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20話★夢への第2歩目

記念すべき(?)20話目です!!よろしくお願いします!

2日後。

マーク公爵との約束の日である。


今日の予定としては、まず、馬車にてジェニーを迎えに行き、それからジェニーと共にマーク家へ行く、という手筈である。


ついで、ではあるが、マーク公爵に会ったら、手紙の件も聞いてみよう、と密かに思っている。ルルーの好意はとても本当に嬉しいが、マーク公爵の迷惑になっていないだろうか……。


そんなことを思いながら、私はリリと共に馬車に乗り、ジェニーの家へと向かう。


少し馬車に揺られると、赤い屋根の家の前にグレーの髪の女の子の姿。ジェニーである。馬車が、きちりと寸分違わずジェニーの前で止まった。


「おはよう、ジェニー!」


窓からそっと顔を覗かせ、ジェニーに挨拶をすると、ジェニーは、すっと礼をして、


「おはようございます、レベッカ様」


それから、花が綻ぶように笑った。そんなジェニーにこちらも優しい気持ちになる。


……天使だ。


ジェニーにしても、アンディ様にしても笑顔が本当に優しくて魅力的だ。生まれ持ったものだろう。悪役令嬢である私とは違うねぇ、なんて思う。


「リリ、ドアを開けてくれる?」


そんなことを思いながら、リリにそうお願いする。すると、リリははい、と了承の言葉を返してから、綺麗な洗練された所作で馬車のドアを開けてくれる。


「さ、どうぞ、入って!」


馬車に乗るのに慣れていないからか、少し慌てたような素振りのジェニーにそう声をかける。すると、ジェニーは、


「ありがとうございます」


と少し緊張したような顔をしながら馬車へと入ってきた。そして、リリに勧められるままリリの隣、私の向かいの席へと腰掛けた。


「ジェニー、大丈夫?」


リリが馬車のドアを閉め、馬車が発進したのを見届けてから、そう、ジェニーに声をかけると、ジェニーは緊張した面持ちのまま、


「馬車に乗ったことがなくて……緊張します……」


と少しはにかむようにして言った。


うん、天使。


短く簡潔に、そして1番今の状況を端的に表している言葉を心の中で呟く。


「そんなに緊張しなくても、馬車は怖いものじゃないわよ?」


「それは分かっているのですが……」


「私が、とって食うように見えるかしら?」


私が少しおどけたように、少なくとも怖くは見えないように言った。こういうセリフは悪役令嬢が本気で言ったらまじでシャレにならないからね。


だって、言葉だけとったら、いかにも今から悪事働きます的な悪役令嬢っぽくない?主人公を呼び出して、怯えている姿に言いそう。


主人公が、表では「見えません」って言っておきながら、心の中で頭を振り切れんばかりに縦に振るのよ。


知ってるんだからね。……知らないけれど。


そんな妄想をしていると、堪えきれなかったのか、ぷっと笑うジェニーの声が聞こえた。


「とって食うなんて、レベッカ様に最も似合わない言葉ですね。レベッカ様はお優しい人ですから」


ジェニーの言葉に、レベッカは驚く。


私、優しいかしら?優しいって、私に一番似合わない言葉じゃないかしら?だって、悪役令嬢よ?


