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聞いてないよ!その2

お待たせしました。


 さて、三学期の始業式も休み明けテストも済んだ放課後。ミズキは、教室の自分の席で、約一時間程同じ行為を繰り返してる。

 

「はぅぅ。帰ったら健人くんに電話しなきゃ」

 ーーーでも、拒否られたどうしよ?

ああ。電話しなきゃだけど、怖くて出来ない!いやだったら無理!だけど、やっぱり。

と考えては、先程のセリフをため息と共に言うという事をかれこれ約20回くらい

繰り返してた。

 正直、こんなに悩む暇があるなら、早く帰ればいいような気もする。

 だが、今のミズキには、なぜかそんな気はおきず、一人悲劇に夢中になっている。

 そこに、ミズキの親友(ツッコミ役)が、やって来る。


「ミズキ、あんた今ので『高橋くんに電話しなきゃ』呟き20回目だから」

と唯花は、ミズキが呟いた回数をご丁寧にも教えてやるも、ミズキは項垂れままだ。



―――こりゃあ、重症ね。まったく、高橋、ミズキに話しとけってのよ。

あっでも、昨日の夜ママとパパが、話してな。高橋のお父さんお母さんの事。多分()の《・》事がケリが付いたって事なんだろうな。まぁだから、高橋も言わなかった。というか、言う暇もなかったんだろうね。

 

 唯花は高橋くんが、転校した理由を推測するも、ため息をつきまくってるミズキに話そうかと、考えたが、ミズキが悩むタネを増やす事にしかならず、黙っておこうと決めた。


「ミズキ、早く帰ろう。高橋の奴も、ミズキからの連絡待ってるかもよ?あっもしかしたら、ミズキの携帯にメール来てるかも知れないさ。ねっ帰ろう」


 唯花の一言に、ミズキは、幼子のように、コクン頷き、のぞのぞとゆっくりと帰る準備をはじめる。


ーーー まったく、あのまま一人悲劇を永遠とやり続けるかと思ったわよ。


 結花は、こっそり溜め息をついて、そう思った。


「唯花。ごめん、支度出来た」

「はいな。帰ろう」


 ようやくミズキと唯花は、家路に着くのだが、雨が降りしきる中、校門の側で鬼の形相をしたパンツスーツの女性が仁王立ちしていた。


「ねっ姉さん。傘もささずに何やってんのさ?」

「そうですよ。風邪ひきますよ。結婚して、ドイツへ行くんですよね?」

とパンツスーツの女性。ミズキの姉である佐藤茜にそう訊く。

茜は、低い声。それもドスがきいてる声で話す。


「うん、そうなんだよね。緒方さんの言うとおり、私は、婚約者について、ドイツへ行くのさ。だから、最近色んなことが忙しいんだ。私のドイツ行きが決まっタイミングで、クソ親父の転勤も決まった。だから、一人になるミズキを親戚ん家に預けるから、ミズキは、来月から隣学区へ転校するって、クラスの皆には、話したよねぇ? 緒方さん」

「ええとそうです」


 こくこくと、頷く唯花。ちなみに、茜は、ミズキと唯花のクラスの副担任である。

ゆえに、朝の学活で、担任と茜本人の説明があったし、そもそも冬休み前に、婚約者が海外勤務を命じられそうだという話は、担任から聞かされていたから、今更驚かない。

唯一、驚いた事があるなら、ミズキの転校くらいだろうか?


「だよね。ミズキ。いきなりだけど、緒方さんにお別れを言いなさい」

「うぇぇ?なんで?」

「いいから!理由は、あっちに行ってから、クソ親父を問い詰めてからよ!」

「分かった。唯花。今までありがとう。とにかくまた連絡するね!」

「うん」


 唯花が、返事をしたのを確認した茜は、ミズキを有無を言わさず、校門の脇に停めていた自分の車に乗せて、アクセル全開で去っていった。


「いきなり何だったんだろ?」


 残された唯花は、キツネにつままれたような気分だった。


 




  





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