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4話★今後の話

マーク家へと私とリリとアンナは招待された。促されるまま、3人で屋敷へと踏み入れる。


マーク家の屋敷は落ち着いた色合いで調度品もセンスがあり、品のいい感じであった。


派手過ぎす地味過ぎない。あからさまに豪華ではないが、よく見ればいい品々が並んでいる。


それはさながら、マーク公爵の人となりを表しているんだろうなぁと感じた。


案内されたのは広間のような所だった。夫人とアンドレア様は自室に戻るらしく、広間に来たのはマーク公爵とアンディ様、そして私達3人である。


広間には、赤い絨毯が引かれ、その上にソファが机を囲むように並んでいて、私はそのひとつへ案内された。


私が座ると、マーク公爵とアンディ様はその前のソファへと腰掛ける。リリとアンナは私の後ろにそっと控えてくれた。


私達が座ったのを察したのかどこからともなくメイドさんが現れ、紅茶とクッキーを私達の前に出す。


カップは白地に花と蔦が描かれた陶器のもの。クッキーはアイスボックスクッキーのような感じで、カップとセットであろう小さめの皿に乗せられている。


美味しそう……。


「さて、レベッカさん」


紅茶とクッキーに目を奪われていると、公爵から声が掛かり、その声にはっと我に返った。


視線をそちらに向けると、優しげだが、少し苦笑いをした公爵の姿。その隣では、アンディ様が笑いを堪えるように口元に手を当てている。


……絶対、公爵令嬢ともあろうものがクッキーや紅茶に釘付けだなんて。大事な話の前なのに……って思われた……!


そんな目をしてるもの、公爵もアンディ様も。


ちょっと恥ずかしい……。


前世の記憶を取り戻してから、何かと前世の記憶に引っ張られがちになってしまうのよねぇ。


……あ!言い訳しておくけれど、私の前世が食い意地の張った女の子だったって訳じゃないからね!?普通の食欲だから!


それから、王太子妃しての責務から解放されて気が抜けたってのもあるかもしれないわね。


「レベッカさんはお菓子が好きかい?食べてくれていいんだよ」


公爵が苦笑いのままそう切り出す。でも、浮かべている表情はどこか生暖く、優しげだ。ちょっとばつが悪い。


……こういう時は話を変えるに限るわね。


「え、ええ、好きです。ありがとうございます。……それで、お話と言うのは……?」


私がそう言うと、アンディ様が思わずといった感じで吹き出す。生暖かい目をした公爵は、思わず吹き出してしまったアンディ様を見たあと、私の方へと視線を向けた。


えーえー、分かってますとも。話を変えたのが少々強引すぎることは。そして、ちゃっかりお菓子を食べる許可を貰ったことくらい。


私が我関せずといったていで何も言わずにいると、何か言いたげだった公爵は、コホンっと1つ咳払いをした後、話し始める。


作戦は成功だ。アンディ様はまだ笑っているけれど。


「まず、君は表向き、留学という形になっている」


「そうですか」


なるほど、留学か。考えたものだわ。

きっと苦肉の策ね。


流石に、次期王太子妃を国外追放するとなるとそれ相当の理由がいるだろう。それこそ取り返しのつかない犯罪とか。でも、私にそんな事実はないから、表向きは留学ってわけね。


随分長期な留学をするのねぇ、私は。そんなに何を勉強するのかしら。


などと皮肉めいたことを心の中で独りごちてみる。


……ああ、でも、大罪人にされなくてよかったわ。貴族達だったら事件をでっち上げるくらいはするかもと思っていたけれど、流石にそれは出来なかったようね。


他国への体裁を考えただけかもしれないけれど。流石に次期王太子妃が大事件を起こして国外追放ってちょっと体裁悪いでしょう。面目丸つぶれよねぇ。


貴族達もそこはちゃんと分かってるのねぇ。その頭、別のことに使う事をおすすめするわ。


そんなことを思いつつも、私は出された紅茶を頂く。許可を貰ったのだもの、遠慮なく頂くわ。


あ、美味しい。


それを見たアンディ様はまた笑っている。案外笑い上戸なのね、アンディ様は。


「あれ、驚かないんだね?」


そんな私とアンディ様を知ってか知らずか、公爵が言う。私が驚く様子もなく、狼狽える様子もなく、ただ、「そうですか」と答えたことに、驚いたらしい。


私はカップをソーサーに戻し、答える。


「ええ、他国への面目を考えればそれが妥当だと思います。どこの王国だって、汚点を外の国に見せたくはないですから」


私が汚点と見なされているのは心外だけれど。


私の言葉を聞いて、後ろのリリとアンナも握った拳をわなわな震わせているのが見えた。きっと、ここじゃなかったら盛大に叫んでいるだろう。代わりに怒ってくれてありがとう……。


私の言葉に公爵は、驚いたように目を少し見開いて、


「……聞いていた通り、君は聡明なんだね」


ええ、王太子妃になるべく色々勉強しましたから。ただのわがまま世間知らずな令嬢じゃなくってよ。


まあ、その聡明さ、今となっちゃ不要の産物なのだけれどね。でも、公爵に認められたのならまだよかったかな。


「お褒めに預かり光栄です」


「それと、周りの人に愛されているんだね」


公爵がリリとアンナの方を見てからそう言った。


「ありがとうございます」


リリもアンナも私のために怒ってくれているのだものね。


「あ、君の住むところなんだが、私の領地に空いている家があってね。家も住んでもらわなければ朽ちてしまう。それで、そこに住んでもらえないかなと思っているんだ」


公爵は、少し不便な所にあるのだけれど……と遠慮がちに言った。


え、家まで用意してくれるの。ありがたい。家がないことも考えていたから、少し不便だろうが関係ない。


「いいんですか!ありがとうございます」


危ない、危ない。思わず立ち上がって公爵の手を取りかけた。勿論そんなことはしないけれど。寸でのところで留まりました。


公爵は優しく笑い、


「こちらこそ、家の使い手が出来て嬉しいんだ。案内はアンディにさせるから、安心するといい」


「僕に任せて!」


アンディ様はそう、拳で胸を叩いて言った。



★★


それから、公爵に挨拶をし、アンディ様と共にその家へと向かう。勿論リリもアンナも一緒だ。


公爵家を出ると馬車が用意されていた。どうやらこれで行くらしい。


馬車で向かうってことはそれなりに距離があるのかしら、なんて思いながら用意された馬車へと乗り込む。


私が馬車に乗ろうとすると、アンディ様はサラッと手を取りエスコートしてくれた。わあ、イケメン。こういうことサラッとこなす人は素敵だと思うよ、うん。


……令嬢はイケメンなんて言葉、絶対使わないだろうなぁ。多分前世の私だわ。


あ!それと!私の名誉のために言っておきますが、出されたクッキーと紅茶はちゃんと頂きましたよ。残さず食べるがモットーですから!


…これもきっと前世の私だわ。


まあ、でも、これも全部含めてレベッカなんですものね。


今度あのクッキーの作り方を教えてもらおうかな………上手に出来るかどうかは別として。


まあ、上手に出来なかったらリリやアンナに手伝って貰えばなんとか!!…多分。


あ、令嬢が料理するのは、ご法度……だったり、しないよね……?前世の記憶を取り戻す前は料理なんてしたこと無かったけれど……。


なんて思いながら馬車に揺られていると、


「レベッカさん、そろそろ着くよ」


とアンディ様が指をさす。私はその声に馬車の窓から指された方向をみた。


ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします。



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