95話★不思議な人
「本自体には貼れませんから、やはり大まかに分類で分けるしかないですかね……」
私が言うと、アンディ様も頷いた。
「僕が図書館魔法を使えたらいいんだけれど、僕は司書の資格は取らなかったから……」
「では、せめて分類があることを生徒には知らせて、大まかにここになんの本があると言ったことを地図で表し、貼り付けることだけはしましょう」
アンジェリカ先生が、両手を四角をかくように動かしながら言う。きっと、大きな紙に描いて図書館に貼るようにしようということだろう。でも、紙、高いんだよなぁ……。そのことを相談すると、アンジェリカ先生は、顎に右手をあて、うーんと少し悩む。それから、あっと小さく声を上げ、こちらに笑顔を向けた。
「木の板に書くのはいかがでしょうか?」
なるほど、木の板なら紙よりは安いし、多分手軽に手に入るかも。
「そうですね!それなら手に入るかもしれません」
私がポンっと手を叩いてそう言うと、アンジェリカ先生はニコニコと優しい笑顔を浮かべて頷いてくれた。だがその後、人差し指をピンっと立てて、「ですが」と声を上げる。
「使うのは生徒さんですから、生徒さんにどんな図書館がいいか尋ねてみてもいいと思います。独りよがりにならないように、一緒に過ごしやすい図書館にしていくのが大事だと思いますわ」
そうよね。生徒たちにも聞いてみなきゃだわ。私たちが使いやすいって思ってしても実際に使うのは生徒たちだもの。アンジェリカ先生の話を聞くと、色々なことに気付かされる。本当に図書館を愛してらっしゃって、生徒たちに使いやすいようにしたいって思ってらっしゃるんだわ。
アンジェリカ先生の言葉に私とアンディ様はコクリとうなずいた。今度総合で取り上げてみましょう。上手くいくかは分からないけれど。
アンジェリカ先生は私たちの反応に満足気に頷いて、
「私から言えることはこれくらいですわ。最後に1つアドバイスをするなら、図書館を作る上では、1番は読書は楽しいものだと思ってもらえることが大切です。そして、読書は教えるべきものです。読み書きや数学などと同じく勝手に身につくものではありません」
と最後にもうひとつアドバイスをしてくれた。それは考えたことなかったわ。読書は趣味の範疇だと思っていたもの。でも、確かにそうよね。今まで触れたことのないものは学ばなきゃわからないもの。
でも、読書を使った授業ってどんなのがあるのかな。そう思って質問すると、それはもう熱弁を振るわれました。
長すぎたので詳しくは言いませんが、オススメの本をそれぞれ持ち寄って紹介してからどの本を読みたいか投票して決めるビブリオバトルやそれぞれ本を持ち寄って交代で読んでいく味見読書などなど色々なイベントがあるらしいです。
また機会があったらやってみよう。
それにしても、魔法がないって不便だなぁ。この国はほとんどが魔法で回っているんだなって実感。でも、魔法って維持するのに魔力がかかるんだよね。確か魔法で道具を作るのは、魔力を型抜きをするようなものだって言ってたもの。
だからカーテンの時魔法で止めるって方法を取らなかったんだもの。図書館魔法ではどうなっているのかな。やっぱり魔法を流し続けているのかな。
「1つ思った事があるので聞いてもいいですか?」
「なんですか?」
「図書館魔法は魔法を流し続けているんですか?」
そう質問すると、アンジェリカ先生は首を横に振った。
「いいえ。普通魔法は流し続けなければ魔力が持ちませんが、この図書館魔法では魔法陣を主に使っているので大丈夫なんですわ。この魔法陣を書くには魔法具である専用のペンを使うので、流し続けなくてもいいんです」
「魔法具には保持魔法がかかっているんだ。だから流し続けなくても誰でも使える。まあ、魔法具を作るのは凄く難しいんだけどね」
つまりは、魔法具には魔力を保持し続けることができる魔法がかかっていて、そのおかげで魔力を流し続けなくてもずっと使える。でも、その保持する魔法はウルトラ級に難しいから限られた人しか使えないってことかな?
「なるほど……」
私がコクコクと頷くと、アンジェリカ先生はまた優しげな笑顔を浮かべた。この先生、普段はこんなに優しい感じなのに図書のことを話すと目の色が変わるんだよなぁ。不思議……。
一通りアドバイスと相談を終える。その後、アンジェリカ先生をお茶に誘ったが、少し眉を下げて、
「申し訳ありませんが、実はこの後業務が残っていまして……」
と言われてしまったので、アンジェリカ先生を見送る。
アンジェリカ先生はその後慌ただしく帰っていった。そうよね、意外と図書館は忙しいのだ。
なんの構いも出来なかったな……と少し後悔。
アンディ様と2人でアンジェリカ先生の姿が見えなくなるまで見送っていると、
「ごめんあそばせ」
凛とした高めの声が聞こえた。
魔法以外は授業の受け売りです、ごめんなさい(。>﹏<。)




