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43話★少しの恐怖と安堵と

勢いよくクローゼットからそれを出した為に、ふわりと風に揺れる。視界を彩るのは、鮮やかな色々。


「これは……?」


「ドレスよ!」


ジェニーの問いに、私は、それはそれはいい笑顔でその鮮やかな色の正体を言う。すると、ジェニーは、驚愕したと言わんばかりに目を大きく見開く。


落ちるぞ、おめめ!

あんた、おめめ、大きいんだからな!


「え……もしかして、ドレスでカーテンを作るつもりですか!?」


「ええ」


「だ、ダメですよ!!そんな高価なもので!!パッチワークなんて!!」


わかってる。ドレスが高価なものであることくらい。いくら公爵令嬢だからって無駄遣いもしないし、金銭価値がわかっていない訳でもない。これはきっと、ジェニーからすれば目が飛び出るほど高いものだ。そんなことはわかっている。


でも。


牽制するように言うジェニーに、私はにっこりと笑った。


「わかってるわ。けれど、これはいいの!」


だって、これは、私、もう着ないから。


それはもちろん、今は新しいドレスがあるから昔のドレスはいらない!と言う理由ではない。


これを着ない理由は、これが………………フラン殿下に断罪イベントをされた時に着ていたドレスと、フラン殿下が形上の贈り物として送り付けてきていたドレスだから、だ。


フラン殿下は、私に愛はなくても義務的な気持ちからか、会いには来なくても、アクセサリーやドレスを沢山送ってきていた。これらはそのプレゼント達だ。


そのドレスを態々着ようとは思わないでしょう。


でも、着れないけれど、捨てるのはいけない気がして……仮にも王族からの贈り物だし。勿体ないし。だから、クローゼットで眠っていたのだ。


でも、眠っているだけならもっと勿体ない。それならば、ほかの使い方をすればいいのではないか、と思った。


……でも、よく考えたらこれも不敬かな……?まぁ、いいよね!!役に立つし!!


私の笑顔を見たジェニーは、怒ったような表情から、こちらを伺うような表情に変わる。


「本当に、いいのですか?」


「ええ、本当にいいのよ」


わたしが頷くと、ジェニーもこくんと頷いた。


「わかりました」


「あら、随分物分りがいいのね?」


「だって、レベッカ様、なんとも言えない顔をしてらっしゃいますから……なにか理由があるのですよね?………母国でのことですか?」


本当、彼女は察しがいいなぁ……。


「ええ、まあ……」


「無理には聞きませんが、お話なら聞きますよ?」


心配そうな表情でそう言ってくれる彼女に胸が温かくなる。


彼女になら、話してもいいだろうか……?私は、表上留学していることになっているが、本当は国外追放されたこと……。


怖がられるかな?軽蔑されるかな?そこが少し不安だ、嫌だ。


でも、大切な友達であるジェニーに黙っている方がもっと嫌だ。


「ねぇ、ジェニー……馬車の中で、私の話、聞いてくれる?」


「は、はい!私でよければ……!」


★★


ドレスを持って、馬車に乗り込む。色々な色彩が視界を埋めている。ちょっと目に悪いかもしれない。だが、そんなドレスはさくっと無視をして、真向かいに座るジェニーを見つめた。


