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52話★授業

休み時間が終わったのでアンドレア様はこれから授業とのことで教室に戻っていった為、アンディ様とウィル先生、リリと私の4人は、今こっそりと教室を覗いていた。


というのも、あまり目立った行動をすると授業の邪魔になってしまうと思ったからだ。一応、学園長にもこの数学の先生にも事前に許可を貰っているから別に入っても構わないのだけれども。


授業見学の際、先生に挨拶をして許可を取るのは見る側としては最低限のマナーだ。学校へインターンシップに行った時と教育実習の時と先生方の授業を見学することは多かったが、必ず挨拶に行くように言われたのを思い出す。


教育実習の時、見学したい先生が中々捕まらなくて挨拶の為に校舎を何周もしたなぁ。あと、職員室を何度も覗きに行った。大変だったなぁ。今ではいい思い出だけれど。


コソコソっと見る姿は傍から見ればきっと不審者であるが、今は授業中なので廊下に人影がない為にそれを指摘する人は生憎といない。


教室の中の風景は、いわゆるThe・学校!であった。もうちょっと言い方なかったのかと思うだろうが、それくらいしか思い浮かばないのでそうとしか言えない。


机が6×6並べられ、先生がその机達の正面にある黒板の前に立っている。教室内に先生は1人で、女性の先生だ。紺色の落ち着いたワンピースを着こなし、長い髪を後ろに縛っている。生徒はそれぞれ机に向かい、黒板に書かれたことをノートに写していた。


今の授業は、前世で言う数学であった。CとかPとか出てきているから多分場合の数。懐かしすぎる。だが、前世では、数学は苦手だった。教員採用試験の為に数学チックなことを再度勉強したけれどそれですら苦戦していた……。


ちなみにこの学園のことを少しだけ補足すると、入学は12歳。12歳から3年間の初等コースと、15才から5年間の高等コースがある。前世の学校制度の中高のようなものだ。1年だけ長いけれど。


そして、今見学しているこのクラスは前世で言うところの高校1年なのだろう。


数学に遠い目をしながらも、先生の一挙一動を見逃さないようにはする。先生はサラサラと美しい字を黒板に……あれ?書いてない……!?のに、文字が浮かび上がっている!?


この言い方は、少し語弊があるね。正しく言うと、チョークが勝手に動いて黒板に文字を書いている!?である。


そう、先生はチョークを持たず、ただ授業内容を話しているだけだ。


「こちらは順列と呼ばれますわ。記号は、Pを使いますの。ものや人を順番に並べる時に使いますわ。例えば、ABCの3人を並べる時にABCとBACを違うものとして捉え………」


先生が言ったことが、チョークが勝手に動き、言う傍から綺麗にまとめられて、黒板に書き示される。きっと黒板に文字を書くのに魔法を使っているのだろうと思う。


ファンタジーだ……。


でも、生徒は魔法でノートをとる事はしていなかった。自分で板書を書き写したりメモを取ったりしている。


これに少し安心したのは秘密である。だって、教会の学校を見学した時は、全然魔法なんて使っていなかったし。衝撃が大きすぎて……。


これがこの世界では普通なのだろうか。そして、あれはどんな仕組みになっているんだろうか。


そう思い、ウィル先生を見やると、


「あ、レベッカ嬢には珍しいか!こちらの国の授業では先生が魔法を使うことはよくあるんだよー」


と小さな声でこっそり教えてくれた。それから、続けて説明をしてくれる。


「あれは、転写魔法っていう魔法の応用だよ。転写魔法っていうのは、本来、同じものを作り出す魔法なんだ。例えば、ここに書類があって全く同じものを作り出したいとする。その時に使うんだ。この板書は、思ったことを転写する方向で使っている。属性としては風の魔法だね。風は、何も無いところから動きを作り出すことができるから、それを応用しているんだ」


応用の応用……。

魔法を使う国の教師って凄いんだね……。


「これは難しい魔法なんですか?」


「まあ、難しい分類に入るかなー。転写魔法は割と簡単に使えるんだけれど、心の中を転写するのはそれより難易度が上がるからね」


そう言ってから、一旦言葉を切った後ウィル先生は、少し誇らしげな顔をして、


「僕も使えるんだけれどねん!何たって僕は風魔法の優秀な使い手だからね!」


「……さいですか」


「あ!信じてないでしょう!本当に本当になんだから!!」


少しむくれたように言うウィル先生は、とりあえず無視をして、


「え、酷い!」


見学に戻る。


もうひとつ思ったことは、優雅だなーであった。貴族の学園だからなのか、先生の言葉も態度もどこかお嬢様っぽい。騒ぎ始める生徒も居ないし、静かなものだ。それから、授業内容は前世とあまり変わらない。


淡々と先生が話し、それを生徒が聞いているという授業形態だった。だが、先生の声はとても聞きやすい。溌剌と話していて、眠くなりにくいのだ。メリハリがあると言った方がいいだろうか。


貴族の学園に授業中爆睡するようなご令嬢やご子息はいないと思うけれど……多分。



★★


数学の授業を見学した後は魔法訓練場へ向かった。そこでは、どうやら今、魔法の授業が行われているらしい。私の教える学校は多分魔法を教えることはなさそうだから、別に見学しなくてもいいと思われるかもしれないが、これは純粋な興味である。


だって、ここならではの授業だよ?

