プロローグ
みながすなる悪役令嬢転生系といふものを、私もしてみむとてするなり。
なんちゃって…←
書いてみたかったんです、悪役令嬢転生系……。てなわけで、始めちゃいました。
どうぞよろしくお願いします!
「そなたを国外追放とする」
その言葉は氷を纏っていた。
その瞳は氷を纏っていた。
触れればこちらまで凍ってしまいそうな程の冷たい空気、冷たい声音。
声が響くのは本当はきらびやかで華やか、そして普段なら談笑により心地よい騒がしさを纏うはずの大広間。
それが、今はヒソヒソと心地よさのこの字もない小さな声が聞こえていた。
その冷たい声音を向けられたのは、公爵令嬢にしてこの国の王太子の婚約者である私、レベッカ・アッカリー。
声音の主は、自分が1番信じていた…信じようとしていた人。自らの婚約者でありこの王国の王太子、フラン・スミス殿下。
その傍らには、自分じゃない美しく儚げな女性。平民から養女として伯爵家入りして私の婚約者の心をものにした、クレア・フローレンス嬢。
本当はその隣に立つのは、本来ならば王太子の婚約者である私のはずだった。
なのに、今は大勢の観衆の中、王太子殿下とクレア嬢がたった一人の私と対峙していた。
「理由をお聞かせ願えますか……」
足がすくむ。声が震えそうになる。
しかし、私は公爵家の令嬢。
しっかりしなければいけない。
涙は零さない。
なぜ、自分は国外追放を言い渡されているのか、王太子に向かい目を見て尋ねる。
「理由などわかりきっておるであろう。そなたは、ここにいるクレア・フローレンス嬢が平民の出であることを馬鹿にし、行儀や礼儀に対して酷い言葉を使い、彼女の心を故意に傷つけたであろう。な、クレア」
そんなことしたことは1度もない。
確かに、礼儀作法について注意はした。だが、それは貴族社会で当たり前とされているルールのみ。
私は、平民の出であることを馬鹿にしたことや、そのせいで行儀がなっていない等、身分や門地を引き合いに出し馬鹿にしたことはない。
そして、酷い言葉であたったこともない。そりゃ、私は元の性格がきついせいもあり、そう思われがちではあるが傷つけてやろうとかそんなつもりは微塵もない。
「そうです、レベッカ様は私につらくあたりました」
クレア嬢は殿下の腕にきゅっと掴まり、涙さえ浮かべている。
そんなことしてない。
私は、ただ……守ろうとしただけ。
自分が守ろうとしたものが壊れていく。
自分が愛そうとしたものが壊れていく。
「そなたと婚約を破棄し、私は、ここにいるクレア・フローレンス伯爵令嬢と婚約することをここに宣言する」
冷たい声音はさらにそう続けた。
何故そのようなことになったのか、冷たい声音を傍らには聴きながら思い出していた。
もう2度目になるが、私の名前はレベッカ・アッカリーという。父は主に他国との交流や貿易、その他他国に関することを一手に担う、所謂外交を担当しており___ほかの仕事もするが___、この国では強い権力をもつアッカリー公爵家の令嬢だ。
そして、身分も地位も保証された私は、なんの疑いもなく生まれた時から、王太子妃ひいては王妃になるものとされていた。
そして、それ相応の教育を受け、10歳の時に同い年の王太子フラン・スミス殿下と婚約をした。
フラン・スミス殿下との仲は特段いいとは言えなかったが、普通に仲は良かったし、愛なんてものはなくても結婚すれば少しずつ育まれていくものだと思ってお互い付き合っていた。
少なくとも私はそう思っていた。
だが、殿下は違ったようだ。クレア・フローレンス嬢が現れてから、みるみるうちに恋に落ちてしまったのだ。
でも、婚約者には私がいて、これは国の決定だからそうそうのことがない限り揺るがない。それならば、クレア嬢はきっと妾になる。
政略結婚である私に恋心何てものはないのは仕方ないと割り切っていたし、今の王だって妾が3人いるから問題ないと思っていた。
愛情はクレア嬢にお任せして、私は他のことで殿下の助けになればいい、そう考えていた。
しかし、クレア嬢は貴族社会において必要な礼儀や作法を全然知らなかった。それは、当たり前だし仕方ないことだと思っていた。
だから、私は殿下の妻になるのならばこれから覚えて頂かなくてはならないと日々クレア嬢に伝えていた。
