94話★ 一言で言うとダメダメ
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アンディ様との話し合いから数日後。あの時言っていた通り、私はアンジェリカ先生に手紙で図書館のことを相談した。すると、驚くことにアンジェリカ先生から、都合のいい日に訪問してもいいか、という返事が返ってきた。
そして、昨日はその約束の日である。思ったより早く訪問の日を作ってくれたアンジェリカ先生と、手紙を何度も運んでくれたルルーには本当に感謝だ。
「一言で言うと、ダメダメですわね」
静かな図書館にアンジェリカ先生の声が響いた。今日は休日のため学校には生徒はおらず、アンディ様とアンジェリカ先生、私の3人だけだ。
いきなりのダメだしである。それはもう、辛辣な程に真っ直ぐな。
「どの辺りがダメダメなのでしょうか?」
私がそう尋ねると、アンジェリカ先生は右手の人さし指をピンと上に、そして指の腹をこちら側に向けてて立てた。そして試すような視線をこちらに向ける。
その視線に難しい問いをされる予感がして、緊張する。気分は生唾をゴクリと飲み込むイメージだ。
「ではここで質問です。この図書館を使うのは誰でしょうか?」
アンジェリカ先生の表情とは裏腹に拍子抜けするような質問をされる。
「生徒たちですけど」
アンジェリカ先生はうんうんと頷く。そして言葉を発する。
「そうですわね。それも、まだ文字を学んで間もない、そして本にあまり触れてこなかった子たち、ですわよ?」
言葉の意図が掴めず私とアンディ様の頭の上にクエスチョンマークがたくさん浮かぶ。今正面から、ちょうどアンジェリカ先生の方から見ると、2人揃って右側に首を傾けた見事なシンクロが見られるだろう。
だが、アンジェリカ先生の言っていることは間違っていないので、コクリと頷く。
「そうですね……」
するとアンジェリカ先生は、勿体ぶるのをやめたらしく、ズバリと言い放つ。
「子どもたちの発達段階に応じてないのですわ、この図書館は」
そう言うと、アンジェリカ先生は本棚の方へと歩いていき、本の背表紙に触れる。
「本に初めて触れる子たちがこんな風に、ビシッとぎゅうぎゅうと本が並んでいる場所に入ったらどう思うでしょうか」
そう尋ねられて考える。生まれて初めて見たものが目の前にズラリと並んでいる光景……。しかも、まだ小さな子達。
「きっと、触れたことの無い世界ですから、怖いと思います」
私が言うと、アンジェリカ先生は笑顔で頷いて見せた。
「そうですわね。ですから、入りやすいようにディスプレイにもこだわるべきですわ。『面だし』や展示などで工夫出来ると思います」
「『面だし』とは……?」
アンディ様が質問する。確かに知らない。図書館用語かな?
「『面だし』とは、配架する時に本の表紙を見せるようにすることですわね。ラックとかがあればいいのでしょうが、それは予算の関係もありそうですから、普通の書架に立てて置くか、机に立てて置くといいでしょう」
「なるほど……」
私が頷くと、アンジェリカ先生は真剣な顔でこちらを見る。
「普段、本は背表紙しか自分を主張出来るものがありません。ですが、平積みや面だしをすることで背表紙以外も見せ、少しでも読者様の目に留まる機会を増やしてあげるのですわ」
「でも、全ての本をその面だしすることはできなくないですか?」
アンディ様の問いに、アンジェリカ先生はニコッと笑って見せた。
「いい所に気づきましてよ。そうですわ、全ては無理です。なので、フェアーやイベントをするといいですわ。テーマ、つまり「今回はこの内容の本をピックアップする!」を決めてそれに沿って面だしするものを決めるのです」
「その時に、飾りなどをつけれればいいんですね?」
アンディ様が少し不安そうな顔で問うと、アンジェリカ先生は安心させるような笑顔を見せた。
「そうですわね。それに関連するものなどを置ければいいと思いますわ」
なるほど。飾りかぁ。関連するものとかだったら、布さえあればぬいぐるみとか作れるかなぁ。……私は苦手なのでジェニーに相談だけれど。
その後、アンジェリカ先生は自らの右頬のあたりに右手を添えて、コツコツと足音を立てて図書室を歩く。そして、全体を見回すようにして見たあと、こちらに視線を戻した。
「それから、並べ方ですが、確かに分類順に並んでいて一見見やすそうですわ。ですが、それは分類があるって知ってて初めて機能をなすのではなくて?この学校の生徒に分類記号がわかる人はどれくらいいるでしょうか?」
そのアンジェリカ先生の言葉にはっとする。そうだわ。私だってたまたま知っていただけだし、知っていても詳細は知らない。本を知らなかった子たちににとってはもっと意味不明だろう。
「この図書館には、本の背ラベルもないですし、分類が分かる表もありません。多分多くの生徒がどう並んでいるかわかっていないことでしょう」
「そうですね……そう言えば学園の方ではどうなさっているのですか?」
前世ではシールに請求記号(分類記号や図書記号などが書かれた本の住所みたいなもの。所在記号とも言う)を書いてラベルをつけていると思うけれど、この世界にシールは手紙を閉じる封蝋、つまりシーリングスタンプしか見たことがないわ。さすがに蝋を本にかけるのはねぇ……。
そう思って尋ねると、アンジェリカ先生は驚いたように目をパチパチしたあと、
「魔法で一括管理ですわ。本一つ一つに魔法で印がついているのです。簡易版魔法陣のようなものを背表紙につけています」
わー、出た!魔法。
魔法って便利だなー。いいなー。
その後アンジェリカ先生によく聞くと、この国の司書教諭や司書は図書館魔法という魔法を学んで、それが使えて1人前なんだとか。
図書館魔法は、図書業務全般のための魔法であり、貸し出し返却などの処理や図書館への配架、分類などをすることができるらしい。以前話したBDSもこの国では魔法でしているらしい。
とはいえ。
「……私たちの学校では魔法はあまり使えません」
私がそう言うと、アンジェリカ先生は目からウロコが落ちたような顔をして、こちらを見やった。
そうです、私は隣国出身なので魔法が使えないのです。悲しい。せっかく魔法のある世界線に転生したのに、なんで私は魔法が使えないんだろうか。そもそも、何で国によって魔法の使える使えないがあるのだろうか。
まあ、落ち込んでいても仕方ないので、考えよう。
さて、どうしよう。
ほとんど大学の授業の受け売りです。ごめんなさい。
でも、図書館魔法のくだりはオリジナルです笑




