8話★ イメージ崩壊
『新春!更新祭り』3日目!最終日です!
どうぞよろしくお願いします!
翌日。輝くばかりの晴天だった。
なんか、これから私がしようとしていることを応援してくれているようだ。
朝から気分よく一日を始められそう。
そんなことを思いつつ、着替え済ませ、朝ごはんを食べ終え、それを終えてから早速客を招く準備をする。
今日は、いや、今日も?アンディ様がいらっしゃり、打ち合わせだ。
準備してから少しすると、アンディ様がやってくる。
アンディ様を広間にお通しし、リリの入れてくれたお茶と、アンナの作ってくれたお菓子を頂きつつの打ち合わせを開始する。
……ちなみに、昨日にらんだとおり、やっぱりアンナのお菓子作りの腕は確かなようだ。
アッカリー家の屋敷にいた頃は、アンナがこんなにお料理上手だって知らなかったわ。お料理は料理人がしていたから。
アンナの料理を知れたことは、ここに来て良かったことの1つだわ。
……まあ、それは置いておいて、打ち合わせの話に戻るわ。
昨日の話し合いで決まったことは、
場所、アンディ様が勧めてくれる小屋の予定。(明日のお昼見学)
先生、私とアンディ様。
対象、誰でも。学びたいという意思がある人。
コンセプト、身分の違い関係なく、学びたいことを学べる学校。
今後の予定、ある程度計画を立て、小屋の見学、領民へお話を聞く、その後、しっかりとした計画を立てる。
その後、マーク公爵にお話を通し、それから国王陛下へ。……多分、甘い話じゃないし、前途多難、イバラの道だけれど。
そういう決まったことを用意していた紙に書いていく。
今日話し合いは、その計画をこの前より少し綿密に詰めていくこと。大まかなことは決まっているけれど、予算、その他細かな指導内容、目標等など。
それが決まれば、マーク公爵と国王陛下へのプレゼン内容も考えなければならない。
取り敢えずは、教えることの選定だ。
勉強をする上での必須条件としては、まずは文字だ。
この国も、そして私の国も、貴族の教育では、学習の第1歩として、文字を学習する。
しかし、平民となると、教育と言うより、技術を磨くことを優先するため、識字率はそう高くない。商人さんならば少しは読めるし書けるかもしれないが。
文字をかけなければ学習は始まらない。文字と数字の学習は絶対だ。
「アンディ様、この国の公用語は日本語、ですよね?」
そう、このヨーロピアンな見た目に反し、この国では日本語が話されている。
なんともアンバランスだが、多分、この世界は、日本のゲームの世界だから、というのが理由だと思う。
そして、文字はと言うと、前世で言う、ローマ字、だった。アルファベットを使うあれだ。
文頭は大文字、主語、目的語、述語の間は開ける、的なルールが適用されている。
Bunto ha omoji, syugo, Mokutekigo
こんな感じに。
微妙なヨーロッパ感……。
どうしてこうなった、制作スタッフ……。
前世の私からすれば違和感ありありだが、この世界ではそれが普通だ。因みに、私も前世を思い出す前、普通に使っていたため、今でも手が勝手にサラサラと動く。
もちろん、先程までのメモもローマ字で書かれている。
「うん、そうだよ。……ってことは、まずは文字の学習ってことかな?」
アンディ様は頭の回転の早い方だ。まだ文字の話を言っていないのに。
「はい。識字率をあげた方がいいと思います。それに、文字を知れば、他のことも学習しやすいと思います」
「アルファベットと、それに数字って所かな?」
「はい。それから、計算も出来ればいいと思います。読み書き計算は基本ですから。最終的には、この国の歴史や経済、地理なんかも学べればいいですが……」
小さなことから大きなことへ。
「なるほど、生きていく上でこれだけは!ってところを取り敢えず押さえて、それから暮らしを豊かにする学びをって感じだね」
アンディ様がニコッと笑って言った。……「これだけは!」のところが、少し目を見開いていて、ちょっと可愛かったです。
「はい。といっても、専門的や難しいことではなく、基本的なことになってしまいますけれど」
私が言うと、アンディ様は苦笑して、頷く。
「そうだね。僕達は専門家ではないからねぇ」
「専門家の方々にお話を聞けたらいいのですが……」
とそこまで言って、昨夜のリリとの会話を思い出す。そうだ、教会が教育をしている所はないか聞くんだった。
それで、あわよくば見学を……。それから、できれば、そこで教えている方々にお話を……。それから、子供たちとの触れ合いも出来たらなおよろし……。
……っと、いけない、欲が全面に出ている。落ち着け、私。
気分を落ち着ける為に紅茶を飲む。
それから、ふぅと小さな深呼吸をしてから、
「アンディ様、この国では、教会による勉強会のようなものはありますか?」
「教会の勉強会?………うん、あるよ」
私の言葉を聞いて、思い出すように少しの間、悩み、それから頷く。
「…っ…ほんとですかっ!!」
思わずアンディ様の手をぎゅっと握ってしまう。……折角1度落ち着いたのに、台無しだ。
あ、でも、もちろん、丁寧に紅茶のカップはソーサーに置いてから、手を握ったから!大切な紅茶は零してないから!
