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2話★ 状況整理と両親

まず私の前世について。


私の前世は“日本“という国で生まれ育った。


そして、将来は英語教師になる為勉強していた教育学部の大学生だった。歳は21歳。


そして、アニメやゲームが大好きな女の子だったはず。


最後の前世の記憶は、確か……横断歩道を渡っていて、車が迫ってきて……でブラックアウトしているから、多分この後、事故で死んだのかもしれない。


よかった、痛い思い出は残ってない。

事故の記憶と痛みを覚えたまま転生とか辛くてしかたがない。早々に意識を失ったらしい。よかった。


そして、私が転生したこの世界は前世で私がしていた、所謂乙女ゲームの世界だ。


そのゲームというのが、『Sweet Memorial ~幸せのプリンセス~ 』というゲームだ。ジャンルは、“真実の愛を知ろうADV“。


私はこのゲームが大好きで、お気に入りのルートはセリフ覚えるくらい何十周もした。


勉強はどうした、っていうツッコミは今はなしで……。


そのゲームの内容だが、まずは世界観について。


イメージは、中世ヨーロッパだと思う。舞台はここ、スミス王国。王家が支配する、所謂絶対王政の国だ。


それから、登場人物について。


主人公は元々平民で、伯爵家に養女として迎え入れられた女の子。この世界で言うクレア・フローレンス嬢だ。


確かゲームでは名前変換可能だったが、元の設定の名前がこれだったはずなので、間違いない。


主人公は、明るく天真爛漫な性格で好奇心旺盛、無邪気。そして、なにより守ってあげたくなるような子だ。所謂、主人公!って感じの性格。


そして、平民の出である為貴族のルールはわからないが、そんなところか攻略対象達の心を掴む、そんな感じのストーリーだった気がする。それに、周りからの圧力にも屈さない性格も。


そして、攻略対象について。

攻略対象は、全部で4人。


まずは、メインルートといって差し支えないであろう、王太子フラン・スミス殿下。


確かストーリーは、生まれながら王太子殿下という地位でありその重責に苦しみ、また、政略結婚で宛てがわれた婚約者に飽き飽きしていた時に、主人公に出会ってその天真爛漫な性格に癒され、真実の愛を知るみたいな感じだった。


それから、2人目は王太子殿下の側近の人で名前はロン・ハース。


確か王太子殿下の乳兄弟のはず。

性格としては、しっかり者でキレ者。

そして、何よりも王太子殿下を大切に思っているみたいなキャラ。


最初は主人公さんをよく思っていなかったが、付き合って行くうちに打ち解けて恋に落ちる。イメージとしては、主人公のおかげでちゃんと自分のことを顧みることができるようになり、真実の愛を知るみたいな感じだった。


あとは、正義感が強く周りと反発しがちな王宮の騎士さんと、優しく紳士的な家庭教師さんだった。


最後の2人が適当?そんなことないわ。……説明が面倒くさくなった訳じゃないわよ、決して。


ええ、決して。


それから、その全てのルートに、フル出場しているのが、フラン殿下の婚約者である、レベッカ・アッカリーだ。


レベッカは全てのルートで悪役として主人公の恋路の邪魔をする。


王太子殿下の側近はまだしも、騎士さんや家庭教師さんルートに出るのはどういう理由よ!


……確かゲームでは、庶民が自分の周りにいる貴族に近づくのが気に入らないとか何とか言ってたけど……


ともかく私は、全て欠席無しの全出席なのだ。


ほんと、お給料でないかしら。きっと莫大な量よ。そのお金でこれから平民するわ。


………………まあ、そんな茶番は置いておいて。


悪役令嬢レベッカは、とりあえず主人公を虐めまくる。


それこそ、現実世界でしたら違和感ありまくりなくらい、権力やコネを使いまくる。普通なら、ただの令嬢である私にそんな権力ないのだけれど。


それに、レベッカは公式設定でも何でも出来る“令嬢の鑑“という設定で、現実的に私も王妃教育の賜物か、自分で言うのも何だが、一応ちゃんと“令嬢“を出来ている。


そんな令嬢がなりふり構わず人を虐めるなんてこと違和感がありすぎる。


現実的に、私は前世の記憶を思い出す前でもそんなことはしなかった。

令嬢としての振る舞いを注意するくらいだ。


そこはゲームだから結構何でもあり!ってやつかな?


