聞いてないよ!その1。
この物語は、とある女子中学生に起きる事件から、始まる。
ここは、中島市立三城中学校。文字通り、中島市三城町にある中学校。生徒数が、九百人ちょっとというマンモス校である事以外、特筆べき特徴がない公立中学校である。
その三城中に通う少女 佐藤ミズキは、所属する一年一組の教室へ入っていく。
ちなみに、今日から三学期だ。
短い冬休みの思い出話を久しぶりに会うクラスメイトと交したいところだが、始業式のあとで、休み明けテストが予定されいる為、皆テストの前の復習に忙しい。
ミズキもそれにならい、出題範囲である冬休みの宿題を鞄から取り出した所で、
バンっ!と大きな音を立てて、教室前方の扉が開く。
ミズキは、勿論の事、教室にいたクラスメイトが何事かとざわつく。
そんな中、黒髪をショートカットにした少女が飛び込んできた。
「ミズキ!」
「唯花、急にどうしたのさ。大声出して。皆、びっくりしてるだろ」
「ごめん!でもちょっとこっちに来て!話があるの!」
と唯花と呼ばれた少女は、有無を言わさずに、ミズキを席から立たせ、教室から連れ出す。
そのまま、ミズキは、半ば引き摺られるような形で、人気の無い廊下の端っこまで連れて行かれた。
唯花は、人が来ない事を、確認すると
、神妙な面持で、話を切り出した。
「ミズキ、高橋が急に転校したの知ってる?」
「えっ?嘘、知らない!聞いてないよ!ってか、なんで彼女である僕が知らなくて、なんで、唯花、君が知ってんの?」
ミズキは、思わず唯花のブレザーの襟を掴む。
唯花は、ため息一つ落として、ミズキの手を自分のブレザーから離す。
「私も、さっき知ったの。佐藤先生がこっそり教えてくれてさ」
「茜姉さんが?」
一年一組の副担であり、ミズキの姉である佐藤茜が、こっそり教えたという事は、本当に急な転校だったんだ。とミズキは、そう思った。
「だけど、年末年始に会った時は、そんな様子無かったけど」
「だろうね。佐藤先生曰く、お家の事情みたい。詳しい事は、知らないみたいだよ」
「そっか……」
ミズキは、そう言って、トボトボと自席へと戻っていった。
これが、きっかけで、自分の生活が一変するとは、この時のミズキはまだ知らないのだった。
おまたせしました。さて、この先どうなるのでしょう? では、次回お会いしましょう。