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22話★話し合いと新たな出会い

「これですね。はい、どうぞ」


それに応えて、アンディ様はマーク公爵に机の上の書類を渡す。その書類には細かに字が並んでいて、それが数十枚あった。そして、それは、どうやら、学校づくり計画に関係あるもののようで、所々『学校』や『教育課程』の文字が見える。


後から聞くと、それは、マーク公爵なりに学校づくりについて色々とまとめてくれたものらしかった。


それから、マーク公爵は、私達の作った書類も取り出し、公爵の書類と並べる。


「レベッカさん、ジェニファーさん、アンディ、君達の書類を見させてもらったが、色々と直していかなければならないことがある」


「はい」


そう返事をすると、マーク公爵は、ひとつ頷き、ペラリと私達が書いた書類を開いて、そして、そのページの真ん中あたりを指した。そこには、学校づくりの予算、そして経費が、内訳のグラフと共に書かれている。


「まず、この、経費のところだが……いささか少なすぎるのではないか、と思う。この内訳だが、ノートやペンなどの文具の費用はいい。こちらが支給する形になるだろうから、こんなものだろうね。だが、この、黒板の値段は安すぎる。黒板は、少なくとも14万フェーリーから20万フェーリーはかかると思う」


え、黒板ってそんな感じなんだ、と感心する。黒板ってその位の値段なのね。高いと感じるのか安いと感じるのか人それぞれだとは思うが、個人的には意外と高いんだなと感じた。


黒板の値段は、話し合いをしていた時も困った案件だった。だって、黒板の値段なんて知ってますか?普通。知らないよね。私も知らなかった。前世でも気にした事、なかったし。


まあ、もし知っていたとしても、日本の値段の相場とこちらの相場が同じかどうかは分からないけれど。


あ!でも、ノートやペンの値段は日本の値段の相場で計算して、公爵に言われなかったから、だいたい同じくらいなのかしら、などと思うが。


ちなみにだが、"フェーリー"というのは、この国、ケイラー王国、並びに私の祖国のスミス王国やその周辺の国で使われているお金の単位だ。お金に関する難しい話は得意ではないが、為替的な面でいえば、1フェーリー=1円のようである。


つまり、黒板の値段の相場は、14万円から20万円くらいってわけね。


「その、黒板は取り付け式のものですか?」


「そうだね。壁に取り付ける感じかな」


私の問いにマーク公爵が答える。


「工事代は含みますか?」


今度はジェニーが問いかけた。そっか、黒板があっても設置しないと使えないものね。


「含むと思うよ」


なるほどと、思いながら、先程の書類の黒板、及び取り付けの欄に十四万から二十万フェーリーと書き直す。


そして、その後、チョークと黒板消しの値段は問題ないと言われた。


「あとは、机と椅子の相場だけれど、ひとセット、二万フェーリーくらいだね。何人来るかにもよるけれど、この見積もりは少し甘いね。生徒はうちの領地の子供たちを見込んでいるのなら、四十人はいるから…そして、学ぶことは同じだかららクラス分けなんかはしないんだろう?……ということは、二万フェーリー×四十人で、八十万フェーリーだね」


わ、高っ!……事業をおこすのならそれくらいするかも知れないけれど……。黒板が二十万フェーリーだとして、この時点で百万フェーリーだよ……。


隣にいるジェニーが目を回している。

高いものね……。


…公爵家の割にケチだって……?いくら、私が公爵家の令嬢で、マーク家が公爵でも、お金は湯水のようにある訳じゃない。それに、そのお金は領民が払った税金もある訳で。一フォーリーだって無駄にはできない。


机と椅子か……どうにかならないかしら……。


「高いですねぇ……あ!机と椅子を無くして、書く活動をあまりしないでグループワーク的な活動を増やすのはどうですか?アクティブ・ラーニングって感じで」


私が言うが、アンディ様は、少し微妙そうな顔をする。


「確かに、そう言う感じの学びはとても大事だけれど、最初に子供たちが学ぶのは文字や数字だよ?机がなければ書く練習なんかはできないんじゃないかな?グループワークをするにも、文字がなければ始まらないと思う。文字に慣れてきたら、机や椅子をなくして話す活動を増やしてもいいかもしれないけれど…」


そうかー、アクティブラーニングは、まだ少し早いかぁ…。机と椅子は、必要か……。


「あ、あの、ひとついいですか!」


放心状態から復活したらしいジェニーがそう、手を挙げつつ言った。


「何かな、ジェニファーさん」


マーク公爵が問いかけると、ジェニーは、少し深呼吸して、心を落ち着かせると、


「ノートやペンの代わりに、ミニ黒板のようなものと石灰岩のようなものを使うのはどうでしょうか?そうすれば、何回も書いて消すことが出来ますから、ノート代がかかりません」


「なるほど…」


確かに小さな黒板とチョークのようなもので学習している光景はよく見る。でも、それじゃ、学習内容が記録されないから後で見返すことができないんじゃないかな…。文字の学習の間はそれで大丈夫かもしれないけれど。