ジェニーこそ優しさの塊みたいな人なのに。


そんな心の内を知ってか知らずか、ジェニーは、


「笑ったら、緊張、どっか行っちゃいました。ありがとうございます」


とまたはにかむように笑った。今度は緊張なんて微塵も感じさせないいつも通りの笑顔だ。


とりあえず、緊張を緩和出来たなら良かったわ。


「それなら、良かったわ!」


★★


しばらく行くと、マーク公爵家が見えてくる。家の前には、以前と同じように、マーク公爵家執事のレイがいた。


「お待ちしておりました、アッカリー様、オルティス様」


私たちが馬車から降りると、レイはそう言いながら、洗練された所作で頭を下げる。


「レイ、ありがとう!こちらが、ジェニファー・オルティスさんよ」


「いえいえ、ようこそお越しくださいました。オルティス様も、お初にお目にかかります、私は、マーク公爵家の執事、レイと申します」


私に挨拶をした後、私の後ろから降りてきていたジェニーに向かって挨拶をする。レイに挨拶をされ、ジェニーは慌てた様子でぺこりと頭を下げた。


「お、お初にお目にかかります、私は、ジェニファー・オルティスです!オルティス様なんて恐れ多いです、ジェニファーとお呼びください!」


あわあわとしながら挨拶をするジェニー。そんなジェニーを優しい笑顔で、


「丁寧な挨拶、ありがとうございます。ですが、旦那様のお客様であるのにはお変わりありませんので……」


と返している。


「じゃあ、せ、せめて、様はやめてください!」


「では、オルティスさん、と呼ばせていただきますね」


そんなやり取りを聞きながら、レイに嫌悪感がないことに、少し安心する。


レイは、身分で人を差別するような人ではないのは分かっていたが、それでも、貴族やそれに仕える人達には偏った考え方の人もいるわけで…。本当のところ、少し怖かったのだ。


「では、旦那様のもとへご案内させていただきますね」


そう、レイが言い、屋敷の中へと入る。すると、玄関でアンディ様が出迎えてくれた。ふわりと優しく微笑んで、こちらに向かってくる。


「よく来たね、レベッカ、ジェニファー。いらっしゃい」


「アンディ様!お出迎え、恐れ入ります」


私が言うと、アンディ様は大丈夫だ、と言うように首を横に振る。ほんと、アンディ様はお優しい方だなぁ、と思う。だって、いつ来るかなんて正確なことは分からない私たちを待っていてくれるなんて。


そんなことを考えている私の後ろから、ひょこっと顔を出したジェニーはアンディ様に挨拶をする。


「こんにちは……。お邪魔しています……」


「うん、いらっしゃい」


私の後ろから顔を覗かせ少し緊張したように言うジェニーと、優しい笑顔を浮かべるアンディ様……うん、なんか微笑ましいわ。


「じゃあ、行こっか。父上は書斎だよ」


アンディ様の言葉に私とジェニーが頷くと、続いてレイの朗らかな声が聞こえた。


「では、わたくしは、ここで失礼させて頂きます」


いつもの如くスっと洗練された一礼をしている。


「うん、ありがとう、レイ」


そう、アンディ様が返す。私とジェニーもお礼を伝えると、


「いえ、当然のことですから」


レイはいつもの様に穏やかな笑顔のまま、そう返事をすると、綺麗な所作のまま去っていった。ほんと、執事の鑑って感じの人だわ、とレベッカは思う。


その後、私とジェニー、そして、私の付き添いで来てくれているリリはアンディ様に連れられて、アンディ様のお父様にあたるマーク公爵の書斎へと向かった。


書斎の前へ着くと、この前来た時と変わらぬ重厚な扉にまた、緊張が身体を支配する。2回目でもその緊張には慣れない。


なんと言っても、これから相対するのは、お世話になっているアンディ様のお父様、ではない。一王国の敏腕公爵様だ。


知り合いの娘だからという甘さはないはず。仕事として、上司として接するだろう。国の、そして領地のためとなれば厳しい物言いもする。


まあ、知り合いだからという甘さはこちらから願い下げだが。本気で向き合わなければ良いものはできないもの。


ちょっと怖いけれど、夢を叶えるためだ。全力でぶつかろう。


だって、目指す先はきっと同じ。


"この国を、そして領民の暮らしを豊かにしたい。"


それだけだもの。


それに……


そっと両隣を見る。


右側には、少し緊張したような面持ちのジェニー。


左側には、いつもの様に優しい笑顔を浮かべたアンディ様。


1人じゃないもの。


ふう、と1つ深呼吸をして、それから、きゅと手を握って、ドアをノックする。


「どうぞ」


声が聞こえた。


さあ、夢への第2歩目だ!


読んでいただき、ありがとうございます!

そう、そこのあなたです!画面の向こうのあなた!

読んでくださる方のおかげで書こうと思えます!!

ありがとうございます!!


ブックマーク、評価、感想、お待ちしておりますーー!


✤次回予告的な何か✤

マーク公爵家についたレベッカ。

ついにマーク公爵と直接対決!?

さて、話し合いは上手くいくのか?


【次回の更新は、3月17日です!】


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