ジェニーは、どこか緊張したような顔をしている。そんなジェニーに、クスッと笑いながら呼びかける。


「そんなに緊張しなくてもいいわよ」


「ですが、レベッカ様の秘密を聞かせていただけるんですよね?緊張しますよ!」


「秘密って程の事じゃないわ。でも、聞いたらジェニーは私を軽蔑するかもね」


「そ、そんなこと、絶対ありません!!」


私の言葉に、ジェニーは、ブンブンと大きく首を振る。


「ありがとう。……私が隣国、つまりスミス王国出身なのは知ってるわよね?」


「はい、存じています」


「私は、スミス王国の公爵令嬢で、そして、フラン第一王子殿下……あ、今は国王だったわね、の元婚約者なのよ」


私が言うと、ジェニーは、分かりやすく驚いた顔をした。大きな目をさらに大きく開いて、大きな声を上げた。おお、いい反応。


そして、それは、きっと、私が王子の婚約者になんて似合わないって言う意味のえー!?じゃないことはわかる。


「えー!?で、でも、それでしたら何故ここに?王妃様になられるってことですよね……?……それに、元って……」


「私はね、表向きには今、この国に留学していることになっているけれど、実は王子殿下の逆鱗に触れて、国外追放されてここにいるの」


「え、ど、どうしてですか!?」


「……殿下の好きな人をいじめていたから、らしいわ」


「……いじめた……?……レベッカ様が……?いじめ……?」


ジェニーは、文字通り、目を点にしていた。それから、ポツリと、


「……似合わなすぎる……」


と言ったあと、こちらを見て、真剣な瞳で、


「それ、絶対向こうの勘違いです。もしくは別人……?」


「ふふふ、ありがとう。私もいじめていたつもりはないのだけれど、もしかしたら、言い方がきつかったのかもしれないわ。…まあ、有体に言えば、私は罪人なのよ。……軽蔑した?」


自虐的に笑いながら言う。ジェニーに嫌われたらきついなぁ……。すると、ジェニーは、ブンブンと再度首を横に振った。


「いえ、全然!!というか、絶対、それは、王子様の方が間違ってます!断言できます!というか、好きな人ってなんですか!!レベッカ様という素敵な素敵な本当に素敵な婚約者がいながら、そんなに堂々と浮気できる人の気がしれません!!」


そうです、王子様が間違ってるんです、と繰り返すように言うジェニーに、軽蔑の色はない。それどころか、殿下に大して怒ってくれている。


それに少し安堵した。ジェニーはそんなことで軽蔑するような人ではないと知っているが、彼女のことが大好きだからこそ、軽蔑されたら、と不安だったのだ。


「王子様がレベッカ様をいじめているんですっ!私は、許しませんっ!」


プンスコと怒るジェニー。私のために怒ってくれている。そんな友達がいるなんて、私は幸せ者だと思う。国外追放されなければジェニーには出会いなかったのだから、その面では感謝している。


「ありがとう、ジェニー」


「いえ!当然です!!」


「でも、国外追放されても、ジェニーたちに出会えたからこれはこれでよかったと思ってるわ」


「れ、レベッカ様!!!私もレベッカ様にお会いできて、嬉しいです!」


「ありがとう。……それでね、このドレスたちなんだけど」


そう言って、手元にある、ちょっとの間無視をされていたドレスへと目を向ける。赤や黄色、ピンクなど、派手な色が多いのは、殿下の趣味か、はたまた、選んだ人の趣味か……。


ちなみに私は落ち着いた色の方が好みである。今着ているのは、濃紺と白の生地に小さな星が散りばめられた夜空のようなドレスである。


「………これはね、殿下からの贈り物なの」


「……っ!?」


ジェニーがはっとしたように私の方を見る。それに、自嘲気味な笑顔を返して、


「きっと儀礼的なものだけれどね。それをわかっていて着れる神経は私にはないわ」


そう言うと、ジェニーは、少し顔を下げ、それから、戸惑うように少し目を左右に動かしてから、


「……レベッカ様は今でも王子様が好きなんですか……?」


「いいえ。今でも、というか、殿下を恋愛感情で見たことはないわ。だって、私が婚約者になるのは恋をしていようとしていまいと決定事項だったもの。ある程度の情はあったけれど、それももうないわ」


私の言葉を聞き、ジェニーは、少し安堵したような表情を浮かべた。そんな彼女に私は、肩を竦めながら、言葉を続ける。


「でも、仮にも王家からの贈り物だし、捨てることは出来ないから、それで、新たな使い道をって思ったのよ」


「そういうところ、レベッカ様らしいですね」


「そう?」


「はい」


「まあ、そういう訳で、このドレスはカーテンにちしちゃおうって思ったの」


「なるほど。でも、それなら、遠慮なくそのドレスを切り刻めますね!レベッカ様を傷つけた人の贈り物、存分に切り刻んで差し上げます。そして、少しでもいいからレベッカ様のお役に立ちなさい、ドレス……」


嬉々とした表情で言うジェニー。あれ、天使さん、どこ行きました……?


「……ジェニー??」


私が呼びかけると、ジェニーは、いつも通りの天使の笑顔を浮かべて、


「素敵なカーテンにしましょう」


そんな話をしていると、丁度馬車が小屋に着いたようだ。





✤次回予告的な何か✤

さて、本格的にカーテン作り開始!!

前世では、指をついたり、布の上と下をくっつけたり、布を破ったりしていたレベッカですが、さて、上手くいくのでしょうか…?


乞うご期待!お楽しみに!


【次回の更新は、4月14日予定!】




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