48話★午後の話し合い
ううー!お腹いっぱいだわ!
思わず伸びをしたくなってしまう。流石にみんながいる前ではできないけれども。
令嬢のイメージよ、うん。……もう意味ないからとか言わないでくださいよ。
何はともあれ、昼食を食べて元気を沢山貰ったから、午後からも頑張れそうである。
午後からは、まず、学級文庫の本を持ってくることをする。それから、それが終われば、カーテン作りの続きを少し、出来るところまでしていくことになっている。
昼食を片付けた後、テーブルについたまま、この後のことを話し合う。
「行き先は、ディちゃんの家、レベッカ嬢の家だよね?本を運ぶなら、人数が多い方がいいかなぁ?それとも、分散して分けた方がいいかなぁ?」
ウィル先生がそう尋ねた。
「そうですわね……私は分けた方がいいと思いますわ。先に持ってくるものの分類を決めてからになりますけれど」
私が言うと、ジェニーは頷く。
「そうですね、たくさんの種類の本があった方がいいなら、被らないようにした方がいいかもしれませんから」
「ええ、幸いここには、ふたつの家の所蔵に詳しい人がいますから、こういった本を持ってくると先に分けておいたらいいかなって思ったの」
「そうだね。では、そうする?」
アンディ様がまとめるように尋ねる。その言葉に、私、ジェニー、ウィル先生が頷いたので、その方向でいくことになった。
「グループ分けをしなければいけないですわね。私と共に行くグループと、アンディ様と共に行くグループに分けるという感じでしょうか」
「僕のチームには少し人数が欲しいな。父上の書棚……というよりは、図書室になるのかな……は本当にたくさんの本があるんだ。だから、人数がたくさんいてくれた方がありがたいんだ」
なるほど……。マーク公爵家の図書室かぁ~。
マーク公爵は、本がとても好きで、色々なジャンルを集めていると聞いたが、どのくらいあるのだろう。趣味だと豪語……かとうかはわからないが、言っているのであれば相当数あるのではないだろうか。
それなら考えてグループ配分をしないと行けないわね。
幸いといってはなんだけれど、私のところにはそれほど本はない。実家に帰ればそこそこあるのだけれど、それは無理な話なのでカウントしないとして、せいぜい持ってきたのはうちの家の本のほんの一部だけだ。それも、私が持っていたものの中で、だ。
学校を開くなんて思っていなかったから、自分の本の中でどうしても持っていきたいものだけを厳選して持ってきたのだ。
「5人ですから、2人と3人に分ける……くらいしかできませんが、では、3人の方をアンディ様のグループに致しましょう」
「そうだね!レベッカ嬢のところは、リリちゃんとレベッカ嬢で、ディちゃんの家はディちゃんとジェニーちゃんと僕って所かな?」
ウィル先生が小さく首をかたむけて、尋ねる。ふわりと笑う笑顔も様になっていて、美青年だな、と改めて納得する。
「そうですね!それが良いと思いますわ」
「では、持ってくる本の分類を考えますか?」
ジェニーの問いかけに頷き、持ってくる本の選定へと移る。先に決めておかないと、内容が偏ったり、足りないものや必要なものが分からなくなる可能性があるからだ。
「私の家は、主に私の趣味でアッカリー家から持ってきたものしかありませんわ。文学や礼儀作法、マナー。それから、教育関係の本が多いですわ」
歴史に関する本などはアッカリー家に置いてきた。おもにスミス王国に関するものだし、もう帰るつもりも、帰る目処もない国の歴史の本を持ってきたとしても不要だからだ。
そのかわり、こちらでも必要になるだろうし、万国共通だろうからと礼儀作法やマナーの本は持ってきている。
あと、文学と教育関係の本は完全に私の趣味だ。
文学は、前世でのアニメや漫画、ゲームの代わりの娯楽として持ってきた。前世のように学園モノのキュンキュン恋愛とかそういう少女漫画的なお話やラノベ的なお話がないのが少々残念だが、こちらの文学もとても面白い。
ファンタジー__まあ、私にとっては、この、ケイラー王国にのみ存在する魔法は充分、現実世界においてのファンタジーなんだけれど。現実世界って言葉とファンタジーって言葉が一緒に並ぶなんて思ってもみなかったよ__や、冒険物なんかもある。
まあ、今この、学校づくりが忙しい状況でさすがに娯楽を楽しむような時間の余裕はないけれど。
そして、教育関係の本は、前世の記憶を思い出す前は興味がなかったから読まなかったけれど、せっかく記憶を思い出したのだから、こっちの教育についても知りたいという願望から持ってきた。
私が家にありそうな本を列挙すると、アンディ様は少し首をかたむけて、悩むような素振りを見せたあと、
「こちらからは、この国の歴史に関する本や、神様の話などを持ってきたらいいのかな。あとは、哲学や思想なんかも必要かな?」
「そうですわね。私はこちらの歴史についての本は持っていませんから。それに、神様についても最近知ったばかりですし。出来ることなら私自身がお借りしたいくらいですわ」
「貸そうか?父上の本だけじゃなくて、僕も手持ちがあるし……」
「え!?いいんですか!?」
「うん、もちろん。知っておいた方がいいこともたくさんあるだろうし。いくつか選んで持ってくるよ」
「ありがとうございます!」
やったね!
スミス王国の歴史については王妃教育で叩き込まれたけれど、他の国の歴史はそう詳しくはない。あらすじを知っているくらいだ。それに、こちらからの見方とあちらからの見方では視点が違うため、両方の内容を見れるのはありがたい。
ひとつの情報源に固執すると、偏った情報が集まったり、間違った情報が集まったりするものた。出来うる限りたくさんの情報源から信用できそうなものだけを、他の資料と見比べることによって完全とは言わないが、ある程度信憑性の高い情報が集まる。
それに、ワクワクする。
だって、ここは、ファンタジーの世界ですもの。今まで物語の中でしか読んだことのないような話を歴史として学べるなんて素敵に決まっている。
「本の種類は、文学、哲学、神話、歴史などになるのかな?」
ウィル先生が尋ねる。
「そうですね」
そう思った時、ジェニーが申し訳なさそうに手を挙げた。その姿に、皆がジェニーの方を向く。
どうしたのかな?と思い、言葉を待っていると、ジェニーは言いづらそうに、少し視線をさ迷わせたあと、俯き加減に口を開いた。
「大方決まっているのに、ごめんなさい……。あの……アンディ様やレベッカ様が仰っているのは、大人向けの本ですよね……?もしかすると、文字を習いたての子には難しすぎるかもしれません」
ああ!そうだ!難易度忘れてた!!!
ジェニーの言葉にハッとさせられる。
私達が想定している本は、私たちの家にあるもの、 マーク公爵にあるもので集めようとしている。それは、基準が、私達であるということだ。私達はもう文字を学んでいるから、普通に読めるかもしれないが、文字を習いたての子供には内容も相まって難しすぎる。
周りを見回すと、アンディ様もウィル先生も、リリも「それは考えてなかった……」と顔に書いてあるのが見える……気がする。
これじゃあ、今まで決めてきたもの、決め直しだぁぁぁ!!
✤次回予告的な✤
話し合いは始まったものの、難易度を考えていなかったという事実に気づいた5人。打ち合わせやり直しです……。
ちゃんと話し合いはまとまるのか……。
【次回の更新は、4月19日予定!】
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