50話★魔法と分類法
50話です!!!
わぁ、もうそんなになったんですねー!!
それから学校である小屋に戻ると、もう中に本が運びこまれていた。生徒の机に本が積み上がるようにして並べられている。
この世界の本は、一様に、ハードカバーで 、よくある本は前世のだいたい雑誌くらいの大きさなので、机の幅を結構取っていた。
この世界の本で1番小さいのは、普通のハードカバーくらいの大きさだ。
文庫本などのサイズの本はまだこの世界では見たことがないから、多分全ての本がこのサイズなのだろうと思う。
厚さとしては、初級のものと思われる本は絵本程の薄さで、上級の方になっていくにつれて厚くなっていく。ここにはないけれど、私がこの世界で見た本の中で1番大きいのは広辞苑くらいの太さだった気がする。内容は、あまり覚えてないけれど、多分歴史や戦関係の本だったと思う。
「あ、レベッカ、おかえり」
私達が帰ってきたことに気づいたらしいアンディ様が作業する手を止めて、にっこりと笑ってくれる。青く透き通った瞳が優しく細められ、少し首を傾けた拍子に栗色の髪がふわりと動いた。純度100パーセントの美青年だね、うん。
「ただいま戻りましたわ」
「本、棚のどこに入れるかわからなかったから、今、とりあえず机の上に並べているよ」
「ありがとうございます!私が持ってきた本もそちらに運びますわね」
そうアンディ様に断って、1度馬車に戻るために歩き出す。すると、すっと横に並ぶアンディ様。
「僕も手伝うよ」
ふわりと笑って一緒に歩いてくれる。言動がイケメンです。あんたは、漫画のキャラですか。……あ、一応ゲームのキャラか……?
そんなことを思いながら、アンディ様とリリと馬車までの道を歩き、計40冊の本を前に、とりあえず3冊ずつ持っていこうと持ちかけると、アンディ様は小さく首を振り、「見てて?」と言った。
それから、手をそっと上に向け、前に出す。すると、その手からふわりと小さなつむじ風のような渦が現れた。
魔法である。
その姿に釘付けになっていると、アンディ様は、その風にふっと優しく息を吹きかける。すると、風の渦はふわりと手から下に舞い降り、緑色の光を纏った。そして、掌の大きさくらいだった渦は少し大きくなり、そのまま本を包み込んだ。
本がふわりと浮いて、持ち上がる。そのまま、ふわふわと風に漂うように本が小屋へと動き出す。
「すごい!すごいっ!」
きゃあああぁぁ!と叫び声を上げるのは我慢したが、思わず素で喜んでしまった。ハッと我に返り、アンディ様の方を見ると、アンディ様は優しげな眼差しのまま、
「ありがとう」
と言ってくれた。アンディ様もリリも、どこか、「仕方ないな」みたいな表情を浮かべていて、ちょっと恥ずかしかったので、小さく咳払いをしておいた。
生暖かい目はやめてくれたまえ。
本はそのまま、ふわふわと小屋の方へと向かっているので、私達もそれに続いて歩く。本が先生役での遠足のような感じである。
ふわりふわりと花びらが飛んでいくように動く本。その、ふよふよと動く本にどこか可愛さを感じる。めっちゃ可愛くない?!生き物みたいじゃない!?
