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119話◎操り人形(ロン視点)

視点が変わります……。国王フランの側近、ロン・ハースです。

偉大なる国王フラン・スミス陛下の側近である、俺、ロンは王に命令された通り、レベッカのその後について調べていた。もちろんレベッカを形だけの妃にする為にである。


調べていくうちにいくつか分かったことがある。それは、レベッカは隣国ケイラー王国にいること、そこでマーク公爵の加護を受けて「庶民の学校」とかいう意味のなさそうなことをしていること。


庶民なんて教育して何になる。労力の無駄でしかない。それに、要らぬ知識を与えてみろ、こちらに反感を持つに違いない。あいつは国家反逆罪の片棒を担ぐ気か?正気の沙汰ではないだろう。


そんな所にいるよりもこちらで、王妃殿下と陛下の傀儡として妃の仕事を粛々とこなす方が何倍も意味のあることに違いない。


なにしろ、レベッカは陛下のことを愛しているのだから。陛下の尊き愛はもちろん王妃殿下のものであるし、それが揺らぐことは無いが、愛する陛下のために、そして愛する祖国スミス王国のために働けるのだからこんなに幸せなことはないはずだ。


どうにかしてレベッカに接触して、スミス王国に連れて行かねば。「王がお前を妃に迎える」とでも言えばホイホイ着いてくるだろう。


どう接触するべきかと悩んでいた時、レベッカに恨みを持っているというローズ・サンレッド嬢のことも知った。彼女はケイラー王国のサンレッド辺境伯の娘だ。レベッカのせいで王立サンフラワー学園を退学になったと恨んでいるらしい。


これは使えるかもしれない。


サンレッド嬢にしてもレベッカがケイラー王国から出ていった方がいいだろうから協力を仰げばしてくれるだろう。


噂ではあのローズ嬢は黒魔法をつかうときいている。


ケイラー王国は魔法を使う国だが、その中でも黒魔法はすごい力を持つらしい。何でも悪魔と契約することで使えるようになるとか何とか。そして、普通の魔法なら出来ないようなことも出来る魔法らしい。


恨みがあるなら、あのツンっとした鼻っ柱をおってやれるかもしれない。陛下のためとはいえ、俺はあの女がそのままのうのうと戻ってくるのは気が済まない。あの美しき王妃殿下を傷つけたのだから。


戻ってこさせるにも、一泡吹かせて大人しくさせてからの方がいいだろう。それに戻ってきて、我が物顔をされても困るから。何とかサンレッド嬢を丸め込むしかないな。


そういう訳で俺は、ケイラー王国のローズ・サンレッド嬢に秘密裏に会うことになった。ローズ嬢はレベッカの名前を出すと、直ぐに「会いたい」という返事が来た。





暗い世界。

暗い部屋。


通された応接間は昼だと言うのにその家は分厚いカーテンがかけられていて、光の入らぬ部屋はどこか薄暗かった。なんでも、この目の前に座るローズ嬢が光を嫌っているかららしい。


部屋にはローズ嬢とそのメイドが1人、そして俺しかいない。サンレッド辺境伯と夫人は家を開けているようである。


メイドに案内されてソファに座る。向かい側に座るローズ嬢は薄暗い中でも分かるくらい青白い顔をしていた。そして、ガタガタと肩を震わせ、その爪は何度も噛まれたようにボロボロになっている。素直な感想を言うのであれば気味が悪い。


だが、大事な協力者になるかもしれない人だ、丁重に扱わねば。


「ローズ・サンレッド様。わたくしは、隣国スミス王国のオリバーと申します」


オリバーというのは偽名だ。本名を名乗れば、もし裏切られた際に困る。オリバーはよくある名前だから紛れられるだろう。


「………」


ガタガタと震えた彼女は何も言わない。こちらを鋭い瞳で見ている。


「今日はレベッカ・アッカリーのことで話をしに来ました」


今まで何も言わなかった彼女は、レベッカとその名前を出した途端ガタリと勢いよく立ち上がった。そして、出されたお茶に付いていたティースプーンを持ち上げ、テーブルに向かって突き刺すように振り下ろす。


その拍子にガタンっとテーブルが音を立て、食器がガチャガチャと揺れた。勢いよくテーブルに振り下ろされたスプーンはカンカンと音を立ててテーブルの下へと落ちていく。


怖ぇ……と俺は内心息を飲んだ。


「レベッカ・アッカリー……わたくしは……あいつのせいで……許さない許さない……!!」


立ち上がったままのローズ嬢は血のように真っ赤なその髪を振り乱す。狂気的にうわ言を繰返すローズ嬢だが、きっと意識がないほど狂っている訳では無い。


これは使える。


「わたくしめにその復讐、手助けさせて頂けませんか」


俺はニヤリと笑いたくなるのを堪えながら、真剣な、さもあなたが傷ついていることに心を痛めていますと言った表情を作って問いかけた。


すると、ローズ嬢はぴたりと動きを止めて、こちらを見る。その瞳はこちらを探るような鋭いものだ。心の中を探らせないように、完璧に表情を管理してみせる。心配だ、あなたに同情している、という表情を貼り付ける。


「……あなたに?」


「はい。あなたはとても苦しんでいる。見過ごせません。……とびきりの復讐、したくありませんか?」


俺のその言葉にローズ嬢の瞳がキラリと光った。ローズ嬢はきっとレベッカが死ぬまで痛めつけたいと思っているだろう。だが、死なれては困るので気づかれないように誘導をしなければならない。


俺の腕の見せどころだ。

この操り人形を完璧に操ってみせる。全ては陛下のために。


「手を組みましょう」

ロンの意見は物凄く偏っていますね。

次からまた、レベッカ視点に戻ります。

そして、次が第3章ラストになります。

第3章ラスト1話といくつか番外編をはさんで、第4章へと続けようと思います。

よろしくお願いします。

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