「文字の学習の間はそれで大丈夫だね」


ジェニーの言葉を受けて、わたしが思っていたことと同じことを向かいのマーク公爵が言った。


「では、文字学習の間はそれでいって、また内容が変われば考える、という感じでいいですか?」


私が確認するように言うと、3人はこくんと頷いてみせた。


その後、その他の経費について話し合ってから、次に『教育課程』へと話を移す。


『教育課程』とは、簡単に言えば、学校でどのように学習を進めるかや目指す生徒の姿などを書いておく、つまりは、学校全体の教育計画のことだ。日本では、文部科学大臣が定めた学習指導要領を元に学校ごとに作ることが決まっている。


まあ、ここでは、学習指導要領もないし、目指す生徒の姿なんかもまだきっちりとかけるわけじゃないから、どう学習を進めるかについて書いているのだが。


マーク公爵は、私たちが立てた計画をみて顔をほころばせた。


「この指導計画はよく出来ていると思うよ」


「本当ですか!良かったです」


「だけど、僕は素人だから、よくわからない部分も多い」


「それは、私たちもです……」


マーク公爵の言葉に私が言うと、ジェニーとアンディ様も頷く。前世で学んだのは学んだが、座学と実際に計画を立てるのでは訳が違う。わからない部分も多く、計画時は3人で悩みに悩んだ。


「そこでなんだが、こういうことは現職の先生に聞いた方がいいと思って、あるアドバイザーを呼んでおいた」


「アドバイザー、ですか?」


そう私が聞き返すと、マーク公爵は頷き、そして、それから、そばにいた執事に向かって合図を送ると、執事は返事をしてから部屋を出ていく。どうやら、そのアドバイザーを呼びにいったらしい。


執事が出て言ってから待つこと数分。再度、ガチャりとドアが開く。


入ってきたのは先程の執事と、水色で腰くらいまである長めの髪を後ろにひとつでゆるく縛り、琥珀色の瞳を持つ美形の男性が入ってきた。……男性?男性よね?いや、もしかしたら女性??と思うくらいの美形だ。


その美形さんは、部屋に入ってくると、その端正な顔をふにゃりと緩めて、人懐っこい笑顔で笑った。


「初めまーしてー!僕は、ウィリアム・ルキアだよん!ディちゃんの家庭教師をしてまーす!よろしくお願いします!気軽に、ウィルって呼んでねー!」


そして、その最初の雰囲気とはおよそ似合わぬ緩さで挨拶をする。でも、わかったことがある。声の低さから、この方は男性だ。


そして、ディちゃんって、誰?

そう思っていたら、隣にいたアンディ様が、珍しく顔を顰める。


「ウィル先生、その呼び方、やめてって言っていますよね?」


「えー、素敵な渾名じゃないー?僕は気に入っているんだけどなぁ……」


「ウィル先生がそう呼ぶせいで、たまにみんなからディ様って呼ばれるんですけど!」


迷惑そうに顔を顰めるアンディ様……。本当に珍しい。いつも穏やかな笑顔をしているから……。そして、それを見てもへこたれないウィル先生。強い……。


そして、彼がアンディ様の家庭教師であり、今回のアドバイザーであることがわかった。


そんなふたりを見計らってか、マーク公爵が苦笑をしながら、


「まあまあ、アンディもウィリアムもそのへんにして、計画の話をしよう」


と言った。


なんだかまだ不服そうなアンディ様だったが、その後は、ウィル先生も交えて教育課程についての案を詰めていく。


主に最初は文字や数字の学習からはいること。そして、先程の話し合いから、ここではノートとペンではなくミニ黒板とミニ石灰石__チョークになるかもしれないが、チョークは整形されている分、値が張るかもしれないので悩み中__を使うことが決まっている。


それから、その次は算術。最低限の足し算引き算掛け算割り算はマスターしてもらう。読み書きに加えて計算は生きていく上で大切になってくるだろうから。


その後は学びたい人には更に進んだ勉強を教えること。段々と歴史や書類の書き方__多分現代で言ったらワープロの使い方、ワードの使い方になるんだろうけれど、この時代にパソコンなるものは存在しない為、手書き書類だ__や、植物の観察などの理科などだ。


細かな内容はウィル先生に助言をしてもらいつつ、まとめた。


「次は、教材についてだねん」


そう、ウィル先生が言い、次は教材作りについての話に移ることになった。





読んで下さってありがとうございます!

新たな人物が出てきたのでご紹介!!!


✤人物しょーかいのこーなー✤

✾ウィリアム・ルキア

愛称、ウィル。アンディ様の現職家庭教師。少しお調子者な雰囲気が垣間見得る。アンディをディ様と呼ぶ。レベッカの学校づくりのアドバイザー。


このウィルさんもねー、色々あるんですよー!でも、まだ秘密です(。・ω・。)←


これからもよろしくお願いします!


そして、本日の活動報告『更新日記( *¯ ꒳ ¯*) 4』は、私、花川ではなく、レベッカが担当します!!


どうぞ、読んでやって下さいませ!!



【次回の更新は3月19日予定!】

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