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98話★衝突と相談と

お久しぶりです。かけていなくてすみませんでした。

久しぶりの更新です。

忘れ去られているかも……と少々怖くなりながらの投稿です。

「本気でないのなら引いてくださるかしら」


2人だけになった校庭。風が吹いてふわりと校庭横の緑が揺れた。自然の音しか響かない静かな空間に、目の前の黄金の君は対峙する私に向けて少し低い、それでいて真っ直ぐな声音で言葉を落とした。


対峙した双眼も声音と同じくらい真っ直ぐでそれでいて冷ややかだ。凍てつくとまではいかないが、冷え冷えとしたその視線はこちらへの敵意が垣間見える。


「どういう意味ですか」


「あなたが今受けている全て、ですわ。あなた、隣国から来たからってだけでチヤホヤされていい気になっているのではなくて?みんながいい子ぶりっ子してるあんたに従っている光景……なんて生ぬるい世界。平民向けの学校だなんて、何ですの?同情でもおかいになるおつもり?わたくし、慈悲深い女ですのーって?」


「そ、そんな……」


「そんなつもりなくても、そう見えますわ!綺麗事ばっかりで、オドオドして、助けて貰って、ニコニコしているその姿が気に入りませんの」


言い返せない。だって、本当のことだから。私が死なないで生活出来ているのも、好きなことをできているのも、みんなみんな自分の力じゃないから。みんなアンディ様が、ひいて言うと、マーク家があるからだ。


「わたくし、あなたよりこの地であったり、アンディ様のことに詳しくてよ。あなたみたいなこと、わたくしにだってできるわ。あなたの代わりなんていくらでもいるの」


「………」


きっとこのフラーウ厶嬢は努力をしているのだ。この土地のために、自分のためではなくみんなが幸せになれるように勉強しているのだ。何も言えず、下を向く。


揺るぎない自信と強い信念を感じる。


助けて貰ってばかりの私とは全然違う。フラーウム嬢がキッとこちらを睨んでいるように感じる。


「いつか奪ってやるわ。その場所もアンディ様の隣も」


その後、アンディ様が戻ってきて、フラーウム嬢はなんでもないように笑顔を向けて帰って行った。


「レベッカ?どうしたの?」


アンディ様が、ぴょこっと私の顔を覗き込むようにして尋ねる。


「なんでもないです」


「そうは見えないけど?」


アンディ様が首を横にかたむけて、更に尋ねる。アンディ様は優しい。本当に。でも、ここで頼ったら、ダメ。ただでさえ頼って甘えて、助けて貰ってるんだから。そう自分に言い聞かせる。


とはいえ、私に何が出来るんだろうか。やっぱり、自立していかなきゃいけない。


自分で、考えよう。これから、何が出来るのか。


「ううん、本当に大丈夫です!ありがとうございます」


「それならいいけれど。無理しちゃダメだよ」


「ありがとうございます」


とりあえずは、今ある仕事を出来るだけすること。それから、自立についてはこれから考えよう。自分でお金を捻出できるようにならなきゃだね。今は、領地の事業としてやってるとはいえ、マーク家のお金を使わせてもらってるのだもの。


よっしゃ、頑張る!!

大学生に金策とかできる自信ないけれど。


「よくわからないけれど、元気みたいだね」


「はい!やる気と元気が湧いてきました!」


やる気と元気をくれたフラーウム嬢には感謝しなきゃ。


そうと決まれば、これからについていっぱい考えなきゃ!


