表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/148

35話★門番との対峙と救世主

3月最後の更新ですー!よろしくお願いします!

二人の門番に怪訝そうに見つめられたじろぐ。何も悪いことはしていないけれど、こうやって見つめられるとこちらが悪いような気もしてくる。


どうしよう……と内心困っていると、門番二人はさらに眉をひそめてこちらを見る。冷や汗が出てくる。


リリも困ったような顔をしているが、門番がなにかしてきてはいけないと思ったのだろう、スっと私の前へと出てきて、庇うように立つ。


「お嬢様、何かございましたら、すぐにおにげくださいまし」


先程馬車に乗ってきた時のような柔らかな風はピタリと止み、緊張したような空気が流れている。心臓は高揚ではなく別の意味でドキドキと音を立ていて、ヒヤリと臓器が冷えたような気さえする。門番の訝しげな表情と対峙する時間は、短い時間のはずなのに永遠に感じられる。


そんな時……


「ごめん、ごめーん!その子、僕の知り合いなんだ」


その空気を裂くように暖かな、そして元気な声音が聞こえた。そして、ふわりとリリが立つ側と反対の隣、右隣に誰かがやってくる気配。


「ウィル先生?」


私が慌ててそちらを振り返ると、そこには想像通り、水色の髪を靡かせたウィル先生が立っていた。登場と同時に、凍った空気が柔らかに解けるように霧散し、春の空気が戻ってくる。隣を見、目が合うと、パチリとウィンクをされた。まるで、僕に任せておいて!と言うように。


それから、ウィル先生は門番へと向き直る。それに合わせて私もそちらを見ると、門番は、少し驚いたような顔をしていた。


「ルキア公爵家のウィリアム殿……」


「うん。今日は父上の仕事の見学に来たんだけど、話はいってるかなー?」


ウィル先生がほわんとした笑顔でそう続けると、門番は少し顔を上気させて、慌てたように先程の来場者リストをペラリとめくる。そして、


「は、はい!お名前がありました!!」


「彼女も、連れなんだけれど、大丈夫??」


そう、ウィル先生が申し訳なさそうに、そして、相手の表情を伺うように言うと、門番は、二人とも敬礼をして、


「は、はい!大丈夫です!!」


と大きな声で答えた。


「ありがとん!」


門番の言葉に破顔するウィル先生。人懐っこそうな笑顔を浮かべてお礼を述べる。


それから、私はウィル先生とリリとともに門をくぐった。門から少し離れると、私は頭を下げて、お礼を言う。後ろではリリも頭を下げていた。


「助けて頂き、ありがとうございました」


「え!?いやいや〜!ぜんぜーん!お安い御用だよ!困っているレディを助けるのは男の役目だからねん!」


ウィル先生は、少し驚いた顔をしてから、パチンとまたウインクをして返事をする。ウィル先生、中身もイケメンだわー。


なんで、乙女ゲームでこの隣国を舞台にしなかったんだろー?


だって、アンディ様やアンドレア様とか、このウィル先生も、あ、あと多分、小屋の管理人でもあるルカとかも攻略対象になり得るぞ?そんでもって、きっとヒロインは天下のジェニーで決まりだわ。我らがヒロインだよ、彼女は。天使だもん。


あ、でも、乙女ゲームにするなら、悪役令嬢はいらないわ。だって、こんな思いするのは私だけで十分ですもの。夢に向かって頑張れてるからまだいいものの、国を追い出され家族と離れ離れなんて思い、他の子にして欲しくないもの。


なんて少し思考をとばしていると、


「でも、レベッカ嬢はなんであんな所にいたの?」


その声にふと我に返る。目の前にはウィル先生の顔があった。少し背の低い私に合わせて少し屈んで目線を合わせてくれている。思ったより近距離の彼に内心少し戸惑いながらも、


「実は、今日は国王陛下に学校作りのことを報告する日ですの」


「あー、なるほどねー!………でも、一人で?」


「あ!いえ!マーク公爵はどうしても手が離せないのでアンディ様と二人で、ですわ」


「え、じゃあ、なんでディちゃんいないの!?え、僕、置いてきた!?」


私の言葉を受けて、慌てたように後ろを振り返るウィル先生。


「違いますわ!大丈夫ですわ!私とリリだけです。アンディ様は先にマーク公爵と王宮の中にいらっしゃるのです」


「えー、それ、ひどくない?他国の王宮に身一つで行くなんて怖かったでしょ、大丈夫?」


「ええ、まあ……。でも、ウィル先生が来てくれたので入れましたわ!本当にありがとうございました」


実際、めちゃめちゃ怖かった。門番二人に見られた時は本当にどうなるかと思った。あと、話、行ってないの!?なんで!?ってなった。ウィル先生が来てくれて本当に良かった。彼が来てくれていなかったら、多分、私、入れず追い出された。


それにしても、門番さん、ウィル先生が来た途端に態度変わってたなぁ。ほわほわって空気にのまれたみたいな感じ。ウィル先生、美しい人だから、微笑むとさらに綺麗なんだよなぁ。


