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57話★準備は万端!

「どうしよう、これ」


 今日も今日とてうららかな日。残念ながら花々は植えてないので花の甘やかな匂いはしないが、緑の葉の匂いが風に乗ってこちらまでやって来ている。


そんな中、いつものメンバーであるアンディ様とウィル先生とジェニー、リリ、そして私は学校づくりの現場である小屋に来ていた。


 今日はカーテンが一応完成したので広げて完成度を見たあと、職員室と教室の間に吊るす作業まで出来たらいいな、と思っている。


そんなこんなで、教室の机を6つ班のように向かい合わせに並べた上にカーテンを広げたのだった。表側はパッチワーク作戦が上手くいき、とても綺麗に出来た。だが、裏をみると、所々ほつれたように細い糸が出ていた。


 それで、冒頭のセリフに至ったのだ。セリフの主は私だ。


「本来ならば後ろに布を縫い付ければいいのですが……」


 ジェニーも思案顔でそう返す。そうよねぇ。でも、もう布がないし。端に積まれるようにおかれているドレスであったものをちらりと見やりながら思う。ドレスであったものは、ほとんどが切り抜かれていて、もう面影はまったくない。


「こう、半分に折って縫いつけちゃうのはどうかな?」


アンディ様がカーテンを見ながらそう言う。


「短くなりすぎませんか?」


私が言うと、


「確かに……でも、棒とかにかけるなら折った方がいいんじゃないかな?」


「そうですわね……はっ!」


 そこで気づく。カーテンを作ったのはいい。でも、かけること考えてなかった!!!! 棒とか全くないよー!!


サーっと血の気が引く音が聞こえた気がする。ここまで手伝ってもらっておいて、何も考えてませんでした! なんて言ったらきっと怒られる!


「かける為のものについて全く考えてませんでしたわ……」


 そう私が俯きながら応えると、周りの4人はぱちぱちと目を瞬かせた。それから、アンディ様は、ニコッと微笑んで、


「そう言えばそうだったね」


今度はこちらが不思議そうな顔をする番だ。

あれ、意外にも怒ったりしない……。


そんな感情が 顔に出ていたのだろうか、ウィル先生がからからと笑った。


「レベッカ嬢が唐突なのはいつものことじゃない?」


「今更驚かないよ?」


「それに、カーテンを作ることを提案したのは私ですし……」


 ジェニーも少し申し訳なさそうに言った。眉を下げてしゅんとしている様子は、小動物のようにみえる。


はっ! 可愛いジェニーにそんな顔させてしまった!


「ご、ごめんなさい、そういう意味で言ったんじゃないわ!」


「いえ!こちらこそごめんなさい!」


 ジェニーがブンブンと首を振る。その後も、お互いがお互いに謝りたおすという何とも珍妙なことをやってのけ、それからおかしくなってきてどちらからともなく吹き出す。


きゃっきゃっうふうふと笑っていると、しばらく様子を見ていた周りの皆だったが、ウィル先生が代表するように、パンパンと両手を叩いた。


「はいはい、二人の世界に入らないー」


 その声に少しビクッとしてから、はっと我に返る。可愛いジェニーとキャッキャウフフしている場合ではなかった!


そうだよ、カーテンをかける棒だよ! 棒!


「魔法でつくるとか?」


 アンディ様がそう言う。


 おお! 魔法! と感動している私だったが、提案したアンディ様はどこか全面的にこれがいい!っといった風ではなく、あまり気が進まないけれど、という顔をしている。


ウィル先生の方を見てみると、そちらも同じような顔をしていた。


「まあ、それは最終手段だねぇ」


「そうですよね」


アンディ様も頷く。どういう事か不思議な顔をしていると、ウィル先生は、それに気づき、説明してくれる。


「魔法は便利だけれど、万能ではないんだよねぇ。魔法でものを作り、長い時間そのものを維持するためには魔力を流し続けなければならないんだよ。そうしないと、作ったものは存在し続けることが出来ないんだ」


 つまりは、魔法でものを作り出すというのは、魔力でその形に留めることであるということだ。例えば、時計が欲しければ、魔力をその形に留め、魔力を流すことによって動かす。