そう思うのは私だけだろうか。
小屋にたどり着くと、本はふわりと机に羽根が舞い降りるが如く、本の重さを全く感じさせずに下ろされる。
おお、カッコイイ。
この世界では、魔法をこんな感じで使うんだなぁ。
魔法といえば杖とかこの世界では使わないのかな?前世では、魔法といえば杖なんだけど……。
私がそう思い、
「杖とかって使わないんですか?」
「杖……?ああ、魔法の杖か!」
アンディ様は理解したように頷き、それから、説明をしてくれた。
「魔法の杖はあるのはあるけど、必ずしも使う物じゃないんだ。魔法っていうのは、本来、自分の中にある魔力を身体を通して外に出すことによって使うから、魔法の杖の力を借りなくても魔法は使うことができる」
「そうなんですか!?では、魔法のはどのように使うんですか?」
「魔法の杖は、体内にある魔力を外に出しやすくしたり、標準を定めたり、または魔力を安定させる為に使うんだ。いわば補助具の役割をしているんだ。魔力が安定するまで、つまりは、幼い頃や、ふだん使わないような莫大な量の魔力を使う時には魔法の杖を使うけれど、普段使う時はなしでも大丈夫だよ」
そうなんだ……。
魔法の杖って補助具なんだ……。
「魔法の杖以外にも指輪やネックレスなどを使う時もあるよ。……あ、そうだ」
アンディ様は気がついたように声を上げ、それから、「ちょっと待ってて」と断ってからアンディ様はスタスタと歩いて、本がたくさん置かれている所から少し離れた机に向かう。そこにも3冊の本が置いてあった。アンディ様はその数冊の本を抱えると、またこちらへ戻ってきた。そして、こちらにすっと見せるように差し出した。
「これ、さっき言っていた、歴史と神話。それから、これは、魔法についての本。借りたいって言っていたから」
「わあ!ありがとうございます!!」
「じゃあ、馬車に乗せておくよ」
アンディ様はまた、掌を上に向け、サッと風の渦を巻き起こすと、また、魔法の渦は本を包んでふわりと浮き上がり、小屋の外へと出ていった。
それを見送っていると、
「あのぅ……いい雰囲気のところ大変申し訳ないんですけれど……」
横から声が聞こえた。声の主を見ると、そこには、眉を下げたジェニーがいた。隣には、ウィル先生もいる。
「あ、ジェニー!どうしたの?」
私が言葉を返すと、ジェニーは、ほっとしたような顔をして、
「本、どのように並べますか?」
そうだわ、本の並べ方、考えなきゃ。
本……確か分類法があったわよね……?一応分類は知っているけれど、詳しいことはあまり知らない。
前世、大学生だった頃、学校司書の資格を取りたくて、授業を取ろうとしたのだけれど、学校司書の資格授業は4年生になってからで、当時3年生だった私は取れなかったのだ。そして、そのまま私は死んでしまったので、結局授業を取れず終いだった。受けたかったな……授業……。
それは、ともかくとして、確か本の分類は、
0 総記。
図書館のことについての本や、百科事典、マガジン、新聞、百科事典などの本が集まっている。
1 哲学・宗教。
哲学の本や心理学の本、そして宗教がここに集まる。
2 歴史。
歴史の本が集まる。伝記や地理もここに置かれる。
3 社会。
政治、法律、経済、統計、教育など社会関係の本がここだ。
4 自然科学。
理科や数学などかここにあたる。生物、地学などの本がここに置かれる。
5 技術。
その名の通り技術等の本が集まる。建築や電気工業、機械工業などもここである。
6 産業。
農業や林業や畜産業、水産業、商業などのビジネス関係の本だ。交通や園芸などもここにあたる。
7 芸術。
絵画や彫刻、音楽、舞踊演劇などである。
8 言語全般。
その名の通り、言葉を扱う分類である。
9 文学。
物語が集まる。
さらに分類をしようとすれば、総記の0は、010図書館などのようにさらに細かくすることも出来る。ここではしないけれど。
説明しながら紙に分類法を書き記すと、
「よく知ってるね、レベッカ嬢」
とウィル先生に驚かれた。どうやらこの世界でも日本式の日本十進分類法が使われているらしい。
ちなみに、この日本式の分類法は、初めて作られたデューイ十進分類法やほかの分類法を少しずつ取ってきた分類法になっている。
ジェニーには珍しいようで、大きな瞳をキラキラさせて分類法の書かれた紙を見ている。
これの通りに並べたら大丈夫かな。
……でも、ちょっと待ってよ?
この世界には魔法もあるよね?
魔法に関する本はどの分類なのだろうか?
「魔法に関する本はどちらに分類されるのですか?」
「それは、神話関係ならば1、魔法本体については4の自然科学に分類されているよ。これは、きっとスミス王国とは違うよね?こちらでは、この分類が少し他の国と違うから、ケイラー十進分類法と呼ばれているよ」
私の問に、ウィル先生が答えてくれる。国の名前ついてるんだ……。
というか、魔法はこの国では自然科学なのね。科学とファンタジーという全く似てなさそうなものが同じ分類……。
「そうなんですね。……今回集めた本は、全ての分類分はありませんが、無いものは飛ばして、これの通りに並べて入れますか?」
私が尋ねると、みんながこくりと頷いたので、その方向でいくことになった。
✤次回予告的な何か✤
次回の舞台は1週間後!ついに王立サンフラワー学園(貴族の学園)の見学に参ります!!
【次回の更新は、4月21日予定!】
あ、杖については、前の『レベッカの授業ノート 魔法編』にも加えておきます!!
私の作品を読んでくれてありがとうございます!




