45話★お昼ご飯
アンディ様からの鶴の一声いや、神の一声により、お昼ごはんとなった。私だけいっぱい失敗するし、ヘマするから精神ちょっときてたので、このタイミングでのお昼ご飯は本当に嬉しい。
でも、そう言えばどうやってお昼ごはん食べるの?
そう思っていると、アンディ様がパンパンと手を叩く。すると、あら不思議、何も無かった外の空間に椅子と机がやってくるではありませんか。
……ちなみにこれは、この世界にある魔法ではなく、人力だ。アンディ様が手を叩くとどこからか従者らしき人がやってきて、ちゃちゃっとテーブルと椅子を用意してくれたのだ。え、なんで?
不思議そうな目で見ていたであろう私に、アンディ様はにっこりと笑って、
「お父様がお昼ご飯になったら、呼びなさいって言われてたんだ」
なるほど、マーク公爵が……。色々わからないけれど、まあ、深くは考えないことにしようと思う。とりあえず、マーク公爵は偉大らしい、とだけ納得しておく。
何はともあれ、アンディ様が用意してくれたテーブルと椅子に5人で座る。リリは一緒に座るなんて恐れ多いですー!!とブンブン首を横に振っていたが、リリは今日の功労者の1人だからってことで座ってもらった。
ちなみに、お昼ご飯は、それぞれが色々持参している。お弁当のような感じだ。そして、みんなで分け合おうという話になっている。
遠足みたいで少しはしゃいだのは私だけの秘密……いや、作ってくれたアンナとリリは知っているから3人だけの秘密である。
ちなみに、私は食べやすいようにサンドウィッチを持ってきた。もちろん、具はたくさんの種類を入れてきた。野菜もお肉もたくさんだ。私も手伝ったから大体の具の種類はわかる。
ちなみに、味付けはアンナにしてもらった。というのも、私、お料理の味付けは苦手なのだ。お菓子は分量通りにしたら美味しいのに、何故かお料理の味付けはその通りにしても美味しくならなくて……。
そして、前世でもこれはよくあった。お母さんに言わせれば、「なんとなくよ。足りないものを足すのよ」とのことだった。なんとなく?足りないもの?わかるかーーっ!ってよく思ってた……。
お母さん、元気かな……。私は今世でもお裁縫とお料理に嫌われているらしいです。トホホ。
それから、アンディ様は、四角い箱のようなお皿におかずがたくさん入っていた。
わ、まじでお弁当だ、と思った。この世界、ヨーロッパを元にしているっぽいけれど、お弁当文化は存在するみたいね。所々日本を感じるわ。
ジェニーは恥ずかしそうにお菓子を出していた。なんでも手作りだとか。絶対美味しい。自信ある。だって、見た目からして美味しそう。
ウィル先生は、紅茶を用意してくれていたらしい。ルキア公爵領では紅茶の茶葉が有名らしく、今年採れたらしい紅茶を持ってきてくれていた。
そんな様々な料理を囲んで外でのピクニックタイムが始まった。
私は、意気揚々とサンドウィッチを手にし、もぐもぐと食べ始める。さすがにガブリとはいかないけれど……。あ、美味しい。
サンドウィッチを堪能していると、
「レベッカ嬢」
と呼びかけられた。声の主は、ウィル先生だ。私は、口に入っていたサンドウィッチを飲み込むと、ウィル先生の方を向く。
「はい」
「実はね、王立サンフラワー学園の見学許可が出たよ」
ウィル先生が言う。王立サンフラワー学園は、この国唯一であり、貴族達が通う学校だ。そして、国王陛下から私たちの学校作りの許可がおり、正式なマーク公爵領の事業となったので、サンフラワー学園への見学を掛け合ってもらっていたのだ。
「本当ですかっ!!」
思わず声を上げると、ウィル先生は、うん、と頷いてくれた。
やったーー!!!本物の学園見学だぁ!!!
「学園ってどんなことをしているんですか?」
ジェニーが尋ねる。
たしか、私も学園について聞いた時、アンディ様に尋ねて、教えてもらったのよね。
教えてくれた情報によると、貴族としての礼儀やマナーはもちろん、読み書きや普通の授業、それから、魔法を教えてくれるのよね。
私がそう言う様なことを言うと、ウィル先生はうんうん、と頷いてくれた。
私の国にも学園はあったし、多分授業内容も似たようなものだろうけれど、この魔法があるって言うのが私の国とは違うところだと思う。
魔法か……確か魔法といえば……
「魔法ってあれですわよね、紅茶を温める……」
アンディ様がいつかやってくれたことを思い出して言う。あれ、すごく便利な魔法だと思うわ。
そう思いながらアンディ様を見ると、微妙そうな顔をした。
「……レベッカ。……僕の魔法は水を温めるだけだと思ってる?」
その微妙そうな顔のままアンディ様が尋ねる。
「はい」
え、違うの?
