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97話★仮面系女子と茶番

フラーウム嬢の見学会はドラマなどでありそうな展開となった。はっきりとこちらに何かをしてきたり言ってくるわけではないが、明らかに行動はこちらを不快にしようとしているように見えなくもない。


というか、何故かこちらをちらりと見て得意げな顔をするのだ。なんだこの茶番。


今もそうだ。

今、私たちは教室を見学しているのだが、


「きゃっ、アンディ様!」


フラーウム嬢は何も無い真っ直ぐなところで、大きく滑ったような素振りを見せてから、隣に立つアンディ様にしなだれかかる。アンディ様は驚いたような顔をしつつ、フラーウム嬢を支える。


「大丈夫?」


「ええ、ありがとうございます。わたくしったらほんとにドジですわね」


照れたように顔を少し赤らめて答えるフラーウム嬢。大変可愛らしいが、うん、そこつまづくポイントなかったよ。何につまづいたのかな。


それからもことある事に、アンディ様に触れていた。というか、教室内を紹介しているのに、フラーウム嬢はアンディ様の方ばかり見て、場所なんて見ていないように見えるのだけれど。


なんだろう……。むしゃくしゃする。なんで?

案内を頼んでおいて、場所すら見ないから?


そんな風にして校内案内が終わると、フラーウム嬢はにこりと笑顔を浮かべた。それはもう、華やぐような優しい笑顔だ。女性の私からみても可愛らしい。


「アンディ様、レベッカ様。ご案内ありがとうございました。とても楽しい時間でしたわ。あの、今日美味しい茶葉とお菓子を持参しておりすの。よろしかったらこの後、お茶をしませんか」


フラーウム嬢のこの言葉で、学校の庭でお茶をすることになった。


なったのだが……。


お茶をセッティングした後、フラーウム嬢が口を開いた。


「ねぇ、アンディ様。アンディ様は小さい頃、外国語の授業がお嫌いでしたね。1度授業を抜け出したことがございましたわ」


「そんな昔のこと、よく覚えていたね。ちょっと恥ずかしいよ」


「可愛いエピソードではございませんか。あのあと、アンディ様は木に登って……」


「それ以上は言わないで……。あの頃はやんちゃだったんだよ」


小さい頃の話は私には分からないので、当然話に入れない。そんな私の方へチラリと目をやり勝ち誇ったような笑顔を見せてくるのだ。見下したような視線。あの優しげな瞳からどうしてこんな視線が生み出されるのだろう。


というか、アンディ様って小さい頃やんちゃだったんだ。全然知らなかった。グルグルモヤモヤ。


見学の時は楽しそうに腕なんか組んで、お茶会では思い出話に花咲かせちゃって。いや、腕を組んでいるのはお客様へのエスコートだってわかっているんだけれど。モヤモヤグルグル。


「レベッカはどんな子供だった?」


アンディ様がこちらを見ながら優しい笑顔で問いかける。私が話に入れないの、気づいてくれたのかな。


「私は……」


そう言いかけて思う。私の子供の頃……。王妃になるべく真っ直ぐに馬鹿の一つ覚えみたいに勉強していた思い出しかないわ。学ぶことは好きだったから苦ではなかったけれど、お父様やお母様は少し心配してたわね。


……でも、”王妃になるため”の勉強をしていたって、何故か分からないけれどアンディ様には、この人には言いたくない。なぜだろう。


「私は……勉強ばかりしていましたね。後は読書が好きでした」


「そっかー、読書かぁ。そう言えばこの学校の図書館にもレベッカの本あるよね。僕も読書、好きだよ」


その後、お父様もあれだけ本を集めるくらい読書好きだから、僕や兄上も読書好きになったんだよねぇ、と続けた。


その時、フラーウム嬢は少し大きな声をあげた。


「……あ、あの!そういえば!このお菓子、アンディ様にぜひ食べて欲しいですわ!」


フラーウム嬢は自らの手で、自分が持ってきていたらしいカップケーキをさらに乗せてアンディ様の元へ手渡す。アンディ様は少し驚いたような顔をしたが、それから爽やかな笑顔を浮かべる。


「ありがとう、フラーウム嬢。君のオススメならしっかり味わって食べないとね」


「あ、でも、2つしかありませんわ……」


アンディ様に手渡したあと、残ったもうひとつのカップケーキを見てそう言った。悲しそうな顔をしているが、私の方に向けた視線が「あんたは遠慮しなさい」と言っている。


「あ、いや、私は大丈夫ですよ。気にしないで下さい」


「申し訳ありません」


悲しそうな申し訳なさそうな顔をしているフラーウム嬢に私は構わないと言うように右手を振った。


「いえいえ」


その後、若干フラーウム嬢に押され気味なお茶会が終わり、そろそろお開きかなと思った時、


「ねぇ、アンディ様。わたくし、少しレベッカ様にお話がございますの。よろしいでしょうか」


フラーウム嬢が口を開いた。


「じゃあ、僕はちょっと席を外すね」


……敵視されているように見えるフラーウム嬢からお話だなんて。何の話だろう。

普通……お菓子が2つなら、持ってきた人が譲ることが多いですよねー、多分……笑

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