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105話★呼び出し

ウィル先生に伝言をされ、緊張した面持ちで私とアンディ様はマーク公爵の部屋の前にいた。呼び出しの理由をウィル先生は教えてくれなかったので、緊張が割り増しである。嫌な話ではないといいが。


コンコンとノックをすると、返事が聞こえ、中に入るように促された。私はアンディ様と一度顔を見合わせて頷きあってから、緊張した気持ちのまま部屋へと入る。


「やぁ、よく来たね。急に呼び出してすまない。あとでウィリアム殿にもお礼を言わねばならないね」


部屋の奥に位置する机にいたマーク公爵が、優しく微笑んだ。マーク公爵はいつも笑顔をたやさない方である。だから、これからの話がいいのか悪いのか判別はできない。


マーク公爵は立ち上がると、自らがいた机のところから前にあるソファ席へとやってきて、「どうぞ座って」と私たち二人の着席を促した。それに従って座ると、マーク公爵は向かい側のソファへと座る。


「今日2人に来てもらったのは、2つ話があるからだよ」


「はい……」


手に汗握る気持ちでマーク公爵を見る。マーク公爵はそんな私達の様子がおかしかったのか、クスッと笑った。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。少なくとも片方は悪い話じゃないと思うし、もう片方は少し大変かもしれないけれど嫌ではないと思う」


それを聞いて安心した。悪い話ではないと公爵が言うのであれば、そうなのだろう。少なくとも学校を止めろ、とは言われなさそうだ。


安心していると、コンコンと扉がノックされ、マーク公爵がそれに応える。入ってきたのはルカさんだった。いつもよりきっちりとした服を来ている。そして、その横にはレイの姿もあった。


そういえば、2人は師弟関係だったな、と思い出す。どうやら、ルカさんは小屋の管理の他にマーク公爵のお手伝いもしているらしかった。執事さんらしくてカッコイイ。


2人はテキパキとした様子で紅茶を入れて、それから「紅茶をどうぞ」と一礼して、部屋を出ていった。洗練された所作に凄いなぁと感動する。


家のメイドで言えば、リリはあんな風に洗練されているが、と心の中で身内じまんをしておく。変な対抗意識である。


「まず1つ目なのだけど、予算を増やそうと思う」


「えっ……!」


予算を!?ふやす!?


つまりは、使えるお金が増えるということである。今より出来ることが増える。


思わず驚きの声を上げた私。いけない、令嬢っぽくなかったかも。慌てて口元に手を添えて令嬢然として見せる。


……マーク公爵が苦笑している。手遅れかもしれない。


だが、マーク公爵は紳士なので、私の所作については触れず、学校の話を続ける。


「あの学校は、うちの施策としてしているからね。学校に通っている子どもたちや領民から話を聞いたら概ね好評だった。新しいことを学べて嬉しいや楽しい、仕事にも役立つなどプラスの意見が多かった。領民のためになることにお金を費やすのは当たり前のことだからね」


優しい笑顔で言ってくれるマーク公爵に、嬉しい気持ちでいっぱいになる。予算が増えることも嬉しいが、学校に通う子たちと保護者の方々に良い感想を貰えていることも嬉しかった。


アンディ様と顔を見合わせて、互いに微笑む。アンディ様も同じ気持ちらしい。


「ありがとうございます」


マーク公爵にお礼を言うと、


「お金が増えれば出来ることも増えるだろう?期待しているよ」


と言ってくれた。


「また、したいことを考えようか」


アンディ様がニコッと笑ってくれた。その言葉に「はい」と頷く。もしお金が増えたら、今より質のいいことが出来る。次々と、したいことが思い浮かぶ。あれもこれもしたいことがいっぱいである。


そんな私達の様子を嬉しそうに眺めていたマーク公爵は、「もうひとつの話なのだけれどね」と話を続けた。


「1人、生徒を受け入れて貰いたいんだ」


生徒を受け入れる?

ということは、転入生といった感じだろうか。


「つい最近スミス王国からケイラー王国に来た家族がいてね。うちの領地に住むことになったんだ。それで、学校に通ってはどうかな?と思ったんだ。向こうの家族とは話がついているよ」


引越しをしたのだろうか。スミス王国からケイラー王国への引越しだなんて、私みたいね。親近感が湧くわ。


マーク公爵の言葉に頷く。否という答え、つまりは受け入れないという答えはないだろう。事業主であるマーク公爵の依頼だし、それより何より学びたいと思う人を拒むことはない。うちの信念である。


「そうなんですね。どんな子ですか?」


「それが、少々訳ありなんだ。スミス王国出身のレベッカさんが聞いたらちょっと苦しい気持ちになるかもしれないけれど、いいかな?」


嫌な気持ちになったとしても、生徒の情報を聞く方が大事だろう。そもそもこれからその子と関わるのに聞かないなんてことはできない。ひとつでも情報は多い方がいい。


「大丈夫です」


そう言うと、マーク公爵は心得たというように頷く。


「生徒の名前はワイアットという男の子だ。スミス王国で辛い思いをしている」

レイさんが登場人物にいなかったので、この後、加筆しておきます!

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