まあ、話をゲームに戻すと、最後にはその悪事がばれ、1番親密度の高い攻略対象が悪役令嬢、レベッカを断罪する。


……ありがちな展開だ。


そして、その断罪イベントが、婚約破棄及び国外追放を言い渡された先程のものだ。私が前世を思い出した時の。


主人公の隣で私を断罪したのは、フラン殿下だったから、今生きているこの世界はフラン殿下ルートなのだと思う。


今となってはどうでもいいけれど。



★★


そんなふうに整理をしていると、いつの間にかお父様の部屋の前に着いていた。


扉をコンコンと叩き、「レベッカです」と名乗る。すると中から「入れ」と声が聞こえた。


今まで生きてきた中で1番緊張する瞬間かもしれない。スーッと大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。深呼吸だ。


大丈夫。私は大丈夫よ。そう、自分に言い聞かせるように言ってから恐る恐る扉のノブに手をかけ、一思いに開ける。


中には、複雑そうな顔をしたこの家の当主アッカリー公爵の姿があった。

厳格な雰囲気漂うお父様は、娘の私が言うのも何だがカッコイイと思う。


今はそんな話している場合ではないが……。


そして、その隣には公爵夫人の姿。つまり、私のお母様だ。お母様は泣き腫らしたように目を真っ赤に染めている。


少しの沈黙。

お互いが様子を伺うように黙ったままだ。


その沈黙を破ったのは、相手の方だった。お父様が複雑そうな顔から一変、みるみるうちに眉を下げて心配そうな顔になる。


「レベッカ……大丈夫か?」


心配そうな顔のまま私の方へ近寄ってくるお父様とお母様。そんなお父様、お母様に頭を下げる。


「大丈夫です。お父様お母様、この度はご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません…」


「いいや、迷惑だなんて思っていないよ。顔を上げなさい。それにお前は何も悪いことをしていないのだろう?」


答えたのはお父様。そう言われ、下げていた顔を上げる。そして、しっかりと頷く。


「はい」


すると、お父様の隣に立っていたお母様が耐えられないと言うようにぎゅっと私を抱きしめた。


「お母様……?」


お母様は何も言わない。その代わりに続けて口を開いたのはお父様だった。


「よく、聞いてくれ。お前の国外追放が決まった……」


その言葉に目を見開く。

お母様はさらに私をぎゅっと抱きしめた。


「はい」


やはり、そうなのか。前世を思い出したところで、変わらないのか。ゲームの強制力ってやつだろうか。変わりようがないのだろうか。


覚悟はしていたけれど、少し怖くてお母様にきゅっと掴まる。


「国王陛下は今、病に臥しておられる」


その言葉に、えっ…と思わず声を漏らしてしまった。初耳だぞ、その情報。


「知らなくて当たり前だ。この情報は貴族でもほんの一部しか知らないことだ」


そりゃそうか、国王陛下がそんなことになっているって聞いたら国民は動揺するし、他の国に攻めいられてもおかしくはない。だから、秘密にされているのもうなずける。


って納得している場合じゃないわ!そ、そんなこと、私に話していいの!?


私はオロオロするが、お父様は話を続ける。


「それでだな、今この国の事実上の権力は王太子殿下にある。……いや王太子殿下を笠にきた周りの貴族達、にあると言っても過言ではない」


私はこくんと頷く。

昔からあるよね、幼い王を立てて、その後ろ盾として周りの人が権力を振るう的な感じの。あんな感じかな?


