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134話★捜索

アドニス様がいない!となり、辺りは騒然となった。特にフラーウム嬢は取り乱している。「どうしましょう!どうしましょう!」とあたふたして教室内をあちらへ行ったりこちらへ行ったりしている。


他の子達もザワザワしているので、とりあえず落ち着かせなればと思い、一旦席に座らせた。そして、落ち着くまで時間をとり、待つ。


「ちょっと深呼吸しようかー。はい、息を〜吐いて〜、吐いて〜、もっと吐いて〜!はい、吸って!」


合間にそう言うと、みんな私の言葉に合わせてくれる。素直な子達である。そうして、穏やかな気持ちを取り戻してもらった。そうすると、少しずつザワザワした雰囲気がおさまってきた。


その様子を見計らって、何か見たり聞いたりして知っている子が居ないか確認をする。


「アドニス様のこと、なにか知ってる子はいる?」


「アドニス様、10分前くらいに外に出ていったよ。聞いたら御手洗だって……」


私の問いかけに、遠慮がちにフレディが手を挙げてそう言った。御手洗か……確かにそれなら外に出ても不思議ではない。だが、10分という時間は気になるかも。


「そっか、ありがとう」


そう言って、ルカを見る。流石に男の子のトイレにはいけないからね。アンディ様にはフラーウム嬢についていて貰いたいし。目で合図したのが伝わったのか、ルカは心得たようにひとつ頷く。


「わかった、行ってくる」


「ありがとう」


さて、この後はどうするか。もしいてもいなくてもとりあえず生徒のみんなは帰した方がいいよね。あまり長いこと引き止めれば保護者の方も心配するだろうし。


御手洗にいなかった場合探すから、本当は人手が多い方がいいけれど、暗くなってきたら子どもたちには危険だもの。


アンディ様とフラーウム嬢、ジェニーを教室の端の方に呼び寄せる。これからのことを打ち合わせするべきだと思ったのだ。


フラーウム嬢は心配で打ち合わせどころじゃないかもしれないけれど、この場にいてもらった方がいいと思い、打ち合わせに呼んだ。


「この後の流れを打ち合わせしましょう。みんなのことはこのまま帰した方がいいと思うの。このままだと暗くなるし」


「そうだね」


私の言葉にアンディ様が頷き、賛成する。生徒も心配しているから説得するのに心が折れそうだが。


「もしもの場合、例えば誘拐とか……に備えて街の警備隊に連絡をしておきましょう」


ジェニーがそう言い、賛成した。


少しすると、ルカが帰ってくる。御手洗にアドニス様はいなかったらしく、小さく首を横に振った。フラーウム嬢がフラフラと力なく倒れる。どうやら意識を失ったようである。


フラーウム嬢も心配ではあるが、アドニス様が心配だ。


「アドニス様を探しましょう。フラーウム嬢は落ち着くまでここにいてもらいましょう。アンディ様、付いていてあげてください」


私はアンディ様の方を見ながらそう言う。


「僕も探させてくれないか」


アンディ様が言うが、私は首を横に振った。


心がチクリとしたが、それどころではない。弟君がいなくて不安なフラーウム嬢に付くならきっとアンディ様が適任である。


これが最適解なはず。アンディ様の力がかりられないのは痛手だけれど。


「ジェニーとウィル先生は子どもたちをお願い。できるだけ送り届けてあげて」


もし誘拐ならほかの子供たちも危ないかもしれないから。


「わかりました。送り届けてからアドニス様捜索に加わりますね」


「それから、ルカはマーク公爵様のところに行って事情を説明して。それから警備隊を呼んでくれる?」


「わかった。んで、あんたは?」


「そんなの、探しに行くに決まってるでしょう」


そんなの決まっているではないか。他になにかある?とそう言う。きっと私は不思議そうな顔をしている事だろう。


「一人でか?!危ないだろう」


「大丈夫よ、まだ夕暮れだし!それに、ルルーを連れていくわ」


言うが早いか私は動き始める。口笛を吹くと、伝書鳩のルルーがやってきた。


「レベッカ ルルー ヨンダ?」


「ええ、人探しのお手伝いをして欲しいの。できるかしら?」


「デキル。 ルルー カシコイ トリ!」


ルルーが頷いたので、私もひとつ頷き、校舎の外へ出た。


「レベッカっ!」

「おい!レベッカ様!」


「あとは、よろしくね!」


後ろからアンディ様とルカの声が聞こえたが、私は気にせず走り出した。



探すといっても、どこから探せばいいものか。人さらいなら人目の少ないところとかかしら。


もう時期警備隊の人も合流するだろうから人手も増えるし、とりあえず探せるところから探していこう。


そう思いつつ歩いていると、前方の方に森が出てきた。連れ去られてしまっていたらどうか分からないけれど、そんなに時間が経っていないからいるならこういうところではないかしら。


「……いるならこういう森の中よね……」


「モリニ ハイル……?」


「うん」


意を決して森の中へと入っていく。木々が生い茂っているため、光が少ししか入ってこない。夕暮れだからまだ明るいけれど、夜になったらきっと真っ暗になってしまうだろう。


ルルーがいてくれて良かった。1人はやはり怖かっただろう。


「ルルーはこの森に入ったことはある?」


「ナイ。 デモ アブナク ナイヨ」


「どうしてわかるの?」


「ルルー テガミ トドケル トキ キケン ワカル」


え、この国の伝書鳩はそんな機能が備わっているの!?すごい……。危機察知能力があるんだね。それで危険を避けて配達しているらしい。


「凄いね!」


私が褒めると、ルルーは得意げな顔をする。


「エッヘン ルルー ヒトノケハイ スコシナラ カンジラレル」


人の気配?つまり、人がいるかどうか感じられるってこと?!それも凄いなぁ。


「この辺には人の気配はある?」


「イマノトコロハ ナイ!デモ ルルー チカクナイト ワカラナイ」


じゃあアドニス様はここにはいないのだろうか。そう思いつつもとりあえず森の中を捜索してみることにする。


すると、木々がないところに出た。先程までの生い茂った木々がなくなり、開けている。不審に思いながらも少し歩くと神殿の門のようなものが見えてきた。少し古びた門で、所々汚れが目立つ。


少し暗くなってきたのも相まってどこか不気味である。入らない方がいいだろうか。そう思ったが、ルルーがピクリと何かに反応する。


「カンジル……コノナカニ ダレカ イル ヒトリ」

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