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104話★図書館改造計画!3

私は片付ける手を止めて、声がした方を見ると、心配そうな顔をしたジェニーだった。ジェニー視線の先には、珍しく項垂れたリルとぬいぐるみになる予定だっただろう布の塊。


「ごめんなさい。上手く出来ませんでした……」


いつもは何事もそつなくこなす完璧ガールのリルが項垂れているのは珍しい。どうやら図書室の飾りに小さなぬいぐるみを作っていたらしいが、リルはあまり上手くできなかったらしい。


「いやいや、謝らないで〜!こちらこそごめんなさい、上手く教えられなかったから」


「いえ、先生の教え方は完璧です。私の芸術センスの問題なのです……」


リルも意外と不器用なのかな。私と近しいものを感じる。親近感がすごい。カーテンを作った時の自分の失態の数々を思い出しながら、そう思う。


「違うことをする?」


「いえ、このまま諦めたくは……ありません。頑張ります」


ジェニーの問いかけに、リルは項垂れていた顔を上げて、じっとジェニーを見る。完璧主義の血が騒ぐのかもしれない。そんなリルの静かなる闘志を感じ取ったジェニーは、ふふふと微笑む。それから、ひとつ頷く。


「じゃあ、もう1回しましょう!」


「はい。よろしくお願いします」


リルはそう言うと、ジェニーの教えを頷きながら聞いていた。


「レベッカ先生、何しているんだ?」


「リルが諦めずに頑張っていて凄いなと思ったの」


私がリルたちの方を見ていると、それに気づいたカイトが、本を片付ける手を一旦止めて私の傍へとやってくる。


「当然だろ、リルは凄いからな。相当な努力家だから。もともと勉強は好きだし得意なんだろうが、ずっと勉強をしているし。掃除だって率先してする。なんでも完璧だから近寄り難いと思うかもだし、冷たそうに見えるかもしれないが、わからないことを聞いたら丁寧に教えてくれるし、優しいところもあるんだぞ!あと、芸術センスがないって言っていたけれど、そんな事ないぞ!」


腕を胸の前で組んで、ふふん!と得意顔をしたカイトから私が褒める言葉の倍の褒め言葉が返ってきた。スラスラと紡がれるいつもより幾分か饒舌な言葉たち。本当にカイトはリルのことをよく見ているのだと思う。


「そっか、そっか。リルはとても素敵な人だね」


「もちろんだ!!!」


何だか微笑ましい気持ちになって、カイトを見ていると、カイトははっとしたような顔をして、それから、頬を赤く染めた。


「い、今のは、リルには内緒だからな!リルには言うなよ!!」


「わかってるよ」


若いっていいね。頑張れ、少年。


ちなみに、そんなリル横でレイラは、だいぶ慣れたのかスイスイっと危なげなく手を動かしていた。レイラはどちらかというと器用なたちらしい。


心做しか目が輝いているので、手芸は好きなのかもしれない。家は食堂で、縫い物系ではなかったはずだけれど。そう思い、後から聞くと初めてだったらしい。凄いな。


リルとレイラの様子を影ながら見つめていると、学校の外からは、アンディ様とルカさんの声が聞こえてきた。分類表作り組である。


「角度はこんなものかな?」


「はい、いいと思います。私はこちらから彫りますね」


アンディ様が言い、それにルカさんが答えている。普段は俺って言っているルカさんが「私」って言ってる!!従者をしている!!


いつもとはちょっと違う1面をみて嬉しくなった。そういえば、ルカさんは小屋の管理を任される前はアンディ様の従者をしていたんだもんね。


「ありがとう。じゃあ、僕は反対側から彫ることにするよ。初めてだからちょっと心配だな」


「大丈夫です。なんてったって、アンディ様ですからね。それに私は経験者なので、もし困ったら仰ってください」


「ありがとう」


そう会話をした後、2人は板に向かい始めた。穏やかな2人の様子を見ていると、何だか心が温かくなる。


「アンディ先生達も頑張ってるな」


「そうね。私達も頑張りましょう!」


「うん!」



そんな風にそれぞれ分かれて作業をした結果、図書室の改造が完了した。


「完成ー!」


私が言う。自然と笑みがこぼれる。そのくらいよく出来たと思う。パチパチとみんなで拍手をして、完成を喜び合った。


「とても素敵になりましたね」


ジェニーも表情を綻ばせて嬉しそうに言った。そう、本当に素敵にできた。


貸し出し用の名前リストの隣に使わない机を持ってきて、リルたちが作った飾りとともに、本を飾っている、オススメ本の紹介コーナーも素敵に出来た。


カイトと共に整理して面だしを行ったことにより少し堅苦しいイメージは払拭できたのではないだろうか。面だしをする本も色々な種類のものにしたので、自分の興味がある本を見つける手がかりになったらいいな。


そして、アンディ様とルカさんが作ってくれた分類表も、大きな文字とイラストが彫られていてとても分かりやすい。これなら見た人がどこに何があるかすぐわかるだろう。


「これなら……その……みなさん、本を借りに来てくれる……のではないでしょうか」


レイラが袖で顔を隠しつつも、嬉しそうな声音でそう言った。


「私達も見やすくなりました。本を探すのが簡単です」


リルがいつも通り冷静な口調で言うが、その口角は少し上がっていて、喜びを示しているのがわかる。


本を借りる人が増えてくれたらいいなぁ。少しでもみんなが楽しいと思える空感が作れたらいいなぁ。


完成の余韻に浸っていると、


「やぁ、みんな」


学校に入ってくる足音と声が聞こえた。この声はウィル先生である。


「ウィル先生!」


声の方を向くとやはりウィル先生がいた。ヒラヒラと手を振りながらやってくるウィル先生。水色のサラリとした長い髪が歩く度に揺れる。


「今日、手伝えなくてごめんねぇ〜……。おー、すっごいねぇ〜!図書室が光り輝いて見えるよ!!」


私達の方へと歩いてきたウィル先生は、申し訳なさそうな顔をしたかと思うと、ぐるりと図書室を見回して言う。それから、生徒たち3人の視線に合わせるようにしゃがむと、ニコッと笑顔を見せる。


「リル、レイラ、カイトも頑張ったんだねぇ」


そう言いながら、よしよしと3人の頭を順に撫でる。3人は、少し恥ずかしそうにしながらも得意げな表情を浮かべている。


だが、今日はお仕事があったはずのウィル先生はなんで学校に来たのだろう?そう思って問いかけると、ウィル先生は「あ、そうだった!」と大きくポンと右手の拳で左手のひらを叩く仕草をする。


「ディちゃん、レベッカ嬢、マーク公爵がお呼びだよ」

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