40話✧私の今 (クレア視点)
ついに1章最終話です!
本当にいつもありがとうございます!
ギギギッと音を立てて扉が閉まる。
ああ、始まってしまう。
私、クレア・フローレンスはここ最近、というよりこのスミス王国の王宮に来てから、この音が嫌いだった。この音は地獄の時間の始まりなのだ。
といっても、本当の地獄に行くわけではないし、監獄のような薄暗い場所ではない。どちらかと言えば、そのイメージとは反対に豪華絢爛で美しさの塊のような場所だ。本当ならみんなが喜ぶべき王宮の中なのだから。
そんなみんなが憧れるここが、私の嫌いな場所である理由。
それは、
「クレア様、こんなこともお出来にならないのですかッ!それで王妃が務まるとお思いでッ!?」
キンキン声で怒る中年の女性。ギンっと睨む目と高く結あげられた団子がキツめな印象を与える。そんな彼女に、私は心底怯えていた。
扉が閉まってすぐ、その怒鳴り声が飛んできたのだ。理由は、私のカーテンシーがなっていなかったから。
「やり直してくださいましッ!」
そう言われ、姿勢を戻してから再度カーテンシーをするが、
「足がなっておりませんッ!それから、スカートのあげ方ッ!」
再度飛んでくる怒号。マナーに対する叱責。
そう、私は今、王妃教育の真っ最中なのだ。
その王妃教育は、いつもこの部屋で行われている。そのため、この、扉が閉まる音は、私にとって王妃教育始まりの合図。地獄が始まる合図。だから、この部屋が、この音が私は好きではないのだ。
そして、この怒号を飛ばしている彼女はマナーの講師だ。王族として、王妃として、必要な然るべきマナーを教えてくれる。カーテンシーの仕方、挨拶、テーブルマナー、紅茶の飲み方、手の振り方から歩き方に至るまで王妃として国民の前に出て恥ずかしくないように。
貴族の子女は一定の年齢になると王妃教育とはいかないまでも、ある程度のマナーは学ぶ。しかし、私の場合は、伯爵家の娘とはいえ、養女であり、ほとんどの時を平民として暮らしていたため、このような教育は受けたことがない。
そのため、急ピッチで全てを教えこまれているのが今の現状だ。
それから、この女性講師以外にもダンスの講師や刺繍やお裁縫の講師、歴史などの勉強を教える講師など分野別に講師がいる。そして、王妃教育の講師はそれこそ、国内選りすぐりの方々であり、エキスパートだ。そして、その分、厳しい。
ある程度のことはできて当然、その先からしか教えてくれない。そして、彼らにとっての当然が出来なければ、「こんなことも分からないのですかッ!」と呆れたような怒りが飛んでくる。
そして、彼らは、身分で物事を図る人だらけだ。
講師達はみな、私の行動に注意をした後、蔑むような目をして、言うのだ。
「これだから、元平民は……」
その言葉に唇を噛む。
でも、私は……何も言い返せない。
ただ、淡々と話される、もうマナーとは関係ない言葉の暴力に耐えるしかない。
だって、私が元平民なのも、マナーが出来ていないのも本当の事だから。
フラン殿下を支える者として、王妃としてある程度の教育は覚悟をしていた。
でも、こんなに辛いだなんて。
そして、最近分かったことがある。
漸く、だ。
それは、レベッカ・アッカリー様のことだ。
「クレア嬢、これからあなたは、王族に名を連ねるのよ!しっかりなさって!」
レベッカ様がどんな思いで私に助言をしてくれていたのか。レベッカ様がこの王家の行く末をどれほど案じていたのか。
彼女は、婚約者をとられる、そんな苦しい思いをしても、第1に国のことを考えていた。
そして、気づいた。
彼女はいくら私のマナーがなっていなくても、講師たちのように、「元平民は」などとバカにしたことは1度もなかったことに。
厳しい言い方の中に彼女の優しさがあったことに。
講師たちより、彼女の方が何万倍も優しかったことに。
本気で私のことを心配してくれていたことに。
彼女が私なんかよりも何倍も王妃としての適正と能力があったことに。
ひとつの才能を私の手が潰してしまったのだ。
出来ることなら……会って謝りたい。
なんて、甘いかな……。
いつもこの作品をお読み頂き、本当にありがとうございます!
そして、ブックマークや評価をして下さっている方!ありがとうございます!本当に嬉しくて、「読んでくださる方がいる!頑張ろう!」と思えます!
これからも読んで頂ければとてもとてもめっちゃ嬉しいです!
【2章……Coming soon!】
それと…なのですが、私のこの小説は、1話大体3000字から4000字なのです。これは、読みやすいですか……?もう少し少ない方がいい!または、多い方がいい!などあれば教えてくださいませ!あとは、これは直せ!とかございましたら……。




