いものもあるらしいぞ」


 目からウロコだった。なるほど、そういうこともあるのか。


「なるほど、それは盲点だったわ」


 お礼を言いつつ考える。噂の改善は難しいが、時間の改善ならばなんとかなるはずだ。例えば、2日ごとに同じ授業をしてどちらかに来てもらうとか、週末を使ってまとめておさらい講座をするとか。


現状を見たことがないからなんとも言えないけれど、今思いつく限りではそんな感じである。


 それはのちのちみんなと考えることにして、とりあえず情報をくれたルカさんには感謝だ。


「ありがとう、ルカさん」


 そう言うと、ルカさんには目を見開いたあと、ぷいっとそっぽを向いた。それはもう、ぷいっていう修飾語がピッタリなほどに。


「別にお前のためじゃねぇ」


ルカさんって照れ屋なのかな。


「ううん、それでも。ありがと」


 そんなことを思いながら、微笑ましく見守っていると、ルカさんは急にこちらにくるりと振り返った。何かな、と思って言葉を待っていると、ルカさんはすっとぼけたような顔をして、


「で、あんた、名前なんだっけ?」


と聞いたのだった。


「初めて会った時、自己紹介したでしょうが!」


 そういや、自己紹介のとき早々に「よろしくするつもりはない」とかなんとか言われたんだっけ!?


「そうだったけ?」


「レベッカよ!レベッカ・アッカリー!!」


「ふーん、まぁ、頭に余力があればおぼえておくよ」


「何なの!?名前すら覚えられないの?アホなの?」


「アホとはなんだ!」


「アホはアホよ!」


「俺は頭はいいんだからな!」


「じゃあ、その優秀な頭に刻んでおいて!私は、レベッカよ!!」


 令嬢さの欠片もなく怒っていると、ルカさんはふっと笑った。いつもは見せない笑顔に少し驚く。


「元気になったみたいだな。落ち込んでるより、怒ってる方が幾分か顔がマシだな」


いや、まあ、そーだけどね、うん。

もっとなんかなかったの?!

幾分かマシってなによ?!

こういう軽い言い合いって書いていてとても楽しいです。


ポンポンって浮かんできて、ついつい暴走させたくなっちゃうんですけどね苦笑


暴走させないように気をつけようと思います。


次回は、ルカさん視点のお話です!


よろしくお願いします。

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