63話★職員会議と気分転換
だいぶ更新せず、すみませんでした……。
太陽が頂点を過ぎた頃、私たちは教室にいた。机を人数分班の形にくっつけて座っている。職員会議をするためである。
職員室でしても良かったのだが、ウィル先生がこっちがいいと謎の駄々をこねたからである。「どうして?」と尋ねたら、「何となく」と返ってきた。大の大人が何となくでただをこねるなと思ったのは私だけではないはず。
それはさておき、ジェニー、ウィル先生、アンディ様、リリ、私のいつものメンバーで机を囲み、話し合いが始まる。
「それで、今日、生徒が来なかった理由だけれど……思い浮かぶことはある?」
アンディ様が尋ねた。最近会議をする時の司会はアンディ様かウィル先生が担当することが多い。
5人でうーんと悩む。それから、ウィル先生が、あっと声を上げた。
「最近、社交界に嫌々出たんだけどねー…」
ウィル先生が、「嫌々」の部分を強調して話し始める。その時、口をへの字に曲げて顔を顰めていたから相当嫌だったんだろうな、というのが伝わってきた。
「ある令嬢の噂が流れていたんだよ……。名前は出ていなかったけれど、腰ほどある茶色の髪に青い目、マーク家に出入りしてる令嬢の噂なんだ」
ウィル先生がいつものふざけた調子は封印したように真剣な声音で言った。
「その姿って……」
その声とともに私の方へと視線が集まる。だが、その視線がなくてもわかる。その印象は、その噂はきっと……
「……私かしら……?」
私がそう言うと、ウィル先生は不安そうな心配そうな顔になり、
「だよね……?その令嬢がある家を追い落としたとか極悪だっていう噂が流れていて……」
………!
思わずピクリと身体が跳ねる。表情には出さないように気をつけたけれど、もしかしたら顔に出ていたのかもしれない。みんなは心配そうな顔で私を見ている。すぐにこういう弱みを見せるのは貴族としてはあまりよろしいことではないのに、私、最近ほんとダメだよなぁ。
身体はレベッカだから所作はちゃんと貴族なのに、頭は前世の私が半分以上占めているから言動や考えることなどが私なのだと思う。
1度下を向いてから、みんなの方を向き直る。みんなの心配そうな視線が今ばかりは、痛く、とても忌々しいものだと感じる。
ちょっと冷静にならなきゃダメね。
ふっと笑いかけ、
「ちょっと1人になるわ……」
と言うと、みんなはコクリと頷いてくれた。そのため、今日は解散となり、私はリリとともに自分の屋敷へ帰った。
明日もまた学校があるから、明日までには気持ちをなんとかしなきゃね。
★★
『ある令嬢の噂が流れていたんだよ……。名前は出ていなかったけれど、腰ほどある茶色の髪に青い目、マーク家に出入りしてる令嬢の噂なんだ』
『だよね……?その令嬢がある家を追い落としたとか極悪だっていう噂が流れていて……』
部屋に帰ってからもウィル先生の言葉がぐるぐるとまわり、更に落ち込む。噂っていうのは、致命的でタチが悪いものだ。
人の口に戸は立てられぬ、とはよく言ったもので、知らない間に伝わってひろがっていくし、なかなか消えない。
人から人へ伝わる時に、おひれはひれがついて伝わることもある。
社交界でひろがって、領民の所にも噂が届いたのだろう。そして、その令嬢が誰かなんてすぐに検討がつく。そんな私が作った学校なんてとても行きたいとは思わないだろう。
自分がやりたい、作りたいと思って、色々な人に協力してもらっているのに、それが自分のせいでぶち壊しだなんて、情けないし、気分が沈む。申し訳ない気持ちも一緒に湧いてくる。
リリに髪の毛を梳かして貰っていると、私の憂いが伝わってしまったのか、鏡越しに心配そうな顔が見える。
でも、私の心情を理解しているからか、その事については何も言わない。そして、その代わりに、
「お嬢様、アンディ様からお借りした本、読まれますか?」
と言った。気分転換を勧めてくれているようである。
そういえば忙しかったから全然読めていないけれど、アンディ様から歴史、神話、魔法についての本を借りていたのだ。
「そうね、そうするわ」
