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10話★可愛いは正義

小屋を見学した感想としては、もう、めっちゃ最高でした、出来ればここで学校を作りたいです、でした。なので、場所はそこで決定で。


アンディ様は快く使用を許可してくれた。ルカさんは嫌そうだったけれど、まあ、主人が許可するなら、反対はしない、とのことだ。ただ、丁重に扱えよとのことです。めっちゃ釘さされた。私はそんなお転婆じゃないわよ。


そんなこんなで、見学を終えたアンディ様と私はその足で、街を歩くことにした。というのも、学校に対する意見を実際通うであろう人達に聞く為である。


アンディ様のお父様、アンドリュー・マーク公爵が治める公爵領は、ケイラー王国の王都からほど近い所にある。


ちなみに、ご存知かもしれないが、王都は王や王妃、王子が住まわれる宮殿を中心に、神殿や各政治機関、王都での商売を許された店等がある場所で、所謂国の中心部分だ。その商売を許された店というのは、大抵貴族や王族御用達になる。


そんな王都からほど近い領地は、商売なども盛んで、外交担当の公爵領だからから、外国の商人もやってくるらしい。個人的に言えばめっちゃ興味ある。どんな品物が売られてるのかめっちゃみたい。


そして、そこから少し歩くと平民たちが生活している場所に着く。その場所は、小屋、そして、私の住んでいる場所からそんなに離れていない。


これなら、学校を開いても、生徒さんも私も通いやすいわね、なんて思う。


アンディ様と2人で領地を歩きながら、第1領民を探す旅に出た。


アンディ様は、みんな優しいから大丈夫だよーと言っていたから多分大丈夫と、意気揚々と聞き込みを開始した。


……だが、思わぬことで難儀することになった。


みんないることはいて、挨拶はしてくれるのだが、どうやら、アンディ様の横に異物(わたし)がいることによって近づきにくいらしい。


みんな、挨拶をして、こちらに目を向け、少し怪訝そうな顔をしてから、私が話しかける前に足早に去っていってしまう。


確かに私、何者って感じよね。


みんなの目が、「あんた誰」って言っている。でも、かと言って面と向かって「あんたは誰?」って聞いてくる訳では無い。


で、でも!めげないわ!!


そう思いつつ、歩いていると、こちらをじっと見ている女の子を見つけた。そして、その子は、


か、可愛い……!


三つ編みにされた、ふわふわと柔らかそうな濃いめのグレーの髪に、大きなエメラルドをはめ込んだような深い緑色の瞳。自信なさげに下げられた眉も儚さを誘う。


同性からみても、めっちゃ可愛かった!流石乙女ゲームの住人……。


とりあえず、こんな可愛い子がいたのなら、声をかけなきゃ女が廃る!!


「あの、そこの方……!」


思い切って声をかけてみるが、その子は驚いたような素振りを見せてから、ペコっと一礼して、さっさと歩いていってしまった。それはもう、追いかけられないくらい、ササッと。


声をかけたままの状態で固まる私に、


「レベッカ、どうしたの?」


とアンディ様が言う。どうやらアンディ様は別の人の挨拶を受けていて、こちらの様子を見ていなかったらしい。


「どうもしませんわ。ただ、可愛い女の子がいたので、声をかけなければ女が廃ると思いまして」


「それ、男の台詞じゃ……」


「細かいことは気にしちゃだめですわ」


「あ、うん……」


とりあえず、来れる限りこの街に来て、あの子に何としてでも話しかける!!!


国外追放されたのだから、礼儀云々は気にしなくていいはず!なら、可愛い子とお話したい!


だって、可愛いは正義!


「アンディ様、私はあの子と仲良くなりたいです」


「目的が変わってるよ、レベッカ……」


「可愛いは正義なのですわ」


「ちょっと意味が分からないかな……」


「それに、あの子と仲良くなれば、皆さんに話が聞けるかもしれませんわ」


★★


それからというもの、私は時間が空くたびに、時にアンディ様と共に、時にはリリだけを連れてこの街へ、あの女の子、エメラルドの天使__瞳の色が美しいからそう呼んでいる__を訪ねて、足を運んだ。


でも、来る日も来る日もその子とお話することは出来なかった。全然会えないか、もしくは、会ってもササッと逃げられてしまうかだ。


「もしかして、避けられてる!?」


「今更!?」

「お嬢様、お気づきになられていなかったのですか!?」


私のつぶやきにアンディ様とリリから盛大なツッコミがはいる。そんなに驚くことかしら。


そんな私達は、今日も今日とて女の子探しの旅をしていた。そして、たった今、その女の子と出会ったのだが、目が会った瞬間にササッとまた逃げられたのだ。


「いや、薄々気がついていたのだけれど……」


「あれだけあからさまなのに、薄々って……」


アンディ様が少し呆れたように言った。


「でも、何故?」


「お嬢様、貴族に追いかけ回されるなんて怖さ以外の何ものでもありません」


リリの言葉に納得する。なるほどね……。じゃあ、どうすれば……。


その時、


「おいッ!」


と少しドスの効いた声が聞こえた。声音は、若干高めで、声変わり前の少年のようだ。声の主の方を見ると、そこには、5、6歳くらいの少年がこちらをキッと睨んで立っていた。


緑の瞳が、意思の強さを宿している。そして、その色の瞳にはどこか見覚えがある。


「俺の姉ちゃんに付きまとって何がしたいんだッ!」


そう言い放った目の前の少年は、ギンと私を睨んでいる。


俺の……姉ちゃん……?ポカンとした私達。誰の弟……??