「王太子殿下の権力を笠に着て好き放題しようとする貴族達を止めるのは本当に大変だったわい」


お父様がそこで、苦労を思い出したようにふぅとため息をつく。お父様の苦労が垣間見えるわ。


好き放題する貴族達のそのストッパーがお父様。お父様、曲がったことが大嫌いで、クリーンな政治第一、国民のための政治第一だと考えているからねぇ。


そして、選民思考はないけれど貴族としての誇りはあるって感じだ。


だからこそ私の領地では厳しくもしっかりと治めているお父様の人気は凄い。お互いを尊敬し合っているって感じ。


「そして、その王太子殿下の周りにいる貴族たちにとって代々王に仕えて忠誠を誓い、向こう側から言ってみれば邪魔をしている、我がアッカリー公爵家は……」


お父様は目を伏せる。

目の上のたんこぶって訳ね。


「それで、この婚約破棄をこれ幸いと思った周りの貴族達は、私の国外追放にこぞって賛成したって訳ですね。私とひいてはお父様を失脚させるために」


お父様に続いて私が言葉を続ける。

さすがにお父様といえども議会全体の賛成を覆すことは出来ない。


……王太子殿下、利用されてるなぁ……。ってか、そんなんで国、治められるの。そのうち滅亡するよ、ほんと。


そして、貴族達もすること早いなぁ。

だって、私が婚約破棄宣言されてそんなに経っていないわよ。自分に都合がいい時だけ仕事がはやくなるのね。


「……ああ」


「レベッカ、貴女は何も悪くないのよ。それを旦那様も私もちゃんとわかっているわ」


お母様が私を抱きしめたまま言う。


「ありがとうございます」


私が礼を言うと、お父様もお母様も首を横に振った。


それから、お父様は話を続ける。

私の身についての具体的な話だ。


「2日後の朝にはレベッカは国外に出なければいけないことになっている……。行き先は、隣国のケイラー王国だ」


ケイラー王国。

スミス国の東どなりにある国で、確か、この国より発展はしていないはず。その代わり、王族と国民の距離がこの国より近めの印象だ。


実際に行ったことがないので、文献上だけでしか知らないが。


「本当は身一つで国外追放と言われていたのだが、まだ16の娘にそこまでするのかと抗議して、メイド2人とお金は持って行っていいという条件をぶんどった」


会議中のことを思い出したのか眉を盛大に吊り上げて言うお父様。「ぶんどった」って……。お父様、お怒りからか言葉が荒くなっています。


「メイドは、リリとアンナを連れて行くといいわ」


お母様が私から身体を離し、そう言う。


「え、でも……」


私についてきてしまえば、リリもアンナも故郷に帰れなくなる。


私のせいで大事な故郷から離れる決断させるなんて……。そんなこと、私にはできない。


それならば、1人でだって隣国に乗り込んでやる。元は庶民だし、何とかなる、いや、何とかしてみせる。


私のことに人を巻き込むなんてできない。人の人生を狂わせるなんてできない。


「リリとアンナが自分から志願したんだ。メイドたち事情を話した時、真っ先に2人が声を上げてくれた」


渋る私に、お父様がそう続ける。


「リリ……アンナ……」


私が目覚めた時、心配そうに私を見ていた2人。そうか、その時、私の行く末を2人は知っていたのだ。


それでも、「どんなことがあっても味方だ」って言ってくれたのだ。


きっと並大抵の覚悟じゃない。


「こちらの領地のことや後のことは私に任せてくれ。お前を救ってやれなくてすまない……」


今度はお父様が頭を下げる。

そんなこと……!


「いいえ、お父様。お父様は充分私を助けてくださっていますわ。ありがとうございます」


頭をあげるお父様。


「それから、お前のことは隣国の知り合いに頼むことにした」


行き先までちゃんと準備してくれている。お父様の優しさだ。


それから、その知り合いはマーク家と言い、そこの当主とお父様が昔ながらの友人であり仕事仲間でもあると言うことと、もう手紙をそちらに送って快く了承してもらったこと等を教えて貰った。


それから2日後の出発時刻や行き方等細かいことも教えて貰った。


その後、


「今日はもうゆっくり眠りなさい」


お父様にそう言われてお父様の部屋を出たのだった。


簡単な情報まとめのこーなーです( *¯ ꒳¯*)


♛ゲーム名

『Sweet Memorial ~幸せのプリンセス~ 』



♛ゲームでの主人公

クレア・フローレンス



♛ゲーム攻略対象

Ⅰ,フラン・スミス王太子殿下

スミス王国の王太子。


Ⅱ,ロン・ハース

フラン王太子殿下の側近。




読んでくださって、ありがとうございます!

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