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126話★ツンデレお嬢様

フラーウム嬢がカチカチと固まっている前で、レーベはよく分かっていないような、純粋な気持ちを宿した瞳でフラーウム嬢を見つめる。


「………べ、別に私は一緒にしたい訳ではありませんわ……」


フラーウム嬢が一瞬グッとなにかに耐えたような気がした後、そう言った。


ほらー、流石にフラーウム嬢がこんな庶民的なことを手伝いたいと思うわけないって。サンフラワー学園でも文化祭はあるらしいし。きっともっとレベルの高いことをしてるだろうから。


「……ですが!皆様がどーしても、どーしてもと仰るのでしたら、手伝うのも吝かではありませんわ」


一瞬、間があいたあと、フラーウム嬢は話を続ける。よく見ると、フラーウム嬢の頬は赤く染っている。


ん?これは?手伝いたいってことなのか?そうじゃないのか??


「うん、一緒にしたい!一緒にしよ〜!!」


私が戸惑っているうちに、レーベはニコニコと優しい笑顔を浮かべてそう誘っている。フラーウム嬢は呆れたような顔をしてみせているが、どこか満更でもなさそうな気もする。


「仕方ないですわー!」


むふふんっと息巻くフラーウム嬢は、意気揚々とこちらにやってきた。


こう言うのってなんて言うんだっけ?

……そう、あれだ!ツンデレだ!!


言ってみて妙に納得してしまった。この人は、よく前世のアニメキャラとかでいる、ツンデレ属性のお嬢様だ。初対面の時は冷たい印象だったけれど、こんな人だったんだ……。


レーベとともにフラーウム嬢は私の前までやってくる。それから、ギンっとこちらを睨んだ。


「レベッカ嬢、いいですわよね!?」


「ええ、大丈夫ですよ」


ツンツンしているが、ちゃんと許可は取ってくれるらしい。そういうところはしっかりしているのだと思った。


私が許可を出すと、ふんっとそっぽを向きながら作品の前まで行くと、レーベから糊とそれを塗るハケ、布を受け取る。その顔はどこか嬉しそうである。やる気満々であるような気がしないでも無い。


「わたくしが平民にまじって、こんなことをして差し上げるのよ、感謝しなさいっ!」


「ありがとう、アカシア」


「い、い、いえ!アンディ様!!!」


アンディ様に対しては甘々デレデレで、普段はちょっと怖いが、本当はツンデレ。ややこしい性格だな。


周りにいる生徒の目がなんだか生暖かい気がするよ……。





それから、フラーウム嬢も参加して、作品づくりが再開した。生徒達はフラーウム嬢には近寄り難いのか、少し遠巻きに見ている。アドニス様でさえ、近寄る様子は見られない。


それぞれで作業をしている。だが、レーベはフラーウム嬢にも話しかけている。私は話しかけたら睨まれるから、話しかけない方がいいらしい。


とりあえず、フラーウム嬢のことは置いておいて、私も続きをしよう。


「レベッカ先生!ここ、何色?あたし、これとこれで迷ってる!」


作業を続けていると、エミリーがやってくる。そして、布を2つ持ってこちらに見せる。その手には赤い布が2枚握られていた。そして、エミリーが言う、「ここ」とは太陽の神の服の部分である。


元になった本を見てみる。たしかに色の塩梅が難しい。赤のような茶色のような……。そして、エミリーが持っている布のどちらとも違うような……。


うーん、と悩んでいると、そばに居たリアムがこちらにやってきた。私とエミリーの間くらいにずいっとやってきたと思うと、少し悩んで、それからバッと勢いよく布の山に行き、1枚の布を引っ張り出した。それから、また勢いよくこちらに戻ってくる。


「ここは赤ですが、少し茶色を足した色だと思います。この布が適当でしょう」


リアムが布を見せながら言う。勢いに驚いた。だが、リアム、すごい!!彼はとても詳しくものを見ることが出来るのだわ。


エミリーもリアムの距離の近さに少し驚いたようであったが、リアムが持ってきた布を受け取り、元になった本と見比べる。そしてリアムから布を嬉しそうに受け取った。


「ありがとう」


「いえ……では」


リアムは用が済んだとばかりにくるりと踵を返して去っていった。取り残されたエミリーは少しポカンと呆気にとられた顔をしていた。


「見つかって良かったね」


「うん。これ、貼ってくる!リアムー、ありがとう!!」


エミリーはリアムに再度声をかけると、作品づくりに戻って行った。


エミリーが戻ったのを見届けた後、私も作業に戻ろうと振り返ると、


「きゃっ!?」


目の前にフラーウム嬢。仏頂面というおまけ付き。


「人の顔を見て悲鳴をあげるだなんて失礼じゃありませんこと?」


驚いた私に、フラーウム嬢はムムっと眉を釣り上げてそう言った。


ツンツンも追加で!だって、振り返って目の前に人がいたら驚くよね?驚くくない?え、驚かないもの??


「それで、どうされました?」


「ここの色はどれって聞いていますわ!」


その喧嘩口調のまま、そう言われた。


いや、今初めて言われましたよ?何故「聞いていなかっただろう」、みたいなテンションなんでしょう!?私が聴き逃したのでしょうか?


「申し訳ありません、聴き逃していたみたいですわ」


フラーウム嬢に釣られて、久しぶりに令嬢口調になった。先生をしていると、どうしてもそんな丁寧すぎる言葉は使わなくなってしまうのよね。子どもたちと話すのにいちいち「ですわ」とか言ってられないわ。


「聞いてなくて当たり前ですわ!今言いましたもの!」


フラーウム嬢はむふっと何故か自信満々にそう言った。うん……。どういうこと?何故そんなに自信満々なの?


「……あ、はい」


「それで、何色ですの!?」


「こちらはこの赤がいいと思いますわ。もっと詳しいことをお聞きになられたければ、リアム……あの黒髪の男の子ですわ、に尋ねてみるといいと思いますわ」


フラーウム嬢に急かされて本と布を見比べる。そして、1枚の布をフラーウム嬢へと見せた。判別能力はリアムには劣ると思うが、ある程度似た色なのではないのだろうか。


私が返事をすると、フラーウム嬢は奪い取らんばかりの勢いで私の手から布を取る。その手は糊ですこし汚れていて、パリパリになってしまっている。それだけ一生懸命にやってくれているということだ。


「お礼は言いたくありませんけれど、ちゃんと言いますわ!!ありがとうございます」


ツンケンとした態度であるが、礼儀正しくお礼を言ってから去っていくフラーウム嬢。高圧的だが、何故か嫌な気持ちにはならない。不思議な人である。

ツンデレ属性って可愛いですよね。

どこか憎めない……。

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