しばらくその、勢いのある少年と対峙していると、


「ダメでしょ、カイト……」


「だって……」


「気持ちは嬉しいけれど、ね?」


横からふわっと現れたのは、


「あ、エメラルドの天使……」


グレーの髪にエメラルドの瞳を持つ、紛れもなく私が探していた女の子だった。ああ、さっきの少年の瞳に既視感を覚えたのは、この子と同じだからだ。


「エメラルドの……天使……?」


目の前にいるその子はポカンとした顔をして私の言葉を繰り返している。そして、それと同じくして、隣にいるリリとアンディ様もポカンとした顔をしている。それもそのはず、エメラルドの天使は私の心の中での呼称だ。


私は、わざとらしく、こほんとひとつ咳払いをしてから、


「失礼致しました。私、隣国のスミス王国から参りました、レベッカ・アッカリーですわ」


挨拶とともに、すっと礼をする。初対面の人にはやっぱり自己紹介、大事よね、多分。


隣国という言葉のところで、エメラルドの天使の隣の少年がキランと、ほんの一瞬、本当に見えるか見えないくらいの一瞬、目を輝かせた。どうしたのだろう。


挨拶をされた側の女の子は、オドオドと頼りなさげに目を泳がせた後、


「……わ、私は、ジェニファー・オルティス、です」


と名乗った。エメラルドの天使は、名前を、ジェニファーと言うらしい。


そこから、暫し、また沈黙。話すことが、ない。お互い気まずい感じに静かな時間が流れる。


これじゃ、ダメだわ!

な、何か、話題を……


「私、この辺で学校を開こうと思っておりますの。どう思われますか?」


とりあえず、この街に来て、一番聞きたかったことを尋ねる。この街をさまよってから数日目、やっと日の目を浴びた質問だ。


「…学校……?」

「…学校……!」


質問を投げかけると、同じ言葉ながら、2つの異なる声音の返事が返ってきた。ひとつはジェニファーさんのもので、困惑した様子、もうひとつは、その隣に立つ少年、多分、ジェニファーさんの弟で、嬉しさが滲み出るような声だった。


困惑するジェニファーさんも嬉しそうな弟さんも可愛い。姉弟揃って天使かよ、可愛いかよ。


ああ、やっぱり可愛いは正義。


★★


それから、私とアンディ様、リリは、立ったままでは何ですから、とジェニファーさんに誘われる形で、近くにあったベンチに座った。


座って、ジェニファーさんの弟さんに、開口一番、「姉ちゃん、貴族さんに付きまとわれてるって怖がってたんだぞ!」とお叱りを受けましたので、そこは潔く謝りました。


中身が、「前世の私」になってから、少々ぶっつけ本番、当たって砕けろな行動が目立っているような気が……。前世の私、そんな感じだったからなぁ。21年の方が長いから引っ張られてるのかも。


だからといって、16年間令嬢として生きてきてる記憶もあるわけで、基本的な礼儀や貴族としての振る舞いは身に染み付いているから、貴族の振る舞いが分からなくて困る!的なことはないけれど。


うん、ちょっと反省。一応公爵令嬢だし、ちゃんとしなきゃ。


そして、その後、私は、自分の夢について2人に話し、2人は自分のことについて話してくれた。


まず、ジェニファーさん。印象通り、とても優しく素敵な人でした。


そして!!驚くべき事実が判明しました!私は、女の子と認識していたが、どうやら私と同い歳の16歳らしい。この時代なら、結婚していてもおかしくない年齢だ。とても、とても、本当に驚きました。


その事を伝えると、彼女は、「よく童顔って言われるんです」と苦笑していた。何だか申し訳ない。


ジェニファーさんの弟さんは、カイト・オルティスという名前らしい。歳は、6歳。はつらつとした元気な少年だ。その上、姉思いである。


そして、彼には、夢があるらしく、色々なことを学んでみたいと、私の学校計画に賛成してくれた。なんでも、他国に興味があるとか。私の国の話とか、めっちゃ興味深そうに聞いていた。


「それで、カイトくんの夢は……?」


私が聞くと、今まで元気よく話していたカイトくんが口をつぐみ、言葉を濁す。


「……言いづらいことですの……?」


と聞くと、こくんと頷かれたので、深くは聞かないことにした。どうやら、姉であるジェニファーさんもカイトくんの夢は知らないそう。


いつか教えてくれるといいな。


「もし学校が出来たら、通ってくれるかしら?」


「うん、行きたい」


元気に頷いてくれた。可愛い。


やっぱり可愛いは正義。




♛人物紹介♛

✿ジェニファー・オルティス(16)

アンディの領地に住む平民。ダークグレーの髪に、エメラルド色の瞳をもつ美少女。レベッカは、「エメラルドの天使」と(勝手に)名付けた。弟が一人いる。


✿カイト・オルティス(6)

ジェニファーの弟。はつらつとした元気な子。姉思い。



★★


読んで下さり、ありがとうございます!

いかがでしたでしょうか?

楽しんでいただけましたか?


今後ともよろしくお願いします!


【次回の更新は、1月25日です!】

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