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101話★チーム学校

声を掛けてきた人物を見ると、そこにはルカさんがいた。気恥しいのか目線は合わずそっぽを向いており、頬もどこか赤い。


「ルカさん!」


いつも午後クラスの後、ルカさんと勉強会をしているので今日もそのつもりで来てくれたのだろうと思う。その時に私たちの話が聞こえたのだろう。ルカさんはそっぽを向いたまま小さな声でもごもごと続ける。


「俺、あんたに勉強教えてもらってんのに、俺は何んも出来てねぇから……」


「ほんと!?」


私は立ち上がり、ルカさんの方へと走りよる。そして、じっと見ると、ルカさんはぎょっとしたような目でこちらを見る。そして、ボアッとその顔はさらに赤くなる。


「な、な!」


あたふたと慌て始めたルカさんにどうしたのだろう、と思っていると、アンディ様がススッとこちらにやって来て、私の手をスっと持ち上げる。私の視線をルカさんから剥がすようにアンディ様の方へと向かせる。ギュッと私の手を握るアンディ様は、そのままニコッと笑顔をルカさんの方に向けた。


「ルカがいてくれるなら心強いな」


アンディ様がふふっと笑いながら言う。すると、ルカさんはコチッと身体をかたくしながら「は、はい」と返事をした。その顔はどこか気まずそうである。


それを見たウィル先生は目をぱちくりと瞬かせてからしみじみと「ディちゃん、強くなったね」と言い、ルカさんは小さく溜息をつきながらボソッと「俺は主人と争うつもりはねぇ……」と言った。


なになに?!アンディ様とルカさん、決闘でもするの!?どうしていきなり!?そして、私、アンディ様に手!握られている!なんで!?


「あ、あの、アンディ様!手を……」


「あ、え、あ!ご、ごめんね!」


私が内心の荒ぶりを抑えつつ、遠慮がちに言うと、アンディ様は慌てた様子で私から手を離した。どうやら無意識だったらしい。それを見たウィル先生とルカさんはやれやれとでも言いたいような顔をして、ため息をつく。


「い、いえ、大丈夫ですわ」


あたふたとした私とあたふたとしたアンディ様。その2人の様子を見ていられなくなったのか、ウィル先生が咳払いをひとつしてから、話を戻す。


「さて、ルカちゃんが授業中、リアムに付いてくれるってことでいいの?」


「ああ」


「ありがとう、ルカさん!」


ルカさんが頷いてくれるのでお礼を言うと、ウィル先生が思い出したように「あのね、レベッカ嬢」と私に呼びかけた。その声に私はウィル先生の方を向く。それに合わせるようにアンディ様とルカさんもウィル先生の方を向く。


ウィル先生はニコッと笑ってから私に視線を合わせてくれる。こういうところを見ると、ウィル先生は”先生”なんだなと実感する。


「リアムにちゃんと伝えてからだよ。こちらが思っていてももしかすると、相手には嫌な気持ちになることかもしれないから」


優しい声音で言ってくれる。そりゃそうだよね。相手の力になってあげたいのに、相手が嫌がっていたら意味無いもの。また突っ走りそうになっていたわ。いけないわね。


「そうですね」


その後、リアムに意思確認をした。リアムは驚いていたが、「その方がいて下さるんですね。ありがとうございます。よろしくお願いいたします」と礼儀正しく言い、丁寧なお辞儀をしてくれた。


初の試みなので、どうなるかはわからないが、ひとまずこれでいってみよう、ということになった。



放課後、ルカさんとの勉強会。いつも通り教室で2人でミニ黒板に向かい合いながらあれやこれやと言い合う。


「ね、ルカさん。リアムとはどう?」


ここ最近、ルカさんはリアムについてくれている。授業の合間、ルカさんに尋ねると、ルカさんはううん、と悩むように腕を組む。


「あのチビ、すっげー礼儀正しい。だが、ちょっと突飛ないところがあるな」


「なるほど」


「急に動き出すからちょっと驚く。まぁ、悪い奴じゃねぇのは見ててわかるな」


思い出すようにそう言ってから、どこか優しい微笑みを浮かべながらそう言った。ルカさんは子どもとか嫌いそうなのに、案外面倒見がいいらしい。ルカさんの言葉にふむふむと頷きながら、私は得意げな笑みを浮かべた。


「それはそうよ。私の学校はいい子しかいないのよ〜」


「親バカならぬ先生バカだな」


私がうふふと笑うとルカさんは苦笑いを返す。呆れたような声音で返された。だが、先生バカなどではなく事実なのだから仕方ないではないか。


ルカさんとリアムの関係性も悪くはないらしいので、このまま続けてみようと思う。また、何かあったらみんなで相談しよう。これでこそ、『チーム学校』だね。


「それから、俺、リアムに付いているおかげで2回授業を受けてるから復習や予習にもなる」


それは良かった!


「ルカさんは順調に文字を学んでいるわよね。もう全部の文字をかけるでしょう?今はもう文章の練習だもの」


ルカさんは基本的に物覚えがとてもいい。元々他国から来た彼だが、もうこちらの文字はスラスラ書ける。今は文章の練習をしている。語尾変化などがあるので、少し難しい。だが、きっとすぐに出来るようになるだろう。


最初の頃の文字練習とは全然違う美麗なルカさんの文字をみながらしみじみそう言うと、ルカさんはフィッとそっぽを向く。その頬は照れたように赤い。あまり褒められ慣れてない彼は褒めるとすぐこういう反応をする。


「別に……」


「別にって何よー。せっかく褒めているのに」


「別には別に、だよ。つーか、もう次、教えろよ!時間の無駄だ!」


赤い顔をさらに赤らめて、こちらをギロリと睨みながら言う。これは照れ隠しであることを十分にわかっている私は、睨まれたって全然怖くない。


でも、いつか褒められることに慣れて欲しいなぁ。

お疲れ様です。

読んでくださり、ありがとうございます。


生徒たちの精神年齢が難しいです……。

働いているから大人の世界に揉まれているわけで、きっと精神年齢はそこそこ高いはずだけれど、でもまだ5~6歳くらいだし大人ではないだろう……と。

ひとまず中学生くらいかな?と思っています。

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