番外編♧まんざら悪くないなと思います(リル視点)
これはいつもの日常のある日の一コマ。今日も学校は平和です。そして、私、リルのすぐ傍には、カイトがいます。
特に一緒に何かをするわけではないですが、気がつくと傍にいることが多いのです。そして、私が本を読んでいると隣で勉強道具を広げていたり本を読んでいたりするのです。勉強している時は分からないことを私に聞くこともあります。
私はお話をするのはそんなに得意ではありませんので、何を話していいか分かりません。それ故、こちらから積極的にカイトに話しかけることはありませんが、カイトは退屈ではないのでしょうか。
そんな心配をしておりますが、今日も今日とてカイトが勉強しているノートから顔を上げてこちらを見ます。
「なぁ、リル」
「はい。なんでしょうか?」
そう聞きつつ、カイトの方に視線を向けると、カイトはウッと一瞬何かに心臓を掴まれたような声を上げました。
どうしたのでしょうか?
私は首を傾けつつカイトの言葉を待ちます。きっと私はとても怪訝そうな顔をしていると思います。カイトは視線をふいっとそらせました。心做しか顔が赤い気がします。この反応もカイトは、私のそばにいる時によくします。
この反応は書物で読んだものを総合すると、恋心に近いものだと書いておりましたが、でもカイトに限ってそんなことはないでしょう。私が相手ですし。
「ここを教えて欲しいんだけど」
「どこでしょう?」
「ここだ」
「これは法律の分野です」
カイトがこちらに見せたのは、私の好きな分野である法律の部分でした。もちろん学校では習っていません。
私は個人的に興味があるのと将来文官になるために自分で勉強しています。なので、他の科目は学校のみんなと一緒に勉強していっておりますが、法律だけは特化しています。
カイトは法律に興味があるとは聞いたことがなかったので法律について聞かれてとても驚きました。彼はどちらかと言えば世界のことについて興味があるはず。
なぜ?
「あー、俺は、その……さ、最近!……世界の法律にハマってて!?べ、勉強しているんだ!!!法律も面白いなーってな!!」
私がきっと不思議そうな顔をしていたのが分かったのでしょう、カイトは顔を赤らめたまましどろもどろになりながら言いました。目があちらこちらに泳いでいるのはなぜでしょう。
でも、なるほど。
確かに法律は面白いです。それに今回は商売に関するもの。きっと将来商家の跡を継ぐだろう彼には必要なものかもしれません。
納得した私はケイラー王国の法律を思い出しながら応えます。確かそれに関する条文は……。
「それならば、ケイラー王国法の38条を見てみるといいと思います」
「そうか!調べてみる!ありがとな!」
そう言うとカイトは隣にあった厚めの本を開いて調べる。それは学校の図書室には置いていなかったのですが、私がアンディ先生に要望したことにより置かれるようになったものでした。この国の法律は大抵頭に入っているけれど、今でもたまに読んでいます。
「すまん、リル。今度はこれなんだが」
「どれですか?」
「ここだ、これ」
「そちらはケイラー王国法の50条ですね 。こちらの方が詳しく載っています」
詳しく載っている他の本を差し出しながら紹介すると、カイトはニカッと白い歯を見せて笑って、私から本を受け取りました。
「ありがとう」
「いえ……」
返事をするとカイトは本を開き始め、私も読書に戻りました。
本来本を読む時間を邪魔されるのはとても不快な気持ちになるのです。でも、何故かカイトとの時間はまんざら、悪くないなと思います。
なぜでしょう?
謎は深まります。
初のリル視点です。
いつもカイトばかりだったので。
リルは天才型ではないですが、とても努力をする子です。
一生懸命に勉強して、夢を叶えようと頑張っています。




