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ミズキと真央の秘密 その1

 現在時刻は、土曜の朝の6時前。7畳程の部屋に置かれたベッドの上で、白い芋虫状の物が、のじょのじょと動いてる。これが異世界なら、モンスターかも知れないが、現代日本だ。モンスターではなく、昨日唐突に、長谷川家に居候する事になった佐藤ミズキが、掛け布団から顔出す。茶色がかった髪は、ボサボサ。

顔には、若干疲労をにじませていた。



「結局、あんまり寝れなかった。……まだ、6時前じゃないか」


 とボヤキつつ、ミズキは、布団から這い出た。昨日は、色々ゴタゴタしてて、疲れていたはずなのに、あまり寝てない。寝ようとしても、頭の中で、ぐるぐると自分の秘密について考えてしまい寝れなかったのだ。

んでそのまま、朝を迎えたという訳だ。

ちなみに学校が休みだから、いつも通りの時間に起きる必要は、ないが、ベッドにいても仕方ないので起きる事にした。



「 あっ、やっちゃった」



 パジャマから着替えようとして気づく、いつもなら前日に用意しておく着替えを準備していない。


ミズキは、クローゼットから黒いタートルネックのセーターとデニムパンツを出して着替えた。


 洗面所で髪をいつも通り結んで、洗顔を済ませた。


長谷川家では、リビングで朝食を食べると聞いたのでリビングへ向かう。

ちなみに、長谷川家は、



 リビングに入ると、スウェットのルームウェアにボサボサの髪、眼鏡というスタイルの桃子が、パソコンと格闘していた。




「お早うございます」

「あれ?ミズキちゃんもう、起きたの。休みだからもう少し寝ててもいいのに、 まだ、6時すぎだよ」



 壁にかけてある時計を見ながら、桃子は少し驚いた様子で言った。



「あんまり、眠れなかったから起きちゃおって思ったんです。桃子さんこそ早くないですか?」


「んー早いっていうか、仕事の締め切り近くてね。3時くらいから、ここで仕事してるの」


「何のお仕事ですか?」


「小説家だよ。木村ももってペンネームでね。主にミステリーだけど、少女向けライトノベルも書いてるけどね」


「そうだったんですか」




ミズキは、顔がニヤけそうになるのをこらえた。



ーーーうわっ、木村もも先生の作品全部持ってるし。僕、サイン欲しいけど。さすがに図々しいよな



「どうしたの?顔が変だよ?」


「何でも、ありません」



ミズキは、あわてて誤魔化した。



「そう。悪いけど、真央ちゃん起こしてきてくれない?二人で、コンビニへ行って来てほしいんだ。食パンとジャム買うの忘れてたんだ」

「はい、分かりました」



 ミズキは、返事をすると、真央の部屋に行く。



「起こされなきゃ、起きれないなんてだらしない」


 ボソリと言ってからノックする。返事がないので、遠慮なくドアを開ける。



「おーい。起きろ!真央!朝だ」



遠慮なく大声で呼んでも、真央は微動だにしない。それどころか、とっても幸せそうな顔をして寝てます。



「にゃん。にゃおん 」



ミズキの足元で白い猫が、何か教えるように鳴いている。



「えーと、そらだっけ?もしかして真央の起こしかたを教えてくれるの?」



――まさか猫が、そんな事するわけないか


 ミズキが思った事とは裏腹に、そらは真央のベッドに、飛び乗るやいなや、前足で掛け布団をバサアっとぶっ飛ばすと。



「にゃーん。にゃお!にゃやく、起きるにゃー」



ーーー今、喋らなかったか?「起きるニャー」って。


 その他にも、布団をフッ飛ばしたりと、色々とツッコミを入れたいが、とりあえず、変わった猫なんだと、思う事にした。




「 そら普通に起こしてくれ」



真央が、やっと起き出す。



「やっと起きたか、真央。猫に起こしてもらうなんて情けない奴だな」


「ミズキ、お前案外毒舌なんだな。大人しそうなのに」



ミズキは、うぐっと唸る



「毒舌じゃないぞ!僕は、それより、さっさと、服を着替えろよ。桃子さんが、パン買ってきてほしいってさ」



バシンっとドアが乱暴に閉められる。



――ありゃー怒ったな。



そんな事を考えながら、パジャマから白いセーターと赤いチェックのミニスカートに着替えた。


真央は、急いで、洗顔を済ませて桃子から預かった財布と携帯電話をいれた小さなトートバッグを持って外へ出る。



「悪い、待たせて」


「いや、真央は、髪結んでないんだ」


「ああ。寒いし面倒だしな。櫛をいれただけだな」



真央が首をふると、少し癖のある髪がふわふわと揺れた。



「邪魔にならないの?」


「まあな、休みの日はおろしとくのもいいかと思ってさ。ご飯作る時は、結ぶけど」



真央は、手首にしたシュシュを見せながら言う。


「ご飯作るの?きみが?」


「俺が、ご飯作るの変かよ。まあ、こんなだから驚くのは、無理ねーか。母さんが忙しい時とかは、俺が作るよ。ご飯作り以外の家事もだけど」



――さっき、情けない奴だなって言っちゃったけど。結構しっかりしてるんだ。


ミズキは、真央の意外な一面を知って感心した。



コンビニに着くと、真央は、まっすぐ、パンのコーナーに向かい、食パンの賞味期限を確認しながら、つい愚痴ってしまう。




「コンビニって、基本値段高いけど、物によっちゃ、中島スーパーで、売ってる物より安い事あるんだよな。ぶちゃっけ、中島スーパーで、大手メーカーのパン買うより、イレブンイレブンのプライベートブランドの食パン買った方が安い」


 ちなみに、中島スーパーとは、名前の通り、中島市内で展開している食品スーパーの事である。



「えっそうなの?全然気にしなかったな」



ミズキが、本気で驚いてたので、真央は呆れた。



「なんだ、知らなかったのかよ。スーパーとかお使い行かねーのかよ。」


「行くけど、姉さんに指定された物しか買わないからちゃんと、チェックしたことなかったな。」


「そうか。悪かったな。つい俺の感覚で、言っちまったよ。ゴメン」



素直に謝られて、ミズキは少し恥ずかしくなった。



「気にしてないから、大丈夫。」


「そっかよかった。やー馬鹿にしたって思われたらどうしよってさ」



食パンとジャムを買って店を出ながら真央は、ミズキに話す。



――素直な子だな。僕もこのくらい素直になれたらいいけど



「どうかしたか?」


ミズキより背の低い真央が、心配そうにミズキを見上げていた。


「なんでも、ないよ。早く帰ろう桃子さん首を長くして待ってるよ。」


「あー今頃、真央ちゃんお腹すいたよ。って叫んでるな」



二人は、一緒に走って家まで帰ったのだった。






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