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11話☆やってきた人は (アンディ様視点)

初めてのレベッカ以外の視点です!

少し短め……。

僕の名前は、アンディ・マーク。ケイラー王国の貴族、マーク公爵家の次男だ。


地位としても身分としても、周りから羨ましがられ、何の不安もない。


でも正直、この時の僕は、何にも真剣に取り組んだことはなかった。というよりは、何にも真剣になれなかった。


剣術や勉学、その他マナーや礼儀作法は、ある程度のことはそつなくできたし、次男であるから、公爵位を継ぐわけでもない。


兄であるアンドレア・マークも何でもできる人だから、天地がひっくり返っても僕が当主になるわけないし。


適度に色んなことをして、そつなくこなす。そして、いつかはこの公爵家のための駒となってどこかに婿入りするか爵位を賜るか……そんな人生だろうと思っていた。


まさか、ある令嬢がそんな僕を変えるなんてこの時の僕は考えてもみなかったんだ。


ある日、隣国から表向きは留学という体を取りながらも実際は国外追放を命じられたお嬢様がやってくると、父親であるマーク公爵に言われた。


どうやら父上とその子の父親が知り合いらしく、その縁でこちらに来るそうだ。


マーク家は代々ケイラー王国の外交担当を拝命しているが、アッカリー家も向こうの国、スミス王国で外交担当を拝命しているらしく、その縁で、父とその子の父親は古くから知り合いらしい。


正直に言うと、僕はそんな子が来るのは反対だったし、乗り気じゃなかった。なんなら迷惑だと思っていた。


だって、国外追放された令嬢なんて公爵家にとっていい所はひとつもない。単に面倒になったからって言う隣国の都合であり、押し付けじゃないか。


きっと、その子はわがまま放題で粗相をしたに違いない。


どんなわがまま令嬢が来るのだろうと思っていた当日、そのイメージはガラガラと音を立てて崩れ去った。


他でもない、その令嬢本人、この、目の前に立つ女の子によって。


「お初にお目にかかります。アッカリー公爵家が娘、レベッカ・アッカリーでございます。こちら、私のメイドのリリア・レイシー、そして、アンナ・カーリーです」


馬車から降りてくると、その少女はすっと淑女の礼、所謂カーテンシーをする。単純に美しいと思った。


美しく整えられた、長い茶色の髪が礼によってさらりと舞う。それすらも計算しているのか、と思うくらい綺麗だった。


そして、その声は凛としていて意志の強さを感じさせるもの。


顔を上げることによって見えた、空の色を映したような水色の瞳は理知的な光を灯していた。


その美麗な令嬢は、父から留学になっていることなどをを聞いても動揺すらせず、「そうですか」と、理由を心得たように頷いた。


そして、この聡明さは、王妃教育直伝らしい。王妃教育というのは、それほどまでに大変なものなのか、と感心した。


だが、そんな風に、美しい礼をし、聡明に応えたかと思えば、


「私、誰でも、身分関係なく通える学校をつくりたいです」


学校を作る!と突飛なことを思いついたり、


「きゃー凄い!こじんまりしていてとっても素敵!」


小屋を前にはしゃいだり、


「あら、ちゃんと公の場ではしますわ。これでも"令嬢の鑑"って言われてましてよ。ご心配なく」


僕のからかいにツンとして見せたり、


ルカの態度の理由が、


「私の顔が怖いとか……?」


真剣な顔で言うから思わず笑ってしまった。そんなことないし、さすがにそれだけで態度は変わらないよ。


彼女は表情がクルクル変わる。


不思議な令嬢だな、と言うのが彼女の印象だった。


そして、何よりも、内容は突飛ではあったが、彼女の夢を語る姿はかっこよかった。水色の聡明な瞳はキラキラ輝き、言葉の節々に強い意志が込められている。


「半分は私のエゴです。私がしたいから」


「でも、あとの半分は、学びたいって気持ちは誰にも邪魔されちゃいけないと思うからです」


学びたい人は誰でも、等しく学べる場を提供したい。誰もがしたいことをできる場所を、子どもたちの未来に賭けてあげられるような場所を、つくりたい。


そう言い切った彼女はとても素敵だと思った。


冷静に物事を考え判断する力と、夢を追う情熱を併せ持つ人。


そんな彼女を面白いと思う自分がそこにはいた。


そして、彼女の夢とやらを手伝うのも悪くない気がしたんだ。


君に賭けてみようって思えたんだ。


何にも真剣になれなかった僕が。






……そして、余談だが、もう1つ。


「…っ…ほんとですかっ!!」

「ありがとうございます!」


そう言って浮かべた花のような笑顔とぎゅっと握られた手。


その表情を見た瞬間、胸がキュッと痛くなって、そこから、ほわほわと温かくなった。


それは、自分の力で制御出来ないことで、胸に別の生き物が生きているような感じさえした。


温かくてどこか春の日差しのようでいて、でも、情熱的な夏の日差しのようでもあった。




この感情はなんなのだろうか。全くもってわからない。






……けれど










不思議と嫌じゃなかった。

読んで下さり、ありがとうございました!


いかがでしたでしょうか?


今回は少し?いや、だいぶ?短めでしたが……。


アンディ様視点、楽しんでいただけましたでしょうかね?


楽しんでいただければとても嬉しいです!


今後ともよろしくお願いします!


それでは!


花川優奈でした!



【次回の更新は、2月1日予定!】

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