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93話★我が校の本好き達

微妙な空気が流れたあと、それを霧散させるためかアンディ様は、んんっと1度咳払いをする。その咳払いに、お互い気を取り直して、今度はそっといや、恐る恐るといったように貸し出し表を覗き込む。


ちなみにこの貸し出し表は、紙ではなく木札になっている。理由は簡単、紙が高いからである。出来うる限り子どもたちには不自由をかけたくないが、お金も無駄遣いはできないので削れるところは削っているのである。木札の方が幾分か安いし、書くことに不自由はないからね。


「初めて見ましたけれど、借りるメンバーは結構固定が多いですね」


貸し出し表を見ての感想はそれだった。名前は主に、カイト、つづけてレイラとリル。その3人がほとんどで、間にチラホラと他の生徒の名前もあるが少ない。


「そうだね。この3人は本が好きなメンバーだから、よく借りるんだろうね」


そう、この3人はうちの学校の本好き三大巨頭である。


カイトは国外のことに興味があるらしく、しょっちゅうそういった本を読んでいるし、隣国出身である私に「隣国はどんな感じか」と尋ねてくることも多い。


レイラはよく物語系を読んでいるのを見かける。騎士の物語なんかが好きらしい。私の前世に生きていたら多分ゲームとかしてただろうな。


リルは色々な本を満遍なく読む。最近は法律の本に凝っているらしい。このケーラー王国では平民からの官僚登用もあるから、将来は王宮で働いてみたいと言っていた。テストがとんでもなく難しいから、頑張るらしい。


「そうだと思います。反対に他の生徒は本があまり好きじゃないんでしょうか?」


「どうなんだろう。でも、本をはじめてみる子達も多いから、入ったことがないっていう子もいるんじゃないかな」


アンディ様がうーんと悩むような素振りを見せながらそう言った。ふんわりとした茶色の髪がそれに合わせてさらりと揺れる。


「興味はあるけれど、怖い、とかですかね?」


未知のものに触れるのは誰だって怖い。


「かもしれないねぇ。あと、本はあまり光にあてるのがよくないってことで、本棚が直接日に当たらないように置かれているでしょう?でも、それって窓を塞ぐことにもなるから」


「部屋全体が暗くなって余計に怖い……?」


「まあ、出入口から光は入ってくるだろうけれど、すこし暗めではあるよね」


「確かにそうですね……入りやすさを演出するにはどうしたらいいんでしょう?」


私の問いに、アンディ様はうーんと首を傾ける。私も考えを巡らせる。


それから、アンディ様は、何かを思いついたように目を開く。傾けていた首も元に戻っている。まさに、ひらめいた!って感じであった。


「飾りをつける?」


「飾り、ですか?」


オウム返しのようになってしまった。飾り、飾りかぁ。


「ダメ……かな?」


私が悩んでいると、眉をきゅっと下げ、心配そうな顔でこちらを見るアンディ様。どこか庇護欲をそそられる感じの表情だ。


「ダメじゃないと思います」


私は即答する。アンディ様の表情につられたのもあるが、それだけではない。飾りという考え方はいいと思う。だって、前世の図書館とかでも飾りとかあった。窓に何かしら季節のものを飾っていたり、本棚の上に物語の世界観にあったものを置いたりしていた、と思う。


可愛い感じとか、本の世界に触れられるものがあったら、きっと図書館に入りやすくなる。今まで興味なかった子とか怖いなと思っていた子にも入る機会が生まれるかもしれない。


でも、何を飾ればいいんだろう?季節はこの世界はずっと、日本でいう春だし。本の世界を表現するにしても何を基準に選んでいいかわからない。


私は大学で司書教諭の授業を受ける前にこの世界に転生したので、詳しいことはわからないのだ。


「飾るとして、どんなものを飾ればいいんでしょう?」


「うーん……。詳しい人がいたらいいんだけれど」


そうね、詳しい人……。


って、いるじゃない!


詳しい人!

本が大好き過ぎて、本の事となると語りまくる人が!!


「アンジェリカ先生に相談するのはどうでしょう」


アンジェリカ先生とは、王立サンフラワー学園の司書教諭である。本が好きすぎる彼女に、この前見学に行った時は図書館のシステムについてたくさん語られた。おかげで学園に通っていないのにただただ図書館のシステムに詳しい人になってしまったよ。おかげでこの図書室が運営できている部分もあるんだけどね。


「彼女なら確かに図書館に詳しいね」


「ルルーにお手紙、届けてもらいます!」

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