27話☆心の声は、心の音は (アンディ様視点)
少し時間を戻しまして、レベッカとアンドレアがお話をしている時の裏側のようなお話です。アンディとジェニーがレベッカたちの元へ行く少し前の話です。
レベッカがハンカチを追って去っていってしまったので、ジェニファーと共に待つ。
「学校作り、うまく行きそうだね」
そうジェニファーに話しかけると、ジェニファーは、「はい!」と大きく頷いた。それから、「レベッカ様が幸せそうで、私も嬉しいです!」と心から嬉しそうに続ける。ジェニファーはレベッカが大好きだからねぇ。
僕も、レベッカの喜ぶ顔は、見てて幸せな気分になるから、頑張ろうって思えるけれど。
その旨をジェニファー言うと、ジェニファーは少し驚いた顔をする。そして、一瞬戸惑うようにしてから、意を決したような顔をしてから、こちらをじっと見やった。
「あの、アンディ様」
「うん?どうしたの?」
その真剣な瞳に驚きながらも返事をする。すると、ジェニファーは、その瞳と同様、真剣な音をその声にのせる。
「まだ気づかれませんか?」
そして、その音が紡いだのは唐突なと問い。僕は頭の上にクエスチョンマークをあるだけ浮かべる。
「何に?」
すると、ジェニファーは、少し呆れたような顔をする。というか、眉が少し釣り上がり、口元はぶすんと尖っていて、少し怒っているようにもみえる。
「アンディ様のお心ですよ!」
「………?僕の心?」
「はい。そろそろ気づいてもいい頃だと思いますよ、私は」
「何に気づくの……?」
その言葉にまた、クエスチョンマークが増える。
どういうことだろう?
彼女の言っていることが理解出来ない。
僕の心で僕が理解していないこと、わかっていないこと、気づいていないことってなんだ?
彼女は何を言っているんだ?
そんな僕を他所に、ジェニファーは、じっとこちらを見たまま、続ける。
「……ご自分で気づかれるのが一番大切だと思いますから、直接的には言いませんが、一番のヒントを差し上げますね」
ジェニファーは、ふっと力を抜き、それから、優しい笑顔でそっと大切なものを口にするように言葉を紡ぐ。
「あなたの心が揺さぶられる時は何が関係していますか?」
「……心が揺さぶられる時……?」
「はい。その答えを探せば、アンディ様は、ご自分のお心に気づかれると思います」
どういうことだろう……?その問いを口にしようとしたが、ジェニファーは、それ以上何も言う気は無いようで、パッと表情を変えると、
「レベッカ様、まだですかねぇー。レベッカ様にお会いしたいですー」
と幼子のように口を尖らせる。レベッカは、さっきまで隣にいただろうに……。
最初はオドオドしていたジェニファーだったが、多分これが彼女の素なのだろう。そんな彼女にクスッと笑うと、
「迎えに行こうか」
と誘う。すると、途端にジェニファーの目がキラキラと輝く。ジェニファーは本当にレベッカが好きならしい。
「はい!」
ジェニファーとともにレベッカが歩いて行った方向へ行くと、
「あ、兄上」
花壇の前でレベッカと兄であるアンドレアが一緒にるのが見えた。遠くて何を話しているかは分からないが何やら話している。
そして、いつもはめったに笑わない兄上が、優しい笑顔で笑った、ように見えた。その瞳にはきっと向かいにいるレベッカが映っていて。兄上につられて、レベッカも微笑み返す。
その時、
"ズキン"
胸が音を立てた。
「……え?」
「アンディ様、どうかされましたか?」
ジェニファーが何かを言ったが耳に入らなかった。胸のその音は、どんどん大きくなってくように感じる。
その音はどこか苦しさを伴って、胸を締め付ける。笑顔で笑いあうレベッカと兄上から目を逸らしたくなるが、逸らせない。
苦しい……
苦しい……
これは……何?
その時、サーっと風が吹き、頬を撫でていく。
そして、気づいた。この苦しみの正体に。
ああ、これは……。
少し考えればわかる事だった。
さっきからジェニファーが言っていることは、この事なんだって気がついた。
もう答えは出ていた。
とても簡単な答えにたどり着いていた。
僕の心が揺さぶられる時に関係しているのは……
光り輝く笑顔を浮かべる、彼女だ。
レベッカ・アッカリーその人だ。
そして、気づいた。
ああ
これは……
"恋"
だ……
僕は恋しているんだ、彼女に。
何にも真剣になれなかった僕が。
そして、この感情の名前は、
"嫉妬"
だ。
兄上がレベッカと仲が良さそうにしているのを見て、嫉妬しているんだ……
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次回は視点がレベッカに戻ります!
【次回の更新は3月24日予定!】