例えて言うならば、魔力はクッキー生地のようなもので、時計なら時計型に型抜きをするようなものだという。


その作ったものの形を維持するためには、それに魔力を流し続けなければならない。魔力の供給がなくなると、魔力で形作られていたそれは、跡形もなく消えるらしい。


そして、魔力を流し続けるというのは、勿論体内にある魔力を消費することであり、体力同様消費すれば疲れる。


「もし魔法が万能ならば、この世界に机や椅子、家具などは要らないよね?魔法で作っちゃえばいいんだから。でも、そうしないのは魔力を流し続けるのが大変だからだよ」


 なるほど、つまりは、もし棒を魔法で作っちゃっえば、その作った人はカーテンがここにある限りひたすらに魔力を吸い取られ続けるということだ。


そんなこと、させられる訳がない。最終手段でも断固拒否である。


その説明を聞いたジェニーが、


「やはり、木を切るとかした方がいいのでしょうか?」


「そうだね。魔法でどこかの木、切ってくる?」


アンディ様が尋ねるので、


「え、魔法を使っていいんですか? 」


 私が問いかける。だって、さっきは大変だって。


「切るのに魔法を使うなら大丈夫だよ〜。切断するっていう動作をする時だけ魔力を使うから。 それくらいなら、僕もディちゃんもおやすい御用だよ〜」


「切るにしてもどこの木を切るんですか? この辺の木ですか?」


 ジェニーが尋ねた。確かに。この辺は緑も多いし、この小屋の周辺にも木々が沢山ある。


「そうだね。1本、切ってもいい?」


 アンディ様がわたしのほうにむかってそう言うので、私は頷く。すると、スタスタと小屋を出ていったと思ったら、少ししてからぱあああっと光がさして、その後、アンディ様はひょっこりと小屋の扉から顔を出す。


「レベッカ〜!これでいいかな?」


 ひょっこりと顔を出したアンディ様の手__正しくは手の前に浮いているのだが__はちょうど良さそうな長さで、ちょうど良さそうな太さの木があった。どうやら先程の光が魔法だったようだを


 何その早業。何その技術。驚きで口をパクパクしそうになるのを必死に抑えて、頷いた。


「は、はいっ! 」


 すると、アンディ様は先程の魔法と負けず劣らずの輝く笑顔で頷く。心做しか周りにキラキラしたエフェクトが見える気がする。


「じゃあ、これで行こうか。ついでに取り付けちゃおうか」


 そう言うとアンディ様はまた魔法をつかって、ちゃっちゃと難なく、そして、壁にぶつからないように木を小屋に運び入れ、突っ張り棒の要領で職員室と教室を隔てる所へとはめ込んだ。


「あんなに魔法をつかって大丈夫なんですか?」


先程の話から少し不安になり、尋ねると、


「ディちゃんは、というかマーク公爵家の子息2人は魔力馬鹿だからねん。 現国王の一応甥っこだし。普段はあまり魔法を使わないけれど」


とウィル先生はパチンとウインクをした。そして、あれくらいなら直ぐに魔力回復するよ、と付け加えた。なるほど。


「魔法って凄いですわね」


「そうだねぇ。でも、その分、使い方には気をつけなければいけないよ? 使い方を間違えれば危険にもなりうるから」


とウィル先生はそこまで言ってから、


「あ、そうだ! この前レベッカ嬢に水をかけたご令嬢だけれど、あの後厳重注意を受けたよ。 今は停学、謹慎になってるよ」


 ああ、あの信号令嬢か。


「そうなんですか」


「あれ? 興味無い?」


「はい。 これから会うこともなさそうですから」


「あはは、冷めてるねぇ」


 もう学園に行くことはないだろうし、私も忙しくなるはずだからきっと関わることもないだろう。というか、言われるまですっかり忘れていた。


 それから私たちはカーテンを、その木にかけてから縫い付ける。これでカーテンは完成である。


「よし、できたわ!」


 カーテンが出来上がったことで全ての準備は整った。小屋はすっかり学校へと変貌した。


 準備は万端!!

あとは、開校を待つのみ!!

遅くなってごめんなさい。カーテンの棒が難産でした。どうしようかめっちゃ困りました苦笑

そして、開校は次回の更新になりました…!思ったよりカーテンの話が長かった苦笑


次回の話は……かみんぐ すーん です……。

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