私が頷いてみせると、ウィル先生が耐えきれないというように吹き出す。
え、なんで笑われてるの!?
唖然としていると、アンディ様が何とも言えない顔をして、
「あのねぇ、レベッカ……いくら僕の魔力が少ないとしてもそんなに弱くはないよ」
と言ったのだった。
「まあ、レベッカ嬢は隣国の出身だから知らなくても無理ないね。じゃあ、ちょっとウィル先生から魔法についての授業を始めちゃおっかなぁー」
ウィル先生がのほほんとした顔で笑いながら言う。おおお!知りたい!ぜひ!!
「よろしくお願いします!」
「おーけーおーけ!そうだなぁ。魔法について語るなら、まずは、この国の成り立ちから話さないといけないねぇ」
そこから、ウィル先生が語ったのは、こんな話だった。
まず、ケイラー王国の成り立ちだ。
初め何も無かったこの国の元となる場所に、自然神が降り立った。それが、ケイラー王国で祀られている自然神、太陽の神、海の神、 空の神、植物の神だそうだ。
彼らは大地を作り、海を作り、緑を生やし、そして、この国最初のヒトを作った。それが、初めの王だという。
そして、自然神は、その最初のヒトである王に、ひとつ贈り物をした。それが、魔法だ。
太陽の神からは火の魔法を。
海の神からは水の魔法を。
空の神からは風の魔法を。
植物の神からは土の魔法を。
それぞれから賜ったのだという。
それゆえ、ケイラー王家の血筋の者は代々魔法を受け継ぐ。
いちばん強い魔法の力、つまり、魔力を持つのは、国王陛下であり、その魔法は不思議と継承権第一位の王子へと最も強く受け継がれる。そして、王家の血筋が薄くなると魔力も弱くなる。
アンディ様は国王陛下の異母妹の息子、つまり甥であるからそこそこの魔力を持っているのだそうだ。
紅茶温めるだけなんて言ってごめんなさい……。
それから、魔法の種類、つまり属性は火、水、風、土というように、一応あるが、1人1属性と決まっている訳では無い。個人によって強い属性があるだけで、それ以外の属性の魔力が使えないという訳では無いのだ。
強い属性は主に親から受け継ぐ。だが、国王陛下だけは別格でどの属性もいちばん強い。そして、王家の血が薄くなる、つまり、臣下へ下れば下るほど、使える属性がへったりもするらしい。
とはいえ、魔法に関してはまだ謎も多く、王立魔法研究所にて研究がされているとのこと。
「なるほど……魔法って奥が深いんですのね」
私が言うと、ウィル先生はうんうんと頷いてみせた。それから、
「ちなみに、僕は、いちばん風の魔法の属性が強いんだ。ディちゃんは火だよ」
と説明してくれた。それから、ウィル先生は掌を上に向けて、すっと前に出した。すると、手の中心にふわりと小さな風の渦ようなものが現れる。
「凄いです!!」
思わず立ち上がってよろこんでしまった。少しはしたなかったかもしれないが、仕方ない。だって、しっかり魔法を見たのは初めてだもの。
「褒められたら照れるよねん」
うふふ、と笑うウィル先生。それから、
「あ、それと、話は戻るけれど、サンフラワー学園の見学の日取り。1週間後でどうかな?って言われたのだけれど大丈夫?」
そう聞かれたので、即答で、
「大丈夫です!」
と言ったのであった。
1週間後かぁ……。
楽しみだなあ……。
この世界では初の学校ですからね。
初の学校にワクワクしていた、そのとき、ふと視線を感じる。
「あれは……」
✤次回予告的な✤
学園への見学が決まり、ホクホクのレベッカ。
そんな時、ふと視線を感じ……。視線の先には……?
【次回の更新は、4月16日予定!】
✤まとめのコーナー✤
ケイラー王国は神様が作った。それがケイラー王国で祀られている自然神、太陽の神、海の神、空の神、 植物の神。
そして、それぞれの神から火、水、風、土の魔法が国王へ送られ、それ以降、ケイラー王家の血筋の者は代々魔法を受け継ぐ。
だが、王家の血筋が薄くなると魔力も弱くなる。いちばん強いのは国王で、魔力は第1王子に1番継承される。
魔法には属性が一応あるが、個人によって強い属性があるだけで、それ以外の属性の魔力が使えないという訳では無い。
強い属性は主に親から受け継ぐ。国王は別でどの属性もいちばん強い。血が薄くなると、使える属性がへったりもするとか何とか。
まだ謎も多く、王立魔法研究所にて研究がされている。
ウィル先生によってかたられた魔法についてです!
また、活動報告のところに『レベッカの授業ノート』題してこちらも上げておきますので、「あれ?なんだっけ?」ってなったら、この、45話かそちらを見てください!