★★


そんなフラーウム嬢との一件後、午後クラスが始まる。午後クラスは、レイラやエミリーがいるクラスだ。


午後の一コマ目が始まる少し前、登校してきたエミリーが用意をしている私のところにやってきた。


「先生」


「どうしたの?」


そう問いかけながら顔を上げると、どこか深刻そうなエミリーが立っていた。こりゃちょっと気になるな。私に何か話があるのだろうか。


そう思って、「私になにかお話?」と聞くと、エミリーはその深刻そうな顔のままこくりと頷いた。だが、それ以上話をしない所をみると、ここでは話しづらいのかもしれない。


一コマ目はあともう数十分くらいで始まる。さて、どうするか。何が正しいのかわからないけれど……生徒優先だよね。私に話しかけてきたってことは私に聞いて欲しいってこと。


話を聞けるのは私だけだけど、授業ならウィル先生やアンディ様でもできる。アンディ様かウィル先生に声をかけよう。ウィル先生もアンディ様もきっと今日はいるはずだから。


「わかった。ちょっと話をしよっか。ウィル先生に声をかけてからでもいい?」


そう言うと、エミリーはこくんと頷いた。


その後、少しだけウィル先生と打ち合わせをしてから、エミリーとともに、校舎を出て、校庭にあるベンチに座る。


エミリーは、私の隣に座ったあとも、下を向いたままキュッと膝の上で拳を握っている。いつも堂々とものを言うエミリーらしくない。


「それで、どうしたの、エミリー?」


「あの……あのね、リアムの事なんだけど」


エミリーが名前を出した、リアムというのは、この午後クラスに通っている6歳の少年だ。黒髪短髪、緑色の目の少年。元気で明るい性格で、基本的に素直。とても素直な子だ。


「リアムがね、最近、注意しても聞いてくれないの」


エミリーはそう言って下を向いた。エミリーは、学級委員長だ。みんなをまとめようと頑張ってくれている。授業中、みんなが勉強したいとはいえ、集中力が切れてしまう子もいる。そんな子がいたら声をかけてくれるし、どうすればクラスをよくするか考えてくれている。


「リアムが……?」


そう、リアムは少しだけみんなよりこれから頑張っていかなければいけない部分のある子だ。周りの事をちょっと見れなかったり、気になったらすぐ発言してしまったりする。


「あたし、リアムの言葉とか質問とかのタイミングが気になってて……」


「うん。気にしてくれていたんだね」


エミリーが話してくれているのを頷きながら聞く。ポツリポツリと言葉を落とすように言うエミリーは、相当心に溜め込んでいたらしい。


「それでね、あたしが声をかけること多いの。でもね、聞いてくれなくて……」


「そっか、そっか。それで悩んでいたんだね。話してくれてありがとう。そして、エミリーはとても優しい子だね。クラスのこととかとても気にしてくれるんだね」


泣きそうになってしまったエミリーの頭を遠慮がちに撫でると、エミリーはポロリと涙をこぼした。それを合図にしたように、次から次へととめどなく溢れてくる涙。


相当ためていたらしい。


「あたし、どうしていいかわからなくて!みんなが過ごしやすい方がいいと思うの。だけど、方法が分からないの!!」


こんなにも一生懸命になってくれるエミリーがとても愛おしいと思う。しっかりさんで優しい子だ。


私は、エミリーに言いたいことをとりあえず言わせて、聞くことに徹した。頷きながら聞いていると、エミリーは落ち着いたのか、ヒックとしゃくりを上げながらも、涙は止まった。それを見て、慎重に声をかける。


私は元々大学生だし、子どもと関わった経験だって少ない。だから、本当の意味でどうするのがいいのかなんて、わからない。でも、私らしく話すのがいいよね。


「エミリー、ありがとうね。みんなのこと、考えてくれて。それでね、みんなが過ごしやすいの「みんな」には、リアムも入っている?」


そう問いかけると、エミリーは赤くなった目をパチパチと瞬かせながら、大きく頷いた。


「もちろん。だって、リアムはクラスメイトだもん」


「そっか、それを聞いて安心した。じゃあさ、エミリーはリアムとお話するのは気が進まない?」

『私は元々大学生だし、子どもと関わった経験だって少ない。だから、本当の意味でどうするのがいいのかなんて、わからない。』と書きましたが、いつだって子どもと関わるのは難しいですよね。

何が正解かなんて、現職にだって分からないです……苦笑

でも、きっと正解はいっぱいあってひとつじゃないんだと思います!

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