魔法だよ?

ファンタジーだよ?


という100パーセント自分の好奇心の為の見学である。


私達が魔法訓練場につくと、もう授業は始まっていた。


ウィル先生曰く、魔法訓練場は屋外と屋内と2つあるらしいのだが、今日の授業では屋外の訓練場が使われている。よくある、アニメの部活とか見学をするシーンで見かけるような網目のあるフェンスでぐるりと囲まれており、そこは、前世で言うところの校庭のように見える。地面は芝生になっており、転んだりしても痛くなさそうだ。


前世の校庭と違うところは、というと、中に的が用意されていることだ。ここに魔法を当てるのだと思う。大きいものから小さいものまで用意されている。


そして、ウィル先生が説明してくれたことだがこのフェンスに沿って、生徒の魔法が漏れでないように防御の魔法がかけられているそうだ。こちらは土の魔法の応用だそうだ。触ってみても特に何も感じないので、本当の土で出来ているわけではないらしい。


この時間のクラスは、アンドレア様のようでクラスの集団の中には彼も見えた。


先生が一人一人の名前を呼び始める。どうやら的に向かって魔法を出すようだ。トップバッターからアンドレア様のようで、先生はアンドレア様の名前を呼ぶ。


「……はい」


アンドレア様は返事をして、前に出る。さあ、魔法だ!!とワクワク見ていたが、アンドレア様は中々動こうとしない。あれ?直ぐに的に当てるのかと思っていたのに……。


と思った次の瞬間、魔法を使ったのはアンドレア様ではなく、その少し前にいた先生の方だった。


先生が、杖を取り出しなにやら唱えると、青色のものが現れる。その青色のものはぐんぐんと太く大きく成長していき、バスケットボール程の大きさになった。先生はその青色のものを地面に落とす。


え、バスケットボールでも始めるの?!と場違いのことを思ったが、その落ちたものは、また、ぐんぐんと成長を続けて大きな人型をとった。大きさにして、3メートルほど。


え、なにあれ!?


その青色の人型に釘付けになっていると、横からアンディ様が囁いてくれた。


「あれは水の魔法を使った人型だよ。水はどんな形にもなれる性質を持っているから、ああやって仮想の敵を作ることもできるんだ。あれに向かって魔法を練習するんだよ」


「え、あれに向かってですか!?」


私は、今度はふわりと浮かび上がり、動き始めた水人形を見ながら言った。


「うん。先生も生徒の魔力の量によって加減をしてくれているから、あれに向かって魔法をあてて、先生の魔法が消えたら終わり」


え、じゃあ……あれは?あの校庭の片すみに鎮座しているあの的達は?


「的は使わないんですか?」


「あれは、初等で使うんだよん。まだ魔法に慣れていない子も多いからいきなりあれはキツイでしょう?だから、最初の頃は的に向かって魔法を打つんだよんー」


私の問いに答えてくれたのはウィル先生だった。アンドレア様は、今年19歳で高等5年生。つまり、最高学年にあたる。元の魔力は決まっているが、使いこなすという面では完璧に近いはずだ。


アンドレア様は、ざっと足音を立てて水人形の前に立つ。その姿からは凛とした雰囲気を感じることができて、それを見たクラスの女子であろう子達がきゃーっと黄色い悲鳴を上げた。ここにいる女の子たちは、淑女教育のなされた貴族令嬢だから、そこまで大きな声では叫んで居ないけれど……。


当のアンドレア様は特に気にしない様子で……というかきっと、水人形しか見ていない様子で視線を動かさない。静かに水人形を見つめている。


「始め!」


先生がそう叫ぶと、水人形はくるりと動き始め一気にアンドレア様との間合いを詰めた。


「………ッ!」


思わず息を呑む。


魔法のシーンは書いててたのしいですね!

ファンタジーの分類にしていたくせに、あまり魔法を使わせていなかったから←


✤次回予告的な何か✤

次回も引き続き魔法の授業見学です…!


【次回の更新は、4月23日予定!】



80人を超える方々にブックマークをしていただけていること、毎日たくさんの方々にお読みいただけていること、評価をして下さる方々がいること、嬉しく思います( *¯ ꒳ ¯*) ほんとうにありがとうございます!

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