何度も言うが、私は平民の出であることを馬鹿にしたことや、そのせいで行儀がなっていない等、身分や門地を引き合いに出し馬鹿にしたことはない。
そして、酷い言葉であたったこともないければ傷つけてやろうとかそんなつもりは微塵もない。
ただ殿下のお力になりたかったし、クレア嬢も殿下の妻になってから困惑するのは可哀想だと思っていたいた。だから、日々礼儀作法について伝えていた。
それに、王家に入ったならばパーティやお茶会に参加することも増えるであろう。
その者の行動はそのまま王家を表す。つまり、礼儀作法を知らない者がパーティに王家として参加すれば王家の品が疑われる。
だから、自分が守らなければならないと思った。
アッカリー家は王家に仕えるもので、その令嬢である私も勿論そうだから。
それでも、王太子殿下やクレア嬢には身分や門地を馬鹿にする酷い女と思われていたらしい、いやそうだと思い込んでいるらしい。
そして、今日は王家主催のパーティである。パートナーと共に、つまり本当なら私は殿下と共に会場に入るはずだったのだが、どういう訳か迎えが来なかった。しかし、招待されたからには行かなければならないため一人で会場へと向かった。
名前が呼ばれ、パーティ会場に入ると真正面に殿下とそれに寄り添うクレア嬢がおり、そして冒頭からのセリフに至ったわけだ。
悪役令嬢がヒロインを邪魔して、最後の最後に断罪される。
例えそれが本当の悪ではなくても。
ヒロイン至上主義、だから。
ゲームやアニメじゃ王道の展開だ。
………………。
…………げーむ……?
…………あにめ……?
って何かしら……??
この世界にはないものよ。
この、世界……??
そこで頭が割れるように痛み出す。
頭の中で何かがパリンと割れる音がした。
そして、脳にイメージ……いや、動画が直接流れ込んでくるような感じで目の前に映像が流れる。
映像の中では1人の黒髪の女の子がゲーム機に向かっている。
これが、ゲーム機だ、ということは何故か知っていた。
「ああー!ほんと、フランかっこいいー!」
声を上げる女の子。
その発せられた言葉にある名前は、今も昔も見知ったもので。
そのゲーム機の画面には、
『Sweet Memorial ~幸せのプリンセス~ 』
という文字がきらびやかに装飾されており、その下には王太子殿下を初めとする男の人が何人か。
それを見て悟った。と言うより、思い出した。
ああ、これは私の前世の記憶だと。
私は、生前していた所謂乙女ゲームに転生していると。それも、そのゲームでは悪役令嬢とされているレベッカ・アッカリーに。
それから続けて流れてくるのは、場面が切り替わって講義室のようなところで友達と向かいあっている図。
「あー!覚えらんないいいーー!!」
私と思わしき人が声を上げる。
そして、流れ込んでくる知識。
ペスタロッチ
フレーベル
コメニウス
ブルーナー
『隠者の夕暮れ』
『人間の教育』
『世界図絵』
『教育の過程』
直観教授法
恩物
実物教授法
発見学習
必死に覚えた教育史。
その他にも色々流れてきた。
私は、私の前世は、教育学部の大学生だ。
頭が……割れるように痛い。
そこで、私の視界はブラックアウトした。
いかがでしたか??
読んでくださってありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします。
いかがでしたか??読んでくださってありがとうございました!今後ともよろしくお願いします。
ちなみに……
・ペスタロッチ
直観教授法(学ぶ時、感覚器官を使って学ぶ方法。実物教授法のひとつ)を提唱。彼の著書に、『隠者の夕暮れ』がある。
・フレーベル
幼児教育の人で、幼稚園を初めて作った人。恩物と呼ばれるおもちゃを使った教育を提唱。彼の著書に、『人間の教育』がある。
・コメニウス
実物教授法(言葉ではなく、実物を見せたり触らせたりして学ぶ方法)を提唱。『世界図絵』 (世界初の絵入り教科書)を作った。
・ブルーナー
発見学習(子供たち自身が仮定をたて、解決していく過程を一緒に体験することで学ぶ方法)を提唱。彼の著書に、『教育の過程』がある。
本文で出てきた専門的な用語?です。