頷くと、リリは私の髪を梳かし終え、緩く結んでくれた後、3冊の本を持ってきてくれた。
「どれをご覧になりますか?」
「そうねぇー、順番に読むわ。どれもそんなに厚くないみたいだからすぐに読めそうね」
きっと、アンディ様は分かりやすくまとめられているのを選んでくれたのだろう。
「お嬢様には物足りないかもしれませんね?」
「そんなことないと思うわ」
そう言って2人で少し笑い合う。少しだけ気分が上向きになった。
「紅茶、いれてきますね」
こういう気遣い、ほんとに優しいよね。
それから、私は読書に没頭した。
本にはこの国のことが分かりやすく書かれており、成り立ちや神々についてなどが書いてあった。
この国は神々によって作られたこと。
成り立ちとしては、何も無いこの土地に、
太陽の神
海の神
空の神
植物の神
が現れた。
そして、太陽の神は火の力、海の神は水の力、空の神は風の力、植物の神は土の力を持っていた。
その神々は国を作り、そして、最初の人間、『国王』を作った。そして、その国王にそれぞれ力を与え、それが『魔法』となった。
その国王が治め始めたのが、このケイラー王国らしい。
そして、魔法は代々王になる者に1番強く受け継がれる。
そして、貴族は魔力を多く所持し、平民は魔力を所持しない。というのも、神々から賜った力の順に身分を決めたからだ。
だから、魔法の呪文が、
「神々の御名に連なる者として、〇〇の神の御力を賜らん。我の願いを聞き届けよ」
なのね。
神々の御名に連なる者、という表現は、実際に神々を筆頭として名前を連ねている、という印象なんだわ、多分。
この辺の国の成り立ちについては、ウィル先生に聞いたことの繰り返しになるわね。
それから、本にはもう少し詳しいことも書かれていた。
太陽の神は、武力の神様。
強そうだからぴったりだなというのが私の感想。
海の神は、創造の神様。
生命の源であり、形にはまることなく自由に形を変えることが出来るから、まさに創造って感じ、とこれも早々に納得。
空の神は、動力と癒しの神様。
不浄のものを吹き飛ばす力があるらしい。
植物の神は、守護の神様。
壁とかのイメージかな?と勝手に解釈。
そして、神々は一応人型を取っているらしく、太陽の神と植物の神は男性、海の神と空の神は女性らしい。
神様のお姿なんて、見た人いるのかしら?
なんて思いながら読み進めると、
なんと!実際に見えるらしい。驚きだね!なんてファンタジックな世界!
しかし、ほとんど姿を表さないからほとんどの人が見たことがないんだそうだ。だから、神様が見えるということは神の愛し子になったと同義だとか。
大昔に神々に気に入られた愛し子がいたが、今となっては愛し子になるのは伝説だとまで言われるくらい、愛し子になった者はいない、とも書いてあった。
また、神々を祀っているのが、王都にある神殿であり、神々はそこに住んでいるという言い伝えがあるらしい。
そして、各地には教会が設置され、地方でも神々に祈ることはできるようになっている、とのこと。
神話の本には、そんな神々のエピソードがたっぷりのっていた。怒ったり、誰かに恋に落ちたり、喜んだり、悲しんだりなど私たちと寸分変わらぬような日常が描かれていた。
ただ、怒って建物ごと破壊したり、恋を存分に表現するために土地にたくさんの花を芽吹かせ急激に成長させたり、喜びを表すために幸福の光をそこら中にまいたり、悲しい時は国中に雨を降らしたりとかはさすが神様だな、と思う。
感情は同じでも表現がダイナミックだ。
神様って凄い。さすが神話。
そうやって本を読んでいると、ほんの少しだけ気分が浮上した。
いい気分転換になったわ。
「明日も、頑張ろ……」
明日はまた、学校がある。
とりあえず、今できることを存分にしなければならないわね。
お久しぶりです、花川です。
更新、遅くなってごめんなさい……。
待ってくれてる人がいたら嬉しいなぁ……。
今回はこの国の世界観についてお話させて頂きました。少しでも伝わるといいなぁと思います。
次回は、学校2日目とルカの励まし、です。
よろしくお願いします…!




