123話★生徒議会
教員の話し合いのあと、一応領地の事なのでマーク公爵に確認を取った。すると、二つ返事で了承してくれたので、文化祭を行うことが決まった。
それから数日の後、私たち教員陣は午前午後それぞれの学級委員を呼び出していた。午前はリルとカイト、午後はエミリーとフレディである。
午後の学級委員のフレディは、街のパン屋の息子だ。明るく爽やかな男の子で、前世のアニメで言ったら王子様キャラと言われそうな子である。
そんなふうに集まって話し合いをするのは初めてなので、カイトは緊張しているようにみえる。フレディは爽やかな笑顔を浮かべている。ちなみにエミリーとリルはいつも通りである。
建国祭まであと2ヶ月。それまでに話をまとめて、知らせて、練習したり制作したりしなければならない。それまでにまとまるといいな。
集まって初めに口を開いたのはエミリーだった。
「初めまして……!エミリーです!!」
エミリーが明るい笑顔でそう言った。
「僕はフレディ。よろしくね」
「……リルです……よろしくお願いいたします」
「か、カイトだ!よろしくお願いします」
フレディは明るい声で、リルはいつも通り冷静な声で、カイトは緊張を隠せないような声でそう言った。
自己紹介も終わったので、本格的に話を進めていく。まずは主旨説明をして、それから、役割分担だ。まとめる人がいないままどんどん意見を出すと、議論にならない。
係決めの時の話し合いの失敗もあるから、慎重にいかなければ。今日は人数が少ないから大丈夫だと思うけれど。
自分の意見を主張し、周りの意見をきき、上手な妥協点を探る。この能力はきっと将来にも役立つ。
私たち教員陣はできるなら見守りに回りたい。この子達がする演目なのだから、彼らの意見が尊重されるべきだ。
最初に、文化祭というものをすること、文化祭とはどんなものか、そして、今日は何をするか話し合うということを伝えたあと、
「まずは話を進める人を決めよう!議長さんだよ。それから、話したことを黒板にメモする書記さんも」
わたしは役割分担をするように促す。
「じゃあ、僕が議長を務めるよ」
誰も手を挙げなかったため、周りを見回したフレディがスっと手を挙げてくれた。その後、書記がリルに決まった。リルは字が上手だから適任だ。
「何か意見がある人はいますか?僕はさっき、レベッカ先生が説明してくれた中なら、作品づくりがいいなと思っているよ。みんなで1つの作品を作るって楽しそうだし、全員が集まらなくても出来ると思う」
フレディが早速話を回してくれる。そして、自分の意見も言ってくれた。リルはそれを聞いて、黒板に『作品づくり』と書き記した。
「はいはい!あたしは劇がいい!楽しそう!!あたし、劇なんか見たことないけどさ、物語の人になれるの面白そう!」
続いてエミリーがそう言う。リルが『劇』と書く。書き終わるのを待って、次はカイトが意見を出した。
「俺は、合唱とやらが楽しそうだなと思ったぞ。みんなで歌うなんてことしたことないからしてみたい。……リルは?」
カイトがリルをちらりと見てそう言った。リルは黒板に書く手を止めて、ズバリと言い放つ。
「私は……作品がいいですね。あまり目立ちたくありませんから」
「みなさんの意見が出ましたね。そして、バラバラですね……」
フレディが黒板に書かれた『作品づくり』『劇』『合唱』の文字を見ながらそう言った。それから、ううんと悩む。
「ねぇ、思ったんだけど、まぜちゃだめかな??劇と作品と合唱」
エミリーが言う。作品づくりは衣装とかそういったものを指すのだろう。そして、劇の中で歌う……ミュージカルみたいなものだろうか?
「ごめん、反対するようで申し訳ないんだけど、それだと、みんなが集まって練習しなければならないと思う。でも、仕事の都合とかあるだろうし……人数が多ければ多いほど都合を合わせるのは難しいと思う」
フレディ眉を下げて言った。
なるほど、確かに。気軽に午前午後合同って言っちゃったけれど、みんなそれぞれ都合のつく時間が違うから、授業を午前午後に分けているんだもんね。浅慮だった。
「ううん、反対意見は出していいと思う!……確かに難しいかー。それに、リルちゃんみたいに目立ちたくないって子もいるかもだし」
フレディの言葉に、エミリーが返す。そしてまた、ううんと悩む。すると、カイトがパッと顔をあげる。
「なぁ、ならさ、やりたい人で集まってやりゃいいんじゃないか?作品作りは全員がする。でも、劇とかしたい人は自分たちでグループを作ってやる」
なるほど、有志という形をとるのか。こちらからは何一つヒントを与えていない。この子達の考えは無限だなぁと関心する。隣にいるジェニーが少し涙ぐんでいる気がする。弟の成長に関心しているのかも。
最終的にカイトの案が採用された。そして、テーマは次の話題へ。
「なんの作品を作る?」
フレディの問いかけにこたえたのは、先程まであまり話していなかったリルだった。
「はい、あの……それぞれのクラスで聞いてみるのはどうでしょうか?材料は用意できるものとできないものがありますから、そこは調整しなければなりませんが、いい意見があれば採用すればいいと思います。どうでしょうか?」
「いいね!リルちゃん!いいと思う!」
エミリーが1番に賛成し、他のみんなもうんうんと頷く。そして、これも採用された。
そして、その話し合いの最後に、またリルから1つ案が出た。
「わたし、思ったのですが、今レイラさん、ワイアットさんとレーベが作っている本もそこに展示したらいいのではないでしょうか?」
リルが言ったのは、集まれる時に3人が集まって作っている手習い本のことである。リルのその意見も、みんなによって快諾された。
それから、午前と午後のクラスそれぞれに聞いたところ、服飾系の家の子達が多く上げていた、余った布の端切れを貼り付けて1枚の絵を完成させるのはどうか、ということになった。
モザイクアートのような形だ。
そして、元の絵はレーベとワイアットが担当することとなった。ジェニーの父が用意してくれた大きな紙に絵を描いてもらい、それに色を付ける形で布を貼ることになった。
そして、生徒たちは仕事でどうしても無理な日は来なくてもいいという条件づけで、集まれる日に集まって作業を進めることになった。
また、有志で何かしたい人は、先生に言いに来ることと、困ったら相談に来ることを約束した。