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102話★図書館改造計画!

「さてと!」


私はいつもとは違うズボンスタイルに長い髪をひとつに結い上げた姿で図書室にいた。今日は久しぶりに学校が休業だ。ほとんど無休でやっていた学校を休業にしたのはわけがある。


そう、学校模様替えである。つまりは図書室改造のためである。ちなみに、リルとカイト、それからレイラは学校に来てくれている。うちの学校の本だいすき巨頭。それからお手伝いに、ジェニーとアンディ様も。


図書室の椅子に座る3人。その3人の前にアンディ様、ジェニー、そして私が座る。


「リル、カイト、レイラ!私、聞きたいことがあるの」


「なんですか……?」

「なんだ……?」

「なんでしょうか?」


3人が同じ方向にこてんと首を傾けている。とても可愛い。素晴らしい。って、見惚れている場合じゃなかった。


「あのね、図書室を改造しようと思うの」


「図書室を?」


今度は3人が逆方向に首を傾ける。可愛い。とても可愛い。


「そうなの。今の図書室、使いづらいという意見があってね、改造したいんだ。みんなは図書室、どう思う?」


「……どうって、普通だな?」


カイトが首を傾けたまま答える。「どう?」という問いは曖昧過ぎたかもしれない。


「……私は嫌いじゃないけど、どこに何があるかわからないかもしれないと思います」


リルが淡々と告げる。そうなんだ……。そういえばアンジェリカ先生もそんなことを言っていたわね。


「私はその……あの……本が苦手な人は入りづらいと思います。もう少し、わかりやすい本があれば素敵だなと思います……」


レイラは少し恥ずかしそうに顔を服の袖で隠しながら、ボソリと言った。わかりやすい本か……。確かにこの図書室の本は分厚いものが多い。私やアンディ様は貴族だから文字は昔から学んでいる。そのため文字を読むことに抵抗がない人が多いのだ。


初め、図書室を設置する時に難易度別にすることはしてある。アンディ様が置いてくださっている貴族向けの文字手習い本は初級としてあるけれど。それにしてもやはり初めての子には難しいのか。


「もう少しわかりやすい本か……」


絵本みたいな感じかな?言葉遊びとか文字の初心者でも読める本があればいいんだけど。でも、この世界で絵本は見たことがない。となると、作ることになるかな。


「確かにそうです。文字と絵がかかれていたり、物語も絵が多いときっと読んでくれる人は増えると思います」


リルがうんうんと小さく頷きながら言った。いつもより雄弁で、心做しか瞳が輝いているように見えないことも無い。


でも、紙は高いし、私は絵だってあまり描いた事がない。


「絵ならレーベに頼めばいいと思う」


カイトが言う。レーベは金髪ふわふわの男の子である。リルとおなじ教会の子で、文字が少し苦手だけど、優しくてふわふわした性格だ。レーベは絵が描けるんだ、知らなかった。


「レーベは、絵がとても上手です」


カイトの言葉に頷きながらリルが言う。そんな隣でリルが頷いてくれている姿を見て、カイトが少し頬を赤らめているのが見えた。


「……私も……その、絵を描くのが好きです……」


小さく手を挙げて言うレイラ。レイラは物語をよく読むからその延長で絵を描くらしい。きっとレイラが日本にいたら漫画やアニメなどが好きだっただろうな。もしかすると同人誌なんかも書いていたかも。


「じゃあ、レイラはわかりやすい物語の本を作ってくれる?」


「……はい!楽しそう……!!」


さて、作るにしても材料をどうするか、となってくる。木材で作るか、ノートを作っているのと同様に切れ端をもらってまとめるか。また考えなければ。


絵本作りは少し置いておいて、その後も話し合いをしたところ、入りやすいように飾りつけをしたり、分かりやすく表示したり、本の並べ方を工夫する事になった。アンジェリカ先生に教わった面だしなんかもしてみることにする。



その後、改造計画を元に図書室を動かすことにした。元からいる、リル、カイト、レイラ、アンディ様、ジェニー、そして小屋の様子を見に来てくれたルカさんがいる。


「分類表示?とやらは木の板でするんだよな?」


ルカさんが自分の家にあったという少し大きめの木の板を持ってそう言う。大きめの板なんてどうして家にあるの!?ときいたら、ルカさんの母が最近、今でいうDIYにハマっているらしい。


どうしてそうなった!?


ルカさんのお母様は公爵家を出て、ルカさんと少しずつ会話をするにつれて色々吹っ切れたらしい。貴族令嬢として生きてきた制限された生活より今はとても楽しく、どうしてか、ものづくりをしてみたくなったらしい。


元から何かにのめり込みやすく、今では暇さえあれば作っているとか。家具が増えて困るから、学校でなにか使うものがあったら持って行ってくれ……と言われた。


振り切りすぎだと思う。


そう言うと、「俺もそう思う」と遠い目をしていた。でも、その目には前までのような翳りや悲しみなどの表情はない。ルカさんと彼のお母様の関係が改善してきているということだろう。


「母上に板を探していると言ったら、これを使えと押し付けられたんだ。だから、遠慮なく使ってくれ」


「ルカさんのお母様、新たな趣味を見つけられたのですね!とても素敵ですね」


ジェニーが笑顔でパチパチと手を叩きながら言う。令嬢が新たな趣味にDIYを選ぶ……。なかなかファンキーな母だな、と思う。


「じゃあ、ルカが持ってきてくれたこの板は分類に使うということで。どう使う?そして誰が担当するか……」


木の板に文字を書くのか。文字が上手な人がいいかな。それに無駄遣いは出来ない。インクには限りがある。マーク公爵が譲ってくれているインクは普段授業で使うものだし。


「母上はよく板にナイフで文字を彫っているな。つっても、うちの母国の文字だけど」


「彫るのはいい方法かもね。でも、危ないから大人がした方がいいと思うな」


ルカさんが思い出したように言い、アンディ様は心配そうな顔でそう言った。確かにそうだよね。子どもにナイフは持たせたくないなぁ。アンディ様は「だからね」と言葉を続ける。


「僕とルカでしようか?」


ルカさんの方をみながら言うアンディ様に、ルカさんはすっと胸に手を当てた。


「承知しました、アンディ様」


やっぱりアンディ様相手だと、主人と侍従だからかそういうかしこまった感じになるんだね。


「ありがとう、ルカ。久しぶりにルカと作業だね。なんだか嬉しいな」


アンディ様が優しく笑う。笑顔が眩しいね。それを受けたルカさんも何だか顔を赤らめている。


「じゃあ、私とカイトは本棚の整理をしましょう。ジェニーとレイラ、リルは飾り作りをしてもらえるかしら」


私がそう振り分けると、各々がうんうんと頷いてくれた。飾りはこの前カーテンを作った時にあまったドレスの端切れを使うことになった。


「作戦開始!!」


「おーー!!」


みんなで円陣を組んでそう言ってからそれぞれの担当場所へと分かれた。

ルカさんのお母さん、どーしてこーなった……。

気づいたらこうなってました。どうして??笑

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