思わず手を握った私に、アンディ様は目を白黒させ、顔を少し赤く染めた。つまりは、わかりやすいほどに動揺していた。
私、何か変なこと、したかしら?
私が頭の上に疑問符を浮かべていると、
「…レ、レベッカ……その……手……」
言われてはっと気づく。この動揺は、手を握っていたからか。
「あ!ごめんなさい」
私が手を離しても、アンディ様は赤いまま。手を握っただけでこの反応……
……純情か!女の子に免疫なさすぎか!
と思わず突っ込んでしまったのは、さておき。
まあ、10代の子達ってそんなもんよねぇ。若いっていいわねぇ。……私もこの世界では10代だけど。まあ、前世と今世合わせたら、21歳+16歳の37歳だからねぇ。
……ちなみに、違うと思うってツッコミは受け付けない。だって、今世は正真正銘のお嬢様だもの。多少の傲慢は許されるわ。
でも、確かに、みだりに殿方に触れるのは令嬢としてはなってなかったわね、反省……。"令嬢の鑑"のイメージ潰したらだめだ……。
アンディ様は、ふぅと小さく深呼吸してから、紅茶を1口のんだ。どうやら落ち着いたらしい。
私も1口紅茶を飲んでから、……気を取り直して。
「その教会での勉強会、見学することはできますか?」
「見学?」
「はい。実際の教育を見てみたくて」
私が言うと、アンディ様は納得したように頷き、
「ああ、なるほど!基本的に誰に対しても友好的だから大丈夫だと思う。でも、教会は一定の権力は持っているから、出来れば念のために公爵を通した方がいいかもしれない」
と言った。まあ、確かに、陣地じゃない他のところにそう簡単に行けるわけはないか。
「そうなんですね……」
見学できないのか、と少し気を落とす私に、アンディ様は優しく笑い、
「だから、マーク公爵に計画を認めてもらってからって感じかなぁ」
あ、そうか!公爵にプレゼンして、認めて貰えたら行けないこともないんだ!
「認めて貰えるように頑張ろ?」
優しい笑顔のままアンディ様がそう言ってくれた。
「ありがとうございます!」
途端に真っ赤になるアンディ様。
「え?」
「あの、またっ…」
そう言われて、アンディ様の視線の先を見ると、アンディ様の手をぎゅっと握る自分の手が見えたのだった。
どこ行ったのだ、私の"令嬢の鑑のイメージ……。
読んで下さり、ありがとうございましたー!
今回の『新春!更新祭り』はいかがでしたでしょうか?楽しんでいただけたら嬉しいです!
また、更新祭りするかもしれません!その時はよろしくお願いします!
次回から通常更新に戻りますので、
【次回の更新は、1月11日となります!】
よろしくお願いします( *¯ ꒳¯*)
読んで下さり、ありがとうございます!
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