「それにしても、ウィル先生って人気なんですね」


「あー、まあね」


ウィル先生は苦笑しつつ答える。イケメンは特だな。うん。男の兵士さんまでぽーっとなってたぞ。


門をくぐるとそこからは王宮の庭が広がっていた。王宮の庭は花々がたくさん咲いており、マーク公爵家よりもさらに広い花畑だ。なんでも、専属の庭師さんがいて、いつでも綺麗な花々が咲いているらしい。そんな花畑の中を蝶がチラホラと舞い、穏やかな陽だまりが当たりをほわほわとした雰囲気を感じさせる。


……この世界、どこもかしこも花だらけねぇ。これも乙女ゲームだからなのかねぇ。


それから少し歩くと誰かが花の中に立っているのが見えた。栗色の髪に深い青色の瞳。アンディ様だ。ウィル先生もお花が似合うけれどアンディ様も似合うなぁ……。さながら王子様みたいだ……。王宮でこんな事言うのも何だけれど……。


アンディ様はこちらに気づくと、駆け寄ってくる。そして、私の隣にウィル先生がいたからだろうか、少し驚いたような顔をする。


「あれ?ウィル先生……?」


「やぁ、ディちゃん」


不思議そうな顔をするアンディ様。


「何故レベッカと一緒に…?」


「門を通れなくて困っていたところを助けて頂きました」


そう言うと、アンディ様は納得したような顔をする。すると、ウィル先生はそっと私の肩をアンディ様の方へと押す。


「お姫様はしっかり掴んでおかなきゃダメだぞー?……せっかく胸を張って一緒にいれるんだから……ね?」


せっかく胸を張って一緒にいられるんだから、そう言葉を紡いだ彼の表情はどこか苦しそうで。でも、本当にそれは一瞬だけで。


そして、この表情、前にも見た……。私がアンドレア様と一緒にいる時、彼に向けてこんな表情をしていた。苦しい表情の視線の先にはアンドレア様がいた。彼は……きっと……。


私はウィル先生に押され、少しよろめいてアンディ様の方へと行く。押されたといってもほんの少しだけだから全然危なくないけれど。


アンディ様はレベッカを支えてくれつつ、驚いた顔をウィル先生に向けている。


「あ、え……?はい…」


不思議そうなアンディ様と私に向かって、ウィル先生は、「じゃあーねー」と手を振って去っていってしまった。


「私、お姫様じゃなくて、公爵令嬢だけど……?」


しかも、身分の前に悪役とつく。


「そういう意味じゃないと思うよ」


「……どういうことですか……?」


「レベッカは知らなくていいよ」


「……はい……?」


アンディ様がそういうのでとりあえず納得しておくことにしておく。すると、タイミングよく、リリが声をかける。


「お嬢様、アンディ様、そろそろ向かわれた方がよろしいかと思います」


「そうね、ありがとう!」


リリの声に私は、国王陛下と謁見すべく、王宮へと足を進めた。


王宮の中は、流石王宮という感じだった。スミス王国の王宮にも王妃教育のために何度か通ったことがあるが、このケイラー王国の王宮とはまた違った内装だ。


豪華絢爛という感じではないが、王宮の外装と同じく美しく上品な内装だ。一見豪華ではないように見えるが、よく見ると細やかなところまでしっかりと模様が彫られていたり、所々に花々がいけられていたりする。その中に煌びやかなシャンデリアがあり、落ち着いた内装を引き立てている。


絨毯は深い赤で統一されており、金色の糸で縁どりがされている。もちろん天井は高く、玄関ホール__と言ってしまっていいか分からないが__には、この国の神様である、太陽の神、海の神、空の神、植物の神を擬人化したであろう姿が描かれていた。天井画というものであろう。この国の神々についてはあまり詳しくないので後でアンディ様やウィル先生に聞いてみよう…。


それから、また進んでいくと、廊下ではまた、引き続き赤色の絨毯が引かれていた。そして、壁は上側はクリーム色に近い白、下側は深みのある茶色だ。壁に沿うように等間隔に並べて取り付けられている光は少しオレンジがかった色でほんわかとした雰囲気を醸し出している。


まわりを不躾じゃない程度に、そして失礼じゃない程度に見ていると、隣から、


「ケイラー王国の王宮は、スミス王国とはまた違う?」


と声が聞こえた。


「はい!外装内装共に少し雰囲気が違っていて、とても楽しいです」


「そっか、なら良かった。あ、もうすぐ王の謁見室だよ」


アンディ様はふわりと優しく笑ってから、気づいたようにそう声をかけた。アンディ様が指し示す先には一際大きな扉。扉は深い茶色で、木でできているのではないかと思われる。でも、そこにも細かな、そして繊細な絵が彫られていて美しい。扉ひとつとっても美しいとは流石王宮である。


そして門の前にはやはり近衛兵が立っていた。近衛兵に声をかけると今度は捕まらずに中へと通してくれた。


大きな茶色の扉がゆっくりと開く。


「さあ、行こうか」


「はい」


足を踏み出した。


✤次回予告的な何か✤

遂に国王と対面することになるレベッカ。さて、学校づくりは承認してもらえるのか?!レベッカの新たな戦いが始まる!!!次回もお楽しみに!


【次回の更新は、4月1日予定!】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