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19話★突然の訪問者

絶賛更新祭り中……!

「伝書鳩だわ」


この世界では伝書鳩も、よく使われる、つまりポピュラーな連絡手段だ。鳩の足に手紙を結んだり、背中に小さな荷物を乗せて、目的地へ飛ばす、あれだ。


その言葉を聞いたリリはそっと伝書鳩の足についている銀の筒を取る。その中に手紙が入っているのだ。


手紙を受け取ると、伝書鳩はリリの手から離れ、窓のサンへと止まり、大人しくしている。どうやら、返事を待っているらしい。


「誰からかしら?」


「コンバンハ!マークコウシャク オテガミ。ウケトル レベッカ。レベッカ ハ キミ?」


私の問いかけると、あろうことか目の前の白い鳥がそう声を発した。カタコトであるがきちんと言葉を発している。


その声に驚き、ポカーンと、間の抜けた顔で鳥を見つめる。リリの顔を見ると、私と同じく驚愕した顔をしていた。


「え、今、あなたが話したの?」


私が問いかけると、その鳥は、小さな頭をコクンと縦に振った。こちらの言葉も理解しているらしい。


驚いている場合じゃないと思い、立て直す。そう言えば、名前を聞かれたんだったわね、と直前の会話を思い出す。


令嬢たるものいかなる時でも冷静であらねばならない。多少驚いても顔に出してはいけない……いや、顔には出ていたかもしれないけれど……。


まあ、適応は早い方なのだ。


私は、スっと小さく礼をすると、


「ええ、私がレベッカです、レベッカ・アッカリー」


と名乗った。


すると、鳥も、


「ワガナ ハ ルルー。オテガミ ハコブ シゴト」


と綺麗に会釈しつつ言った。


この鳥さん、ただの伝書鳩じゃないみたい。だって、伝書鳩は、意思を持ったり言葉を話したりしないもの。本来は、鳩の巣に帰る習性を利用して手紙を送るものなのだ。


動物が話すとか、ファンタジーの世界か!何でもありか!


とそこまで思ってから、……いや、待てよと思う。


ここ、そーいえば、ファンタジーの世界だ……。


この国では魔法もあるんだもん。アンディ様も魔法を使っていたし。


魔法があるのなら、話す鳥がいてもおかしくないか。


そして、この鳥さん、名前をルルーというらしい。


そんなことを思いながら白い羽が美しい鳥さんを見つめる。


私の視線に気がついたらしいルルーは、


「レベッカ テガミ ヨンデネ ヨロシク」


陽気そうにそう言った。


すると、驚きから復活していたらしいリリは、銀の筒から手紙を取り出し、私に手渡してくれた。


私は受け取ると、内容に目を通す。手紙には、挨拶と、2日後に学校づくりの話し合いをしたいのだが、どうだろうか?といった事が書かれていた。


それから、ジェニーの元にも手紙を送っている、ということも書かれている。


「学校づくりについてだわ。2日後ね」


内容を一通り読んだあと、目の前にあった便箋を使って返事を書き始める。先程まで両親に手紙を書いていたから、手の届く位置に便箋があったのだ。


便箋に向かい、挨拶、そして、手紙拝受と感謝の旨を手紙にしたためる。もちろん、2日後は暇なので、というか、2日後も暇なので、返事はイエスである。


その後、届いた手紙が入っていた銀色の筒に書いた返事を入れると、ルルーがこちらにやってくる。


「アシ ツケル ココ」


ルルーは私が座っている机までやってくると、クチバシで器用に自らの足を指す。そのルルーの姿が可愛くて、私は微笑ましくなりながらそっと筒をその足に括りつけた。


「お願いね、ルルー」


「マカセテ チョーダイ!」


私の言葉にルルーは胸を張って返事をした。


そして、飛び立とうとしたと思ったら、ピタリと足を止める。


何事かと思ったら、


「コレモ トドケル?」


ルルーは机の上に置いたままになっていた、両親への手紙を見てそう聞いた。


「あ、それは違うの」


私が言うと、


「デモ カタチ テガミ」


不思議そうな顔をするルルー。ルルーにとって手紙は届けるもの、である。手紙であれば何でも届ける役目を任されるルルーにとって、それは普通の反応だった。


まあ、たしかにこれも、手紙ではあるけれど……。


「ええ、手紙ではあるのだけれど、公爵宛じゃないの」


そう諭すように言うと、ルルーは短く、


「ダレアテ?」


と問いかけた。


「……家族宛なの」


まだ、届け方も決まってなくて、届く保証はないけれど。そう思うと、少し声が暗くなってしまった。


家族の状態ひとつ知るのに、家族に自分のこと少し知らせるのに、こんなに大変だなんて……。


ルルーは、私の方をじっと見つめる。つぶらな瞳に自分の姿が写って見えた。その自分の姿があまりにも悲しそうで……。


あ、いけないわ!暗い顔してちゃだめね!


「ダイジョウブカ?」


ルルーは首を少し傾けて心配そうにそう聞く。


ほら、ルルーにも心配かけちゃった……。


「ええ、大丈夫よ。ありがとう」


私がそう言うと、少し考える素振りを見せてから、突然、


「ルルー トドケル!」


とルルーが少し大きな声で言った。それから、目にも止まらぬ早業で、サッと机にあった手紙をクチバシで掴んで持ち上げると、ヒョイっとそのまま自らの指の間へと挟む。


「え、ルルー!?」


慌てて声を上げる私に、


「ダイジョウブ ルルー レベッカノテガミ チャント トドケル アンシンネ」


止める間もなく、その伝書鳩は来た時と同じように白い羽を羽ばたかせて窓から外へ出て行ったのだった。


「ええー!?」


思わず令嬢らしからぬ声が出たのは、仕方ない。……うん、仕方ないことなのだ。

✤人物紹介のこーなー✤

✿ルルー

マーク公爵の伝書鳩。鳩なのに白い羽なのが特徴的。カタコトではあるが言葉を話すことができる。



✤次回予告的な何か✤

ルルーが持って行ってしまった、家族への手紙。手紙はちゃんと届くのか!?そして、マーク公爵との話し合いは上手くいくのか!?


【次回の更新は、